↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱能力"感情が読めるだけ"の私が、13人のデスゲームで盤面を支配する(と、本人は思っている)  作者: SSS


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/14

最終話 場を、乱すな



「……まだ。……僕が、いるんですけど」



気弱な、少年が。


おずおずと、手を、挙げて、いた。



……そう、いえば、いた。


(完全に、忘れて、いた)



私と、五百旗頭は。


顔を、見合わせて。


それから、改めて、少年を、見た。



デスゲーム。


最後に、残ったのは。


私。五百旗頭。そして、この、少年。


……三人。



◇



「……そう、ね」



私は、気を、取り直して、少年に、向き直った。



「あなたが、いたわね。……いいわ。この、湊ミライが。最後の、仕上げに。あなたも……ダーク・サイコロジカル・アタックで。沈めて、あげる」


「だ、ダーク……何、ですか、それ」


「知らないの? 私の……必殺技よ」


「今、考えたでしょう」五百旗頭が、冷静に、突っ込んだ。「ちょっと、いおきべさん。……雰囲気。雰囲気ってものが、あるでしょう」



◇



でも、少年は、首を、横に、振った。



「……あの。……戦わなくて、いいんです」


「え?」


「僕……もう、失格、なんです」



……失格?



私は、きょとん、と、した。



「どういう、こと? あなた、まだ……生きてる、じゃない」


「はい。……生きては、います。……でも。僕の、役割は……"最低、四人で、生き残る"こと、だったんです」



◇



……あ。



私は、数えた。



最低、四人。


でも、今、生きているのは。


私と、五百旗頭と、少年の……三人。


四人には、足りない。



「……つまり」


「はい」少年は、力なく、笑った。「四人を、下回った、時点で。……僕の、勝ちの目は、なくなったんです。だいぶ、前に。……もう、とっくに」



……そう、だったの。



少年は、ずっと、隅で、震えて、いた。


何も、せずに。


……いえ、違う。


「何も、できなかった」んじゃ、ない。


「何を、しても、無駄」だと、とっくに、わかって、いたのだ。


自分の、負けが。


もう、確定して、いる、ことを。



◇



「……なんだ」



私は、気が、抜けた。



「じゃあ……戦う、必要も、なかったのね」


「はい。……すみません」


「謝らなくて、いいけど」



……なんだか、拍子抜けだ。


最後の、敵かと、思ったら、とっくに、脱落して、いた。


……まあ、いい。


とにかく、これで、本当に、終わり。



私は、ふう、と、息を、吐いて。


勝ち誇った、顔で、宣言、しようとした。


「これで……私の、勝ちよ」と。



――その、とき、だった。



◇



『――ゲーム終了、条件を、確認しました』



あの、声が、響いた。


ゲームの、始まりに、ルールを、告げた。


抑揚の、ない、あの、声。



『役割、達成者を、確認します』



私は、びくり、と、した。


(……役割?)



『参加者、五百旗頭、伊織。役割――"自分を、含む、二人で、生き残ること"。……達成を、確認。あなたを、勝者と、します』



……え?



私は、五百旗頭を、見た。


五百旗頭は、涼しい顔で。


……ちょっとだけ、得意げに、肩を、すくめた。



◇



「……二人で、生き残る?」



私は、目を、丸くした。



「それが……いおきべさんの、役割?」


「ええ」五百旗頭は、頷いた。「"自分と、誰か。二人、生き残れば、クリア"。……相手は、誰でも、よかったんです。X、でも、少年でも。……でも、結果的に」



五百旗頭は、私を、見た。



「……あなたと、二人。生き残った。だから……私の、勝ち」


「……ちょ、ちょっと、待って」



私は、慌てた。



「じゃあ……いおきべさんは。最初から、私を……"生き残らせる"ために、動いて、いたの?」


「まあ……そういうことに、なりますね」



◇



(……そう、だったの)



私は、呆然と、した。



ずっと、私は、思って、いた。


盤面を、支配して、いるのは、私だと。


私が、五百旗頭を「協力者」として、使って、いるのだと。


……でも、違った。


逆、だった。


五百旗頭が、私を。


「二人で、生き残る」ための、相棒として。


……ずっと、守り続けて、いたのだ。



拘束の、芝居も。


命令の、男の、撃退も。


エルフの、返り討ちも。


X、との、決戦も。


……全部、五百旗頭が、私を、生かすために、打った、手。



(……私は、勝った、んじゃ、ない。


……勝たせて、もらった、の?)



◇



……いえ。



私は、ぶんぶん、と、頭を、振った。



(そんな、はずは、ない。


だって、私は、天才。


盤面を、支配する、者。


X、の、心を、読んだのも、私。


みんなを、引っ掻き回したのも、私。


……そう。私が、いたから、五百旗頭も、勝てた。


つまり、実質、私の、勝ち。


うん。そういうことに、しておく)



私は、都合の悪い、真実を。


いつもの、ように。


心の、奥に、そっと、押し込めた。



◇



「……ねえ、いおきべさん」



私は、ふと、気に、なって、尋ねた。



「私の、役割は……なんだったの? ほら、最初に。……"知っている"って、感覚だけ、ねじ込まれた、でしょう。あれ……なんか、地味だな、って。ろくに、読まなかったんだけど」


「ああ」五百旗頭は、なぜか……少しだけ、笑いを、こらえるような、顔を、した。「あなたの、役割。……気に、なります?」


「なるわよ。……どうせ、私のことだから。……"盤面を、支配せよ"とか。……そういう、大役、だったんでしょう?」


「いえ」


「……いえ?」



◇



五百旗頭は、一拍、置いて。


それから、静かに、言った。



「あなたの、役割は……"場を、乱すような、言動を、せずに。最後まで、生き残ること"。……でした」



……。



…………。



「……は?」



◇



場が、しん、と、静まった。



場を。乱すような。言動を。せずに。



……私が?



私は、自分の、これまでを。


猛烈な、勢いで、振り返った。



開幕、早々。


誰も、聞いて、いないのに「天才、美少女」と、高らかに、自己紹介し。


血迷った、ふりで、命令の、男に、突っかかり。


拘束されて、目隠しされて、転がされ。


エルフを、挑発で、逆上させ。


挙句、イケメン二人を、壁に、並べて。


「溶けろ、服よ」と、服を、溶かして。


「眼福」と、恍惚と、した。



……。



……それ、全部。


「場を、乱す、言動」では?



◇



「……ちょ、ちょっと、待って」



私は、蒼白に、なった。



「じゃあ……私……最初から……失格?」


「はい」五百旗頭は、あっさりと、頷いた。「かなり、早い、段階で。……たぶん、第一声の、自己紹介の、あたりで。……もう」


「そんな……!」


「むしろ」五百旗頭は、くすくす、と、笑った。「あそこまで、派手に、場を、乱しておいて。……よく、生き残った、なあ、と。……そこは、感心、しました」



◇



(……嘘。嘘、でしょう)



私は、くらり、と、めまいが、した。



私は、ずっと「盤面を、支配して、いる」と、思って、いた。


でも、実際は。


……最初の、一言で、とっくに、脱落して、いた。


私が、得意げに、引っ掻き回して、いた、あいだ。


私は、もう「勝ち」の目が、なかった。


……ただ、場を、乱す、失格者として。


うろうろ、して、いた、だけ。



それでも。


私が「生きて」いられたのは。


……五百旗頭が「二人で、生き残る」ために。


私を、守り続けて、くれた、から。



◇



「……ねえ」



私は、力なく、五百旗頭を、見た。



「……私……勝ってない、じゃない」


「まあ……役割の、うえでは、そう、ですね」五百旗頭は、頷いた。「でも……生き残った。それは、事実です」


「……なんか……納得、いかない」


「ふふ」


「勝ったのは、いおきべさんで。……失格してたのは、私で。……なのに、生き残ってて。……なにこれ。……私……ずっと、何と、戦って、たの」



◇



五百旗頭は。


倒れた、X、を。


それから、白い、部屋を、ぐるりと、見回した。



十三人が、いた、部屋。


今は、三人。


(正確には。


一人は、とっくに、負けて、いた、少年で。


もう一人は、失格して、いた、私、だから。


……ちゃんと「勝った」のは、五百旗頭。ただ、一人)



「……ミライ」



五百旗頭が、私の、名を、呼んだ。



「勝てましたね」


「……だから、私は、勝ってないってば」


「ふふ。……そう、ですね」



五百旗頭は、くすり、と、笑って。


それから。


……ずっと、昔の。


あの、図書室の、ときと、同じ。



あの、可愛らしい、顔で、言った。



「――でも。二人で、生き残れて。……よかった」



◇



……ああ。



私は、なんだか、泣きそうに、なった。


(絶対に、泣かないけど)



勝った、とか。負けた、とか。役割が、どうとか。


……そんなことは、この、瞬間、どうでも、よくなって、いた。



敵だらけの、殺し合いの、閉鎖空間で。


私は、一人じゃ、なかった。


ずっと、隣に、この人が、いて、くれた。


……それだけで、十分だった。



……いえ。



(それだけで、十分、なんて。


らしくない、こと、言うのは、やめましょう。


私は、天才、美少女。湊ミライ。


……盤面を、支配する、者、なんだから)



◇



「……ねえ、いおきべさん」


「はい?」


「今回のは……たまたま。あなたの、役割が、私を、生かすことだったから。……協力、してあげた、けど」


「ええ」


「次は……私が、ちゃんと。……盤面を、支配、するから。見てなさいよ」


「ふふ。……はい。楽しみに、しています」



五百旗頭は。


やっぱり、あの、丸顔に。


ボブの、髪を、揺らして。


ふわりと、可愛らしく、笑って。


……そして、小さく、呟いた。



「ではでは。……お家に、帰りましょうか。ミライ」



◇



白い、光が、部屋を、包んで、いく。



ゲームは、終わった。



勝ったのは、五百旗頭、伊織。


失格して、いたのに、それに、気づかず。


最後まで「盤面を、支配した」と、信じて、いた、女――


湊ミライは。



……この、期に、及んでも。


やっぱり、自分が、負けて、いた、ことに。


気づか、ないまま。



光の、中で、得意げに、髪を、かき上げた。



(了)



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  【 湊ミライの ゲーム攻略メモ 】── 最終版

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

・私の能力:感情の揺れがわかるだけ。攻撃不可。

・私の役割:「場を乱すような言動をせずに生き残ること」。

  ……最初の自己紹介で、たぶんもう失格してた。

〔決着〕

・勝者:五百旗頭伊織(役割=二人で生き残る/相手=私)。

・少年:4人生存できず失格。戦う必要なかった。

・私:失格済み。でも生存。だから五百旗頭の勝ち条件成立。

・つまり私は、勝ってないどころか、途中で負けてた。

  ……でも。まあ。私のおかげ、ということにしておく。

・結論:一人じゃなかった。それが、いちばんの収穫。

  (※でも次は、ちゃんと私が盤面を支配するんだから)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

                     ― 完 ―

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。