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おじさんは極寒の森林の奥地を目指す

 月に一度行われる熱の魔石の採掘。

 それを基地の兵士と一般的な召喚獣が手伝いをしている間に、一般的ではない召喚獣の私とグレイ、キジュツは極寒の森林の奥地を目指す。


 目的地は当然、竜に例えられた小山。そこにしか生えていない植物を狙う。


 しかし、それにしても。


「魔物が多いですね」


 やはり巡回の兵士が来ないほど奥ともなると魔物の数が激増。魔物を倒して少し進めば別の魔物が現れる。

 これが不凍熊のように美味しい魔物なら良かったのだが。


「トモダチ、さすがにこれは多い。それに、隠れずに襲い掛かってきている」


 グレイに言われて気づく。どの魔物もこちらを見つけては正面から襲い掛かってくる。

 私の記憶の限りでは今グレイに撃たれた白い狼は雪の中に潜んでいたはず。飛んできたところをナイフで迎撃された蛇も枝に巻きついていたはず。

 正面からそう攻めてきては折角の迷彩となる白さが役に立ちにくいだろう。


「あはは、この辺りはいつもだよ。魔物の血の気が多くて、異常に数が多い。面白いのは小山に向かうにつれ増えていくのに、こっちが小山に登ると諦めるんだよ。だから植物は採り放題」

 

 近づくにつれ増えるのに、そこに行けば来なくなるとは。なんとも不思議なことで。噂通り植物が魔物を引き付けるほど美味しいとか? それなら小山にも登るはず。

 考えたところで答えが出るはずもなく、代わりに湧き出てくる魔物を処理していると。


「あ、コールビーだ! おじちゃん、砕氷ハチミツを作るコールビーが出てきた!」


「え? 本当ですか? ああ、そっちも良いな。でも溶けやすいんですよね? となると小山の後に行った方が良いか」


 森林の奥からこぶし大で真っ白な蜂が大群で飛んできた。こぶし大の大きさと蜂の組み合わせ。常識で考えれば全力で逃げるべきだが、優秀な護衛がいる。

 そもそもこっちの世界の常識を知らない。


「あんまり虫は得意じゃないけど!」


 迫ってくるコールビーをキジュツはナイフを投げて落としていくが、如何せん数が多すぎる。それに飛行する虫となれば器用なキジュツでも確実に命中させるのは難しい。


「任せて、範囲拡大!」


 しかしグレイの前には無力。いつもよりも範囲の広がった光により一瞬の内に消滅した。


「うーん、ちょっと消耗が激しいかな? 余程のことがなければ大丈夫だとは思うけど」


「消耗……。光線銃の充電的なものか? 大丈夫なのか、そもそも光線銃の動力は何なんだ?」


 グレイが光線銃の一部を見て不安そうに口にしたので聞いてみたが、聞いてみたところで私では役には立てない。手伝えることがあれば全力で手伝うつもりだが。


「あ、心配させた? ごめんね、トモダチ。大丈夫。いつもよりペースが早いと思っただけで、全く問題ないよ。この光線銃は中に宇宙があってそれをエネルギーにしているからすぐに回復する。まあ、もしもエネルギーを全部使いきったら完全に回復するまで光線銃が使えなくなるけど。そんなことにはならないから大丈夫だよ」


 動力が、宇宙? まったく理解できない。ただそれも仕方ない。文明差がありすぎる。それを忘れていた。

 それからしばらく魔物を退治しながら進んでいると。


「おお! あれが竜に例えられた小山か!」


 目的地に到着した。

 頭を思わせる小さな丘から始まりそこから背中のような山脈が続き、尾を思わせるように最後に曲がりくねって終わっている。

 確かに竜に見える。しかし小さいとはいえ山。ウドを遥かに超える大きさ。

 これの背中を回って植物を採っていくのはかなり大変な作業で足腰に大きな負担を与えるだろう。

 二日後か、三日後に筋肉痛となることを覚悟しなければならない。しかしすでに丘の所に極寒の森林では珍しい青々とした植物が見えているのだ。行かなければなるまい。


 では早速、と思ったが何とも言えない感覚に襲われ足を止める。周りを見れば先ほどまでいた魔物がいない。

 はて、この感覚どこかで? それに魔物は小山に登ると来なくなるのでは? まだ小山に登っていないのに姿を消す理由は。


 ゴゴ、と何か揺れる音。


「グレイ、キジュツ。近寄って! 可能な限り身を寄せて!」


 その叫びと共に地面が大きく揺れる。周りの木々が雪を落とし、その所為で辺り一帯が真っ白になる。


「不味い! バリア!」


 そして何かを察知したのか、グレイが光線銃を上に向けると半円球の膜を作り出して私たちを覆う。

 その直後に大きな音と衝撃波が腹に響く。何だ、雪崩か? 確かに小山には雪が積もっていた。今の地震でそれが落ちてきたのか。

 だとすればグレイがバリアを張ってくれなければ全員雪に埋もれていた可能性がある。


「ありがとうグレイ、助かった」


「トモダチ、油断しないで」


 確かに、グレイの言う通り油断は禁物。未だに地震は続いているし、視界も真っ白。何が起こっているのか分からない。


 ……おかしくないか? 一番大きな揺れが終わり、次第に揺れが収まるはずなのに、揺れが弱くなるとまた強く揺れる、を繰り返している。

 しかしそれでも次第に揺れは収まった。後は視界が晴れるのを待てばいい。

 グレイがバリアを解除し、私は久しぶりの大地震でかいた汗を拭う。


「え? え? 今の何?」


大地震で驚いて腰を抜かしたのか、未だに立ち上がる気配のないキジュツに手を差し伸べる。


「地震ですよ。こちらではあまりないのですか?」


「違う、トモダチ。さっきのは地震じゃない」


 キジュツを起き上がらせて、雪を払う。


「地震じゃない? ……噴火?」


「そういう自然災害じゃないんだよ、トモダチ」


 自然災害ではない? なら何なのか、と問おうとしたがその前に答えが目の前に現れ……。いや、違うな。


「あー、グレイ。念のために聞くけど。移動してないよね」


「ボクらは移動してない」


 視界が晴れてはっきりと確認できた。

目の前にあったはずの小山が消え、まるで何かが通ったかのようにある方向だけ木々が押し倒されているのを。


 その木々が倒されている方向は私たちが来た道である。つまり。

 北の前線基地に向かっていた。


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