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魔物達の王に私は二度ほど会ったことがある。
一度目は遠くから。魔物を束ね、人々への攻撃を指揮するその姿を。
二度目は敵として相対した。
その存在は、あまりにも怖ろしかった。
人とよく似た姿をした、魔物。
皮膚は浅黒く、頭には巨大な角を。金の瞳は獣のように瞳孔が裂け、酷く血色の悪い顔が印象的だった。
黒金のような金属質の手には凶悪な爪。竜のような尾。
人には在らざる異端の存在。
纏う空気が違った。
ただ眼の前にしただけで、視線を向けられただけで身体が心から震えて止まらなかった。
恐かった。隣に彼がいなければ、発狂したように叫んで逃げていたかもしれない。
本当に、ただただ恐ろしいのだ。
だから私は、彼から離れて故郷に戻ってきた。
あの王に勝てないと思ったから。戦う事が出来なかったから。
足手まといは嫌だった。
しかし、シルビアは違った。
シルビアは戦う事を選択した。私には無い勇気を持って。
「魔物たちの王は……死んだよ……」
人気のない場所で二人、静かに話は始まる。
シルビアは暗い顔で、希望を伝えた。
「あの、魔物が……」
「うん、消滅したよ。……クリアスやフェルドたちは自分たちの国に戻ったよ。復興を助けるために」
クリアスは、教会の神官戦士だ。
時に皆の盾となり、癒し手となった。
どうにもできずに混乱の中にあった教会では人々を守れないと一人旅をしていたのを私達が一緒に行く事を誘った人だ。
フェルドは山の奥深くに住んでいた賢者の弟子で、師匠に言われて魔物たちを討伐するために私たちと行動を共にした。
懐かしい名前を聞いて胸の奥が締め付けられる。
「そうだったの……」
「あとね、ジイェンは戦いが終わったと思ったらどこかにいちゃった。たぶん、帰っちゃったんだとおもう」
「そっか」
ジイェン本人は人間の振りをした魔物と言っていた。
それが本当なのか分からないけれど、彼は魔物の王を殺すためにここに来たとも言っていた。
その目的を果たして、どこに行ったのだろう。
シルビアは帰ったと言うが、魔物の王を殺した彼に行く所はあるのだろうか。
「それでね……るふは……アルフは……」
シルビアは言葉を詰まらせながら、最後に彼の事を言った。
「わからないの。魔物の王に最後に攻撃をしたのはアルフだったの。でも、その時に……相討ちになって……爆発が起こって……どんなに探しても見つからなかったの」
目の前が、真っ暗になる。
息が苦しい。今、自分が立っているのかすら解らない。
「アルフは……」
魔物の王と、相討ち。
爆発に巻き込まれた。
見つからない。
「リリーシャっ!」
名前を呼ばれてようやく気づく。
自分がみっともなく地面にへたりこんでいたことを。
「なん……なんで……」
彼は必ず王を倒すと言った。
でも。
帰ってくると言ったのに。
約束をしたのに。
いつだって、私を振り回した幼馴染。
魔物たちの王を倒すと言って飛び出したのは一年前。
突拍子もないことを言いだしては仲間たちを振り回して……。
私がパーティから抜けると言った時に喧嘩して、結局仲直りをしなかった。
最後に分かれた時、その時に必ず帰るとだけ言われた。
だから、待っていたのに。
「どうしてっ――!!」




