ご主人様、もう少し強く来ていただいても♡
朝食を終えたご主人様は、椅子から立ち上がり、広間の中央に移動した。そこは、磨き上げられた大理石の床が広がる、訓練用のスペースだった。彼の目は鋭さを増し、身体からは闘志が滲み出ていた。
「さぁ、早速、今日もいつもの仕事をして貰おうか。僕と戦ってくれ。」
彼の声には、挑戦的な響きがあった。
リリアは一瞬でメイドの柔らかな雰囲気を脱ぎ捨て、戦士のような姿勢に変わった。
「はい、ご主人様…!」
彼女は姿勢を低くし、碧い瞳に鋭い光を宿した。その姿は、まるで優雅な戦士のようだった。
ご主人様は一気に間合いを詰め、身体を回転させながら裏拳を放った。
「だあぁぁぁっ……!」
その拳は空気を切り裂く勢いだったが、リリアは軽やかに身を翻し、攻撃をかわした。
「申し訳ありませんが…これくらいの攻撃なら…」
彼女は微笑みながら、瞬時にご主人様の懐に飛び込んだ。まるで風のように滑らかな動きだった。
「チィ……!」
ご主人様は右膝を繰り出し、リリアの腹部を狙った。だが、リリアは片手でその膝を軽々と受け止め、優雅に微笑んだ。
「ご主人様、もう少し強く来ていただいても…♡」
ご主人様は歯を食いしばり、右足を下ろすと同時に前に踏み込み、頭突きを繰り出した。
「だぁっ……!」
だが、頭突きを喰らってもリリアは微動だにしない。
「あら…ご主人様、私には効きませんよ♡」
彼女はそう言うと、瞬時にご主人様の背後に回り込んだ。
「くそっ……!」
ご主人様は焦り、腰を落として踏ん張ろうとした。だが、リリアの手が彼の腰に回り、軽やかに持ち上げる。
「ふふ…投げ技はいかがですか?♡」
「うおおぉっ……!」
ご主人様の叫び声が広間に響き、彼の身体は弧を描いて床に叩きつけられた。バックドロップの衝撃で、大理石の床がわずかに震えた。
リリアは倒れたご主人様に近寄り、優しくその頭を撫でた。
「あらあら…ご主人様♡ お怪我はありませんか?」
彼女の声は、戦いの直後とは思えないほど穏やかだった。
ご主人様は床に倒れたまま、息を整えながら呟いた。
「くっ……受け身は取ってるので大丈夫だ……僕の動きの何が悪かった……?」
リリアは膝をつき、優しく微笑んだ。
「ご主人様の動きは素晴らしかったですわ…ただ、私の方が少しだけ経験が多いだけです。」
彼女の言葉には、敬意と励ましが込められていた。
「頭突きで切り返した僕の動きはどうだった……? アレは君の石頭だから、効果がなかったのだろう?」
ご主人様は少し悔しそうに尋ねた。
リリアはくすっと笑い、銀髪を軽くかき上げた。
「はい、私の頭は特別硬いんです♡ でも、ご主人様の頭突きの角度とタイミングは完璧でしたわ。」
彼女の瞳は、ご主人様を誇らしげに見つめていた。
ご主人様は床に寝転んだまま、遠くを見つめた。
「なるほどな……今の僕で、ヒクトン・ブレイシーに勝つ事は出来そうか……?」
リリアはご主人様の言葉に一瞬動きを止め、顎に手を当てて考え込んだ。
「ヒクトン様ですか…?」
彼女の碧い瞳が真剣な光を帯び、広間の静寂を切り裂くように言葉を続けた。
「ご主人様なら、あと3ヶ月の特訓で勝てる可能性はありますわ。ただし、ヒクトン様に勝つには『蒼き情熱の炎』の対策は必須となります。」
ご主人様は床から勢いよく立ち上がり、目を大きく見開いた。
「蒼き情熱の炎……? なんだ、それは!?」
彼の声には、未知の技への好奇心と闘志が滲んでいた。朝の光が彼の顔を照らし、汗と決意が混ざり合った表情を浮かび上がらせた。
リリアは穏やかに微笑み、右手をそっと差し出した。
「身体に流れる生命エネルギーをコントロールして、一部分へと集中させる技ですわ……このような感じです。」
すると、彼女の掌が突如として蒼く輝き始めた。柔らかな光が広間に広がり、まるで静かな炎のように揺らめいた。リリアの銀髪がその輝きに照らされ、ご主人様は息を呑んでその光を見つめた。
愛の形は人それぞれだ。
当人達がこれをラブラブと感じているなら、それでいいと思う。




