四十八日目 二年
俺の提案した岡豊城囮作戦からニ年の月日が流れた。時が流れるというのは実に早い事だ。この二年の間に国親の施策により、足軽は2000人を超え今、足軽村はとてもにぎあっている。そんな中ーーー。
「おーーーい!!菊吉ーーーっ!!」
「おいおい、俺の名前は菊之助だっていつも言っているだろう、若虎。」
「えへへ。すまんすまん。」
こいつは立川 若虎。俺と同じ村の出身で同い年だ。この時代の幼馴染ってやつだな。一年ほど前に父をなんとか説得して足軽に仕官してきた。猶予付きだけどな。
「全く、月日が流れるのは早いもんだな。もう一年になるんだぞ。」
「そーなんだよなー...。六年のうちに武功を上げないと村に戻らなきゃ。」
「この二年これといって戦が無かったから仕方ないよ。」
「その分!お前に鍛えられて強くなれた!これなら武功を上げれそうだ!!」
「戦があれば、だけどね。」
「まーな!あ、そう言えば今日も門下に入れてくれって人が来てたよ?」
「ああ、出雲から聞いてるよ。稽古の前に会うつもり。」
急に足軽が増えたのには理由がある。まぁ国親の施策もなのだが、もう一つある。それは俺だ。なんか俺の噂が広まっているらしく。農民からでも足軽となって武功を上げれば、家臣に取り立ててくれるって!と下克上の精神が今、広がりつつある。と言ってもまだ俺は足軽大将なのだが...。
で、その中には俺に指南して欲しいって奴が現れ出して、一緒に稽古をすることになったのだが、初めは10人だったのが、20人、50人と増え続け今では200人を超えるくらいになっている。これだけいれば一つの軍ができる。心配になって100人に近付いて来た頃、国親に聞いてみるとーーー。
「良いのではないか?」
「100人ですよ?」
「まぁ足軽大将が足軽を率いても問題なかろう。のう、孝頼。」
「ええ、問題ないと思いまする。」
「さ、左様ですか。」
「...ま、見張りもおることだしのう。」
「え、何か言いましたか?」
「いや、なんでもないぞ!」
と、まぁこんな感じて認められたのだ。国親が最後に何かボヤいてたのが気になるが、まぁ大丈夫だろう。
「じゃ、俺はあっちだから。」
「うん、じゃあまた後でね、菊吉!」
「俺の名前は菊之助だって...。」
って聞かずに行っちゃったよ。俺は一旦若虎と別れ、新しい門下生の所へと足を運んだ。
俺の隣には出雲がいて、目の前には新しい門下生がいる。
「は、はじめまして!十兵衛と申します!」
「へぇ、"とうべえ"って読むのか珍しいね。」
「よく言われます...。」
「じゃ、まぁ手始めに組手でもしようか!」
「く、組手にございますか?!しかしながら、某はまだ足軽になったばかりで...。」
「大丈夫。適当に打ち込んでくるだけでいいから。」
「わ、わかりました。」
出雲が十兵衛に木刀を渡し、試合開始。
「はぁぁっ!!」
カンッ
カンッ
カンッ
「刀を振るのは初めてかい?」
「はい!」
ふむ....。
カンッッ!....カランカラン。
俺が十兵衛の木刀を弾き飛ばして試合終了。
「うん、初めて刀を振るにしては太刀筋は悪くないんじゃないかな。吉丸のところに付けようか。」
「わかりました。そう伝えておきますね。」
「頼んだよ、出雲。」
流石に200人ともなれば一人で教えるのは厳しくて、少し組織的な形にしてみた。俺を筆頭に弥三郎、吉丸、九七、四助の下に門下生を付けて稽古をさせている。出雲は...やっぱり俺の剣術は体に合わなくて、今は管理的なことをしてもらってる。本人は物凄く悔しそうだったけど...。
「そろそろ稽古に行こうか。」
「そうですね。」
「菊之助!」
「これは、重俊様!かような所でどうかされましたか?」
「いや、久々にお主の顔が見たくなってのう。」
「久々と申しましても、結構頻繁にお会いしておりますが...。」
「ま、まぁ良いでは無いか!それよりお主、歳はいくつになったのだ?」
「数えで15ですね。」
「そうか、時が経つのは早いものよのう。」
申し訳ないが、凄くじじいみたいなこと言ってるなぁ...。まだそんなに歳をとっていなかろうに。
「あ、そうじゃ、菊之助!明日城で軍議があるのじゃ!是非お主も来ぬか?」
「わたしがですか?」
「うむ、お主とて、親政殿の与力じゃ。参加しても問題なかろう。それに軍議となればお主にも関係ない事は無いだろうしのう。」
「と言うことは戦でございますか?」
「どこかと一戦交えるかもしれぬのう。」
「わかりました。是非参加させていただきます!」
「うむ、ではまた明日!」
そう言って重俊は去って行った。
「気になりますね。」
「出雲もそう思うか。ま、俺は闘えるのであれば相手が誰でもいいけどね。」
明日の軍議が楽しみだ!
「さ、今日も稽古頑張って行こうかっ!」
「はい!」




