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母の背中と、私の股関節。 〜変形性股関節症、手術への決意〜  作者: 水瀬 悠里


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1/10

【第1章|第2章】

第1章:あの日、母が倒れた


母がいまの私と同じ年齢だった頃、その日は突然やってきた。

「足が動かない」

そう言って床に伏した母は、そのまま起き上がれなくなった。

少しでも動かそうとすれば、顔を歪めるほどの激痛が走るという。


まだインターネットなど影も形もない時代。

原因もわからず、父も私もただ狼狽えるしかなかった。

「寝ていれば治る」と自分に言い聞かせるように母は三日間耐えたが、ついに父が救急車を呼んだ。


診断名は、変形性股関節症。


重度だった。すぐに手術が決まった。当時の人工股関節は「寿命は二十年」と言われ、術後のリハビリも血が滲むような過酷なものだったと聞いている。



第2章:遺伝という名のタイムリミット


十年前、私も同じ病名を告げられた。

「いつか母と同じ手術をするんだろうな」

ぼんやりとした予感はあったが、経過観察をしながら騙し騙し仕事を続けていた。


ところが、ある日の仕事帰り、段差に足を取られた。


痛む方の膝を強打。診断こそ「打撲と捻挫」だったが、あの日を境に股関節の奥底で何かが壊れたような気がした。

隙間のない関節を、外から無理やり押し込まれたような、逃げ場のない痛み。


私は意を決し、かかりつけの整形外科の門を叩いた。

「手術をしたいので、診断をお願いします」

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