|自由都市群《パエストゥム》に行く前に
パンサーさんは、星の海の借金奴隷になった。
「仲間だから、これからはパンサーと呼び捨てにしてくれ!」
借金奴隷だけど、私達より強いからさぁ。さん付けしてたけど、本人が言うなら良いよね? 慣れるのに時間がかかりそうだけどさ。
ヘレナの子どもの件、ジャスとクレアに話したら激怒した。従兄弟になるからね。
「取り返そうぜ!」と吠えるジャス。
「そんなに簡単に手放すかな? ヘレナに状況を詳しく聞かなきゃいけない」
ルシウスも腹を立てているけど、力ずくで拉致したら犯罪になるかもしれない。
「もしかしたら父親が手放さないのかもな?」
そうか! 子どもには、父親がいるよね! 私にもクズ聖王がいたんだ。あまりのクズっぷりに忘れていたよ。
「パンサー、何か聞いていないか?」
パンサーは、腕を組んで考えている。
「ヘレナは、あまり子どもの事を話したがらなかったからなぁ。でも、自由都市群に帰ったら、一番に会いに行っている。確か……孤児院にいたと思う」
「孤児院なら、母親が引き取ると言えば良いんじゃないのか?」
クレアは楽天的だ。
私も頷く。北の大陸では、そうだったから。ただし、親族が現れて、年頃の女の子を引き取ると言い出したら、要注意だけどね。
「それがヘレナが借金奴隷だった時の子どもだから、少しややこしいのだ」
全員が嫌な予感がしたけど、ルシウスが代表して質問する。
「その子は奴隷なのか?」
「グレーゾーンなんだよなぁ」とパンサーも詳しく知らないみたい。
「何歳ぐらいなの?」
クレアは、ジャスを育てたぐらいなので、子ども好きなのかも。
ヘレナは、七年間借金奴隷だった。だから、七歳以下だとは思うけどさ。
「さぁ、会った事はないんだ。でも、五歳ぐらいじゃないかな? 時々、ヘレナが服を買っていた」
ふうん、五歳なら親の側にいたいよね!
「その子が奴隷なら、金で解放できるが……そのくらいヘレナだって考えただろう」
ジャスが一旦喜びかけたが、眉を顰める。
ヘレナも冒険者として金は儲けられるものね!
「ああ、何か自由都市群と契約しているのだろう。私の護衛兼見張りを引き受けたぐらいだからな」
「あっ、気になっていたけど……パンサーさんは何故防衛都市に来たの?」
私は、ずっと引っかかっていたんだよね。
「そりゃ、金儲けの為さ! 義手のメンテナンスに年に金貨三百枚以上必要だったんだ」
ひぇぇ、暴利だ! でも、ヘレナをつけた理由がイマイチ納得できない。
「自由都市群は、防衛都市をスパイして欲しかったのかもな」
ポソッとパンサーが呟く。
「それを察していたが、金がほしかったのも確かなんだ。だから、さん付けしなくて良い!」
だよね! 自由都市群がただ親切に高級な義手を付けてくれたわけじゃなさそうだもの。
「ヨハンセンには顔向けできないぜ!」と言うけど、あちらも問題を抱えているんだよね。
でも、今はオークダンジョンの殲滅が大切。
だからこそ、ヘレナの子どもは取り返さなきゃね! そうしないと、ジャスもクレアも心が落ち着かない!
オークダンジョンの近くに冒険者ギルドが村を作るそうだ。その間に、できたら子どもを取り返したい!
「先ずは、食物ダンジョンの十五階を周回して金を儲けなきゃな!」
クレア達、クレージーホースは前の護衛依頼、途中で帰ったので半額しか貰えなかったそうだ。
「商隊長がビビって引き返すと言った癖に、報酬は半額なんだぜ!」
つまり、子どもを取り返す為に自由都市群に行く前に金策が必要みたい。
誰かが高額でマジックバッグを売ったからじゃないかな? まぁ、オークションでは、そんな値段で手に入らないけどさ。
私の頭の上にいた白猫が「迷宮ダンジョンも攻略しろ!」と言い出した。
「機械兵や機械騎士、それに機械馬と機械ハチドリ、召喚の方はレベルアップしている」
つまり、材料を集めてレベルアップさせろと言うのだ。
「自由都市群に不要な機械兵のパーツを売っても良いな」
ジャスは、早く子どもを取り返したくて、焦っている。
「自由都市群の為になる事はしたくないな! クレージーホースを雇った商隊は、根性がなかったけど、いずれは自由都市群に向かう商隊はあるだろう。それに雇われて行く方が警戒されない」
ルシウスの意見に、他のメンバーも同意する。
「俺がヨハンセンに話しておこう!」
パンサーが借金奴隷になった事でショックを受けなきゃ良いけどね。
自由都市群への商隊の護衛の依頼を受けるまで、迷宮ダンジョンと食物ダンジョンで素材と金儲けだ。




