三十六日目 黒幕
安芸城から岡豊城へ向かう長宗我部軍。その中で国親と孝頼が話していた。
「孝頼、此度の事どう思う。儂は始めから仕組まれていたようでならんのだ。」
「某もです。」
「裏で手を引いておるものがおるとは思わぬか。」
「そうですね。本山のものか、安芸のものか。それとも細川か。」
「本山ならば、神森 出雲か?」
「某も最初はそう思おたのですが、あやつは自分の主にしか忠誠を誓いませぬ。他の家の主に媚びを売るなど考えられぬのですが。」
「それが主の為ならばとなればどうじゃ?」
「有り得ますかな。」
少し時を坂戻って、香宗の戦いより半月ほど前、本山城にてーーー。
「殿、一通の文が届いております!」
「光久。」
「はっ!」
光久が足軽から文を受け取り茂宗に取り次ぐ。
「誰からじゃ。」
「これは...裏切り者からですな。」
「ふん!そんなもの捨ておけ!」
「し、しかし....。」
茂宗は今、ただでさえ腹の虫の居所が悪い。これ以上悪化させたくない光久。
「某が読んでも構いませんでしょうか。」
「ふん!構わぬ。」
光久が文を開くとそこには目を疑うようなことが書かれていた。
「して、なんと?」
「あ、あはは....。あはははは....。」
「どうしたのじゃ?!」
「殿、大変にございますぞ。これをすれば滅ぼせるかも知れませぬ。」
「どういうことじゃ。」
「この文曰く、安芸と手を結び挟み撃ちにするが良し、と。」
「しかし、儂らに今戦を出来るほどの兵はおらぬ。」
「そこで、安芸と繋がりのある一条と北の大国細川から兵を借りよ、と。」
「なんだと?!そのようなこと細川が受け入れるはずが...」
「ここには、壺など高価な物を送れば細川は動くと書かれておりまする。」
「なんなのだあやつは。どこまで見透かしておる...。」
「最後に、恐れながらこの策が上手くいった際には是非とも仕官させて頂きたいとのこと。」
「...考えておこう。」
そこからは早かった。安芸に使者を送ったらすぐに良い返事を貰った。一条へは安芸から使者を送って貰い難なく交渉できた。細川には少し古くはあるが、茂宗の父の代からあった、陶器を持ち込んだら、瞬く間に受け入れてくれた。
「安芸はまだしもまさか細川も動いてくださるとは思っておらなかったですぞ。」
「晴元殿にはお会い出来なかったがな。」
「ではどちら様に?」
「松永 久秀と言うものじゃ。最初は警戒されておったが、陶器を渡せば手のひらを返すように接してきた。どうやら今はあまり敵を作りたくない様子だったな。」
「しかし、これで細川がお味方すると言う事ですな!」
「ああ、この後ろ盾があれば負けはせぬ!急ぎ戦の支度をせよ!息子の仇、今こそ討ち果たそうぞ!」
「「ははっ!!」」
一方、岡豊城では菊之助達が戦に出ていて1人退屈な弥三郎。今日は何をしようかと、菊之助に言われていた、らんにんぐと言うものをいている時。
「うむぅ。1人ではこれしきの事しか出来ぬな。そうじゃ!あやつがおるではないか!」
むふふ、と弥三郎はある館へと足を運んだ。
「おい、泰惟はおらぬか?」
「旦那様は少し前から家を空けております。」
「そうか。せっかく久々に一緒に稽古をしようと思ったのだがな。」
弥三郎が訪れて居たのは秦泉寺 泰惟の館。弥三郎の元指南役である。その任が解かれた今は国親の命により領内の牧場で馬を育てているらしい。
「忙しそうで何よりだ!さて、1人で何をしよう...。」




