温かな光〜マリアside〜
フィリップ様とキルフィスのスペンサー家の別宅に馬車で向かっている。
何日も何日も…
どんどん道が悪くなっていく。
お店屋、民家が徐々に見当たらなくなってきた。
何日馬車の旅をしているだろう。
道も悪くなってきてるのでガタンガタンと馬車が揺れる。
「マリア明日には別宅につくよ。」
「本当ですか?楽しみです。」
笑顔をむけてフィリップ様にそう言うものの内心不安しかなかった。
お姉様からフィリップ様を奪った。
わざと奪った。
お姉様はいつもなんでも許してくれた。
お父様もお母様もお兄様もお姉様より私を優先してくれた。
それが実の父親に捨てられ実の母親が亡くなってしまった可哀想な子だからなんて思ってもいなかった。
フィリップ様とは宿に泊まると愛し合っている。
お姉様と私のフィリップ様への愛が私のほうが勝っていたからフィリップ様が私を愛してくれるようになったから私は悪くない。
誰も悪くない。
フィリップ様に私はずっと想いを寄せていた。
お姉様の婚約者としてお会いしてからずっと。
フィリップ様と2人になった時に私はフィリップ様に猛アプローチを続けていた。
はじめはかわされてしまっていた。
でも、私はやめなかった。
フィリップ様が私を意識してると思った時は本当に嬉しかった。
やっとお姉様ではなく、私を見てくれたと。
そこまでくればあとは簡単だった。
お姉様はまだフィリップ様に触れさせてはいないのもわかっていた。
フィリップ様は熱を帯びた瞳でお姉様を見ていることがあったのも知っていたから、そういう事をしたいのだなと感じていた。
私ならフィリップ様に全てを捧げる。
何を失っても私はフィリップ様が欲しかった。
私が見つめると甘い蕩けるような笑顔を見せてくれるようになった。
私は二人きりになったのをみはからって、フィリップ様にキスをした。
フィリップ様は驚いた顔をして、私を引き離した。
お姉様の顔を浮かんだからだと思う。
私は涙目でフィリップ様に
「フィリップ様が好きです。フィリップ様になら全てを捧げる覚悟です。」
私の言葉を聞いてフィリップ様は意を決したように私を抱き寄せてくれた。
その日をさかいに二人で頻繁にでかけるようになり、宿にいき甘い時間を過ごすようになった。
あの日、お兄様とお姉様に見られるまでは。
お姉様には悪いことをしたと思ってる。
ちゃんと話をすべきだったということもわかってる。
でも、言い出せなかった。
お姉様もフィリップ様に想いを寄せてたのがわかっていたから。
謝っても謝りきれない。
でも、間違ってない。
私は好きな人と一緒に人生を歩く為に選んだのだから。
どんな辺境の地だろうとフィリップ様と一緒なら乗り越えられる。
そう思っていたら
ふわっと光ったの。
温かい光だった。
お姉様?
なぜだかそう思った。
そんなはずないのに…。
「今の光はなんだ?」
フィリップ様がそう言うけど私にも何も答えられなかった。
こんなことした私が願う事ではないかもしれないけど…
お姉様が幸せに過ごせますように。
そして、お父様お母様お兄様も健やかに過ごせますように。
そう思っていたらまたぱっと光ったと思うと光はあっという間消えた。
フィリップ様と顔を見合わせたけどわからなかった。
なんの光だろ?
ただそれ以降光を見ることもなかったし、それどころじゃなかったから忘れてしまった。