三十八日目 岡豊城囮作戦2
「あいつ、槍を投げたぞ!」
「そんなことするやつ他にいねぇ。」
敵兵は足止まり、ざわつき始める。
「何をしておるか!狙う首が自ら現れたのだ、皆の者かかれ!!」
「「おおっ!!」」
あーあ真っ直ぐこっちに来ちゃってるよ。無防備だなぁ。と俺は片手を上げ。
「弓兵、放て!」
ヒュンッ
ヒュンッ
ヒュンッ
「ぐぁぁぁぁ。」
「弓兵が隠れていると、うぁぁあ!!」
「宗久様!」
「大丈夫だ、大事無い。」
「ここは一度引きましょう。」
「ならん、城は目前ぞ!」
「しかし!!ぐあぁぁ!」
「おい、返事をせぬか!くっ、ここは引くしか無いのか。」
敵先鋒を任された、香川 宗久は開戦したばかりだと言うのに一度引き返そうとしていた。
「ねぇ、どこ行く気?」
「お、お主!!」
「狙う首が目の前にあるよ?」
「お、おのれぇ....!覚悟っっ!!!」
ザシュッ!ボトッと首が1つ落ちた。
「敵将、討ち取ったり!!さぁ雑魚共!この首欲しけりゃドンドン来い!!」
敵は皆、槍でしか攻撃して来ない。しかし、俺にそのリーチの長さは関係ないよ。弥三郎との稽古で検討済みだ!
あ、でも背後からの弓撃ちは検討してないや。味方さん俺に矢、当てないでね。
そこから敵兵を4、5人殺して、門へと戻っていく。出たり、引いたりを繰り返して、敵を減らしつつ、敵をおびき寄せる。
逃げられては困るからな。今回は手加減しつつ行かないと。俺が前後しながら戦うと味方も引きやすいだろうし、なんていい戦い方なんだ!自画自賛しちゃうよ!
敵もやられっぱなしと言う訳には行かず、二の丸に入った途端、弓を引き始めたり、数の有利で広く展開したりとして来た。流石に広く展開されたら為す術もなく、大きく下がることとなった。
本丸と二の丸の間にてーーー。
「1人相手に何をしておるか!」
「し、しかし、あやつ槍の間合いを気付いたら詰めていて...ぐぁぁ!!」
「なんなのだあやつは...。」
道が狭くなり1対1の状況なら負ける気がしないな。今戦っているのは...一条の奴らか。一条も大した事ないんだな。
俺の予想だが、二の丸を抑えたので、先鋒の本山軍はそこでガタガタになった陣形を一度立て直しているのだろう。他国の軍は中堅って所かな。
そんな事を考えているうちに本丸が背後まで迫ってきた。ここを抜かれたらもう後がないな...。
よしっ!!と自分を鼓舞し、少し押し返そうとした。
ガキッンーー。
「へぇ、俺の刃を止めるほどの奴がいるなんてね。」
「儂は松永 弾正じゃ。しかと覚えておくと良い!」
「ええ?!!松永 弾正って、あの久秀?!」
「そうじゃ。松永 久秀とは儂の事よぉ!」
儂と言っているがまだ40歳。この事態で言えば結構年寄りだが、年に似合わず物凄いパワーを持っている。
松永 弾正 久秀。日ノ本一の裏切り者。自分の味方はもちろん主君さえも平気で暗殺するような大悪党。戦国マニアなら知ってて当然の人物だ。
「な、なんでこんなところに?!」
「はっはっはっ!茂宗殿に良い陶器を貰ろおてなぁ。助太刀に参じた訳よぉ。」
「こ、これは不味いなぁ。」
「おい、どこへ行くのだ!待たんか!儂はまだ来たばかりじゃぞぉ!」
「相手したくないんだよ!!」
この人をうっかり殺しでもしたら、この後の歴史が...歴史が!俺の知らないところに行ってしまいかねない!!ここを突破されればあとは無いが、この際もう十分引き付けられただろうし、大丈夫さ!
「ま、待たんか!」
「待たない!」
「ぜぇぜぇ、ま、待てと言うておるだろう。」
「待たないって!そんな重い甲冑来てたら追いつけないぞ!」
「くぅ。年の割に体力には自信があったのじゃが、仕方があるまい。皆の者、後は頼んだぞ!」
「「ははっ!!」」
ひぇ〜、足軽は装備軽いから着いてきてるよ。まぁ追いつきそうではないけど。
弓兵!頼む!と櫓に声をかけた。その瞬間俺を追っていた足軽たちは次々に倒れて行った。
「助かった!!お主たちはもう裏門へ行ってくれ!後は俺が食い止める!」
「了解した!」
さ、久秀も居なくなったし、ラストスパート頑張りますか!!




