召喚獣はおじさんの下を目指す
本日二度目の更新となります。
前話をご覧になっていない場合、ご覧なった方が良いかもしれません。
「どうして全力で攻撃をしない!」
本日何度目かの召喚主の怒号。もはや恒例過ぎて驚くことも、怒りを覚えることもない。見てみろ、お前の部下として配属された人の顔を。またかとばかりに呆れているぞ。
「聞いているのか、サラマンダー!」
出来れば聞きたくはないし、言われたくもない。
こうなってはどうせもう無駄なので、聞き飽きた言葉には言い飽きた言葉で返す。
「まだ巡回の折り返し。全力で攻撃すれば魔力が切れる」
「どうにかしろ!」
無責任な言葉だ。俺の言葉が通じずとも、召喚主の言葉を聞いて察したのか、配属された部下の中でも特に偉い奴が召喚主を宥める。
何を言っているか分からないが、うまく宥めることに成功したのか召喚主は肩を怒らせながらも大声で撤退を指示。その大声で魔物が釣られ、少し時間を無駄にした。
まるで子守でもしているかのようだ。……配属された人たちよ、お前たちも似たような気分だろう。
巡回が終わり、兵舎に戻れば日当たりの良いところに置かれた植木鉢の様子を見に行く。
これが今の唯一の楽しみ。おじさんから貰った種の観察だ。
すでに芽が出てすくすくと成長し、そろそろこの植木鉢では小さいのでは、と最近心配になってきている。
育て方の紙は召喚主が持っているので、その通りに育てているはずだが。
もしもおじさんから辛い植物の種を貰っていなければ、すでにここにいなかったかもしれない。それだけこの植物が重要なのだ。
なのにその植木鉢が見当たらない。いつも同じ場所にあるのに、誰かが盗みにしてももう少し価値のあるものにするはず。
……はっ! もしや召喚主が植木鉢を大きなものに変えようとしているのでは? もしくはこの基地のどこかに植えたのかもしれない。
ならば召喚主にどこに植えたのか聞かなければならない。あれを守るのは使命なのだから。
「捨てた」
は?
「手を抜く召喚獣のために何で植物を育てなければならんのだ。煩わしかったので窓から投げ捨てたわ。そんなことより明日は手を抜くなよ」
あまりのふざけた発言に火を噴きそうになったが、ここは食堂。他の者に迷惑がかかるので抑えて、今はひたすらに熱を溜める。
そして深夜、厩舎から出て召喚主の部屋に向けて火球を放つ。浅く広がる火だ。すぐに消されるだろうが、多少の火傷は負うだろう。
しかしそんなことは関係ない。あの植物が無くなった以上、もうここにいる理由はない。早々に基地から出ていくと。
「何でお前がいるんだ」
少し離れたところでほぼ同時に城壁から飛び降りたケルピーがいた。
ケルピーの見分けなど付かないが、こいつは学院で一緒にいたケルピー、だと思う。
「クルルル」
何を言っているか分からない。ただ、こいつも召喚主から逃げ出したくなるようなことがあったのだろう。
……おじさんの下に向かうか。おじさんなら何とかしてくれるかもしれないし、何より話が出来る。
「おじさんの下へ行くぞ。確か北だったか。とりあえず西に戻って、学院まで戻ったら北に行けば良いだろ。おじさんは元気かね」
「クル、クルルル」
分からねえよ。まあ、ケルピーもこっちの言葉は分からないだろうが。
深夜の道は、月明かりのおかげで意外にも明るかった。




