隣のクラスのあいつら付き合ったってよ
それはクラスにいる普通の2人。片方は背はそこまで高くないが筋肉がある男の子。もう片方は女子高生の平均身長より少し小さい女の子。どちらもパッとはしないがクラスにいると周りに友達がいる。男の方は男女関係なく喋り、女の方も男女関係なく喋る。なのに彼らは学校で関わらない。関わっても授業の一環で喋る程度である。そんな2人の関係をクラスの人たちは知らない。実はそんな2人は毎日電話して自分より自分のことをお互い知る仲なのである。
21:00
ブーブー、マナーモードの携帯が机の上で踊ってる。今宵もくだらない雑談が始まる。
「もしもしー、聞こえてますかー」
「聞こえとるよー」
「了解ー」
いつも通りの夜が始まった。
「おいおい聞いたか?隣のクラスの佐野と大島が付き合ったってよ」
「え、ガチかー。てか、長かったねぇ。あの子たち、あんなに付き合ってる感あったのに付き合ってなかったもんね」
「ほんとそれな、それに相談の嵐が止まらなかったもんな」
「うんうん、もう最近島ちゃんが毎日来るんだよ。そしてね、どうやったら好きな人に振り向いて貰えるか悩んでるだよ。もう可愛いよね。てか、それに気づいてなかった佐野くんひどいよね」
「まあまあ、落ち着けよ。佐野だって苦しんでいたんだから」
「というと?」
「佐野は俺の方に相談来とるんよ。どうやったら女子に振り向いて貰えるかとか、まだ付き合ってないのに誕生日プレゼントは重いかとかしつこかったんやから」
「なるほど、なら2人はすれ違いながらも両片思いやったってことか。もーう、めっちゃいいカップルじゃん」
「ほんとそれな」
「幸せになって欲しいなぁ」
「うんうん、それで結婚式呼んで欲しいよね」
「分かるー、絶対かわいいもん」
ガチャ、扉が開く音が聞こえた。扉の方をみると姉貴が立っていた。それもニヤニヤとした顔で。
「すまん、ちょっと切るで」
「ん、おけ」
俺はニヤニヤしてる姉貴に対してがんを飛ばす。
「おい、なんや」
「んー、ただ弟の部屋から女の子の声が聞こえたから凸っただけよ」
「なるほど、邪魔しに来たってことな」
「まあ、そゆこと。それより、前貸してくれた続きどこにある?」
「あー、あれまだ新刊でてないよ」
「そっか、おっけー、楽しんでー」
ガチャ
正直親フラより姉貴が凸って来る方が心臓に悪い。俺はかけ直した。
プルプル
「ん、親フラ?」
「まあそんなもん」
「で、なんの話ししていたっけ」
「佐野と大島の話やない」
「あー、それそれ」
……
時計の針は22:30を指している。飽きない会話にも終わりが来る。お互い23:00までには寝ないと明日がしんどいのである。たったの2時間電話、それだけの関係である。もちろんカレカノでもないしただの友達。ただその関係を言わないだけである。
「もうそろ終わるぁー」
「今日も早いねー。まあ私も眠たいけど」
「やろ、それに寝落ち電話を初めてやるのは彼女がええねん」
「はいはい。どうせ出来へんから諦めとき」
「そんなこと言うなや」
下手な泣き真似をする。そうすると
「下手なんやから、泣き真似せんでええで笑」
爆笑でかえってくる。なんともムカつく話であるがどこか居心地が良い。
「じゃ、私寝るな」
「おう、おやすみ。また明日」
今日もくだらない話が終わった。明日は何を話すのだろうか。まあ、考えとかなくても話せばなんかでてくるやろ。とりま睡眠や、睡眠。
23:09