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145.花の生贄

北西の森の奥、アプシュルノを先頭に山斬は10mくらい離れて指示しながらついて行く形で歩いていた。


「ねえ!山斬としては私ってどれくらい怪しいの?」

アプシュルノは後ろの山斬に聞こえるように振り返って半ば叫んで話す。



「形だけでも疑っていなければ、ワティフェィは敵かもしれない人間を信用する不用心な奴になってしまうからな。まあ正直言うと、恐怖を制御出来ないワティフェィが悪いのだがな!」


アプシュルノを怪しむ気は無いのに、まだ心は、衝撃と激痛のトラウマでざわついている。

でもその恐怖心も、堅実なアプシュルノを見て薄まっていた。

この調査が終わった後、しっかり謝って、また仲良くなろう。山斬はそんな事を考えていた。



しばらくして先頭のアプシュルノが白い一面に咲く白い花畑についた。

後ろからよく見ると、花畑の下に動物の死体が転がっていて、ところどころ血が付着している花を見かける。


「これが、狂奇花(リピトリー)か...綺麗なのに、奇妙でどこか恐ろしいぞ。」


「山斬、狂奇花(リピトリー)って?」

怪竹(かいだけ)の花バージョンだ。だが、怪竹(かいだけ)と比べて自我を持っているという事ぐらいしか知らないけどな。」

「んん....怪竹(かいだけがまず分からない。」



(....そうか..ワティフェィが時を戻しているから、情報量に差が生まれているのか。)

アプシュルノは怪竹(かいだけすら知らない。

山斬の情報量とアプシュルノの情報量には大きな差がある事に山斬は感心を覚えた。


「アノ、どうだ?アノはこの花を処理出来そうか?」


「え?ええ、雑草を抜く位誰でも出来ると思うけど....」


狂奇花(リピトリー)は人を殺す事が出来る。大きくなって弾丸みたいな物を飛ばしてくるらしい。」


「ふうん。でも大丈夫。私、身体能力には自信があるの。任せて!」


「...信じるぞ?」


「うん。」

そう言って、アプシュルノは花畑に向かって歩き始める。



アプシュルノがしばらく歩いて、花畑の真ん中に差し掛かろうとしたその時、

「ウハヒフヘヒハホ!!」

一輪の花は奇怪な笑い声と共に、

大きな花の怪物に変化した。


「ウヒヒヒーー!!!」


狂奇花(リピトリー)がアプシュルノに襲いかかろうとすると、

「ドシュ!」


一瞬の内に、狂奇花(リピトリー)は何かに貫かれた。

そしてそのままグチャグチャになって、その場に倒れた。


山斬は何が起きたのか分からなかった。

狂奇花(リピトリー)が倒れた後、新たな狂奇花(リピトリー)が出現する!

今度は二匹、だが...


「ハヒハハ!..ドシュ!フハハヒ..ドシュ!」

狂奇花(リピトリー)はまた貫かれる。


今度は見逃さなかった。



棘がアプシュルノの腕から出て、狂奇花(リピトリー)を貫いた。



アプシュルノが瞬時に毒棘を飛ばしていたのだ。





アプシュルノは2年前、記憶を失った状態で会社のベットから起きた。

そこから孤児院に引き取られるが、

彼女には毒棘があり、人と触れ合う事すら出来ず、知らず知らずの内に疎遠になっていった。

 

寂しさをどうにかしたくて、その孤児院に勤める女性に抱き着き、命に別状は無かったが、病院送りにしてしまった。

アプシュルノは完全に孤児院から切り離され、工場で働く事になる。


そんな退屈な日々が続いたその時だった。


急な地震が起こり、アプシュルノを含める工場内の人間は逃げ出すが、逃げようとした矢先、アプシュルノの棘が運悪く引っかかる形で、ぶち開けた壁に挟まってしまった。


皆んな逃げていく中、助けようにも、棘を恐れて誰も助けなかった。

助けを呼び、叫んでいたその時。

山斬がアプシュルノの元へやってきたのだ。

クセのある見た目と性格だが、どこか馴染みがあって一緒にいるのが楽しかった。




そして今そんな彼の助けになれている。

高揚する気持ちを抑えながらアプシュルノは戦闘に集中する。


「最初はビックリしたけど、一撃でやられるようじゃ

なんの問題も無いわ!」


狂奇花(リピトリー)はどんどん加速的に現れるが、それに負けじとアプシュルノも棘を飛ばす速度を上げる。


「ドシュドシュドシュドシュ!!」


(花が減ってきたわね。これで山斬に怖がられる事は.....)

「アノ!!!足元だあああ!!!!!!」


「....!?」

アプシュルノは振り返ると自分の方向へ走る山斬の姿があった。


次に足元を見ると.........

「.......はっ!!」

狂奇花(リピトリー)がアプシュルノに向かって噛みつこうとしていた。


反応した速度が遅かった。そして...

「グシャア!!!」

「アノオオオオオオオ!!!!!!!!」





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