79.決定的で大雑把な反応
食事中に急に始まった会議は終わり、食事も終わらせた。
今日は山斬と圭吾がレーダーを使うように言われている。
山斬は村の北、圭吾は村の南と位置づけられている。
敵がいるのか怪しいくらいに山斬には直接の情報は無く、ここまで仲間経由での情報しか無い。
別に情報の正しさが無い訳では無いのだが、やはり山斬としては直接的な情報が欲しかった。
レイジーに言われた時間を退屈にも待つ山斬。
「ブォォーン...ブォォーン!」
すっかりこの変な穴の音にも慣れてしまった。
そして、遂にレーダーを使う時間が来た。
村の北、族長の家前で欠けた満月が東側に見えるくらいの時刻にレーダーを起動する。
「ピピピン!」
レーダーが強く反応した。
反応する方角は左上方向を示している。
「ついに見つけたぞ!待っているといいぞ!厭魂を持つ者よ!」
山斬にとって、初めての直接的な敵の情報であり、平和で退屈な日常には無い刺激だった。
また山斬は時を戻せる力を持っているので多少の危険はなんとかなるのだった。
山斬は走ってレーダーの方角にいる敵を見つけ出そうとする!
がしかし、レーダーは山斬が走っている最中に切れてしまった。
「おいいい!レーダーよなぜ切れるのだ!」
もう一度ボタンを押しても反応しない。山斬は機械に詳しいので、なぜ切れたのかの理由が分かった。
電池切れだ。
「このレーダー電池めちゃくちゃ少ないではないかああ!!」
レイジーが電池切れの注意をしていたのは知っていたとはいえ、これ程とは山斬は全く思っていなかった。
「まあいい!とりあえずレーダーの反応から計算してあの辺りに敵はいる!おおおお!!逃がさんぞお!!!」
遠くから段々と人だかりが見えてくる。
恐らくあの中に敵はいる。
そして走って近づいていくと...
なんと族長の散歩による人だかりだったのだ。
ボラバン、ウプイ、メメイ、アプシュルノ、そして周りにいる村人20〜30人程。
凄い形相で走ってやって来る山斬はそこにいた皆んなの目線を集めた。
「はああ!はああ!ここか!?この中なのか?」
「どうしたの山斬?」
「さっきレーダーがこの辺りを指したのだ!何処だ?何処に居るのだ!何か変な人影は?小さな事でもいいから何かいたか?」
とてつもない形相をする山斬に周りの人は引き気味だった。アプシュルノでさえ混乱していた。
山斬にとっては敵を見つけるチャンスだ。
彼の正義感が冷静さを奪っていた。
「山斬兄ちゃん私達..何も見てないようぅ?」
「そうじゃ、ワシらは何も見ておらん。村の為に一生懸命になってくれるのはありがたいし、ワシ自身も、もしお前らが捜しておる者が子供達をさらったのならば尚更ありがたいが、ワシは他の村人の族長でもある。騒ぎを起こさないで欲しいのじゃ。」
その言葉を聞いて周りを見渡すと、村人が集まっていた。
これでは全く絞り込めない。
だが山斬には一つの可能性を思いついた。
(レーダーはいずれもこの族長達の方に向いている。敵はもしかしてこの散歩組の中にいるのか?......いやダメだぞオッコメーノ。これはあくまで可能性に過ぎない事を忘れるんじゃない。)
レイジーが一度悩んだ可能性。
しかし、レイジーの言った通り擬態したり、村人に紛れ込んでいる可能性もある。
結局決定的な情報を手に入れる事なく、山斬は宿にて就寝した。




