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異世界でも、お姉ちゃんに任せなさい!  作者: 佐々木 みこと
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第10話 異世界での簡単お料理

リッタの町から帰り、いよいよお料理開始です。

まだ、大した料理はできませんが…。

「皆様、お帰りなさいませ」

「町でのお買い物はいかがでしたか?」


別邸に帰宅した私達4人を、リアナさんとカレンさんのメイドコンビが迎えてくれました。

建物内に入ると、何ヶ所か小さくて可愛らしい花が飾ってあり、カーテンやテーブルクロスも新しくなっていて、町に出かける前よりも、とても爽やかな感じがする室内に変化していました。


「わぁ~! すごい……」

「ホント……建物の外観とは全く違うわね……素敵……」


優斗も私も、メイドコンビの優秀さに驚いていると、


「ユウト様とミユ様のお部屋もそれぞれ整えてございます。

部屋数が少なく私達と一緒になってしまいますが、ご容赦くださいませ」


リアナさんが申し訳なさそうに話をしました。

……でも目がキラキラと輝いています。


「……あれ? 私と優斗は違う部屋なんですか?」


「はい。ミユ様と私で一部屋、ユウト様とカレンで一部屋です。

 一日置きで、私とカレンは部屋を入れ替わってお二人をお世話することにいたしました」


「必ず一人はメイドが傍にいないと、ご不便をおかけしますからね!」


(……なるほど、そういうこと……)


私がリアナさんとカレンさんの説明に納得していると、


「ダメです! ミユ様。納得してはいけません! メイドの二人は用がある時に呼べばよいのです。お二人と同室となるのは、私とビリーの護衛騎士です。もちろん私がユウト様と……」


シーリスの発言に、メイドコンビが「なんですって?」と反論し、

何やら火花を散らしています……。


少し離れたところにいるビリーは「やれやれ……」と呆れているみたい。


その様子を見つめながら、冷静に考えてみると……


(あっ! シーリスの案は困る。私とビリーが同じ部屋ではないですか!)


さすがにユウト以外の男性と一緒の部屋では困るので、少し考えて部屋割りの結論を出してみました。


「……コホン! それでは部屋割りについては、私の決定に従ってください。3部屋の内、1部屋目は私とシーリス。2部屋目は優斗とビリー。最後はリアナさんとカレンさんということで……」


一番無難な部屋割りに、女性陣は皆、渋々ながらも納得してくれました。


(はぁ……モテる弟を持つ姉は辛いのね……)


と、内心は嬉しい感情を抑えて、溜息をつきました。



◇◇◇◇◇◇



「リアナさん。冷蔵庫があるんですか!!」


リッタの町で買ってきた食材をキッチンで出していると、リアナさんが嬉しい情報を聞かせてくれました。


「はい。保冷の魔法具がキッチン横の倉庫内にありますよ。毎日魔力を流す必要がありますが、一度流せば効率良く冷やしてくれて、半日は保てるかと……」


「ミユ様の魔力量なら、2~3日は大丈夫かもしれませんよ!」


リアナさんとカレンさんから説明を受けて、さっそくキッチン脇の倉庫へと足を運ぶと……ありました。

元の世界でいうところの、一人暮らし用の小さい冷蔵庫サイズです。

これでは、さすがに数日分の食材を買い置きすることはできませんが、傷みやすい食材を料理するまで入れておくには充分です。


メイドの二人が村内で購入してくれた食材を見ると、その中にパタパタ鳥の卵がありました。


(うん。これで、あの簡単料理はできるわね。)


優斗が喜んでくれそうな料理を思い浮かべて、それから私達が町で購入してきた野菜とイモ類、肉……そして薬屋で手に入れた調味料を並べてみました。これで何が作れるのかを考えてみます……。


(う~ん。厳しい……もっと色々とできるのかと思ったのだけど……)


小麦粉、牛乳、醤油、料理酒、コンソメ、酢など、元の世界で当たり前のように売っているものがあれば、一気に料理のバリエーションが増えるのですが、調味料としては、現在……砂糖、塩、コショウ、トウガラシ、シナモンのみです。


思わず「ふぅぅ~~~っ……」と大きく息を吐いてしまいましたが、やるしかありません。


「……よし! 栄養バランスは今回は無視。今できる料理を作って、優斗を喜ばせましょう!!」


そう気合いを入れて、メイドコンビの見学のもと、料理を開始しました。


◇◇◇◇◇◇


まずは、パタパタ鳥の肉を処理していきます。

すでにお店では、羽などが取られた状態で売っていたので、主として「胸肉」「モモ肉」「皮」そして「骨(鶏ガラ)」と切り分けていきます。


カレンさんに鶏ガラ以外を保冷の魔法具に一時的に入れて置いてくださいとお願いすると、


「えぇっ? 骨を料理するのですか!!」


と驚かれましたが、それは予想していました……。


「大丈夫です。二人とも私に任せて傍で見ていてください。お手伝いをお願いする時は声をかけますから……」


笑顔で話しかけると、二人とも顔を見合わせてから「承知しました」と返事をしてくれました。


次に、一番時間のかかるものに取り掛かります。まず鶏ガラを一度煮ます。血合いなどの臭みを抜くための食材が長ネギしかないので、一度煮て全体が白くなる程度に火が通ったら鍋から出して水洗いします。その時、血合いや内臓の辺りを良く洗っておくことで、臭みを抜けやすくするのです。洗い終えた鶏ガラは骨ごとぶつ切りにしていきます。もちろん、これは骨髄から味を染み出させるためです。


ガキン! ゴッ! ザクッ!


「ミ、ミユ様……何か怒っていらっしゃいます?」


骨を包丁で豪快にぶつ切りにしていたので、リアナさんが驚いたみたいです。


「えっ? 別に何も怒っていませんよ。骨を割るのに力が必要だっただけです」


明らかにホッとした顔をした二人ですが、私の料理が始まってからずっと、私がしていることが良くわからずに戸惑っているのがよくわかります。


鶏ガラスープの下準備が終わったので、さっそくスープ作りに入ります。長ネギを適当な長さに切り分け、鶏ガラと一緒に鍋に入れ、水を注いで沸騰するまで強火で煮立てていきます。長ネギのほかにショウガを入れるとよいのですが、ショウガがないので今回は無しです。


さて、この世界のキッチンの火力はカマドです。最初の着火だけは魔法具を使用しますが、あとは薪と炭で火力を調整します。カマドの火加減については、私よりもメイドの二人のほうが熟練なのでお任せです。


鍋が沸騰したら火を弱火にし、丹念にアク取りをしていきます。予想通り「アクってなんですか?」と聞かれたので、簡単に二人にレクチャーし、じっくりと煮込むのを番してもらいました。


2時間ほど煮込んで、ザルなどで鶏ガラと長ネギをこせば鶏ガラスープの出来上がりとなります。

その後、スープにキャベツやジャガイモ、鳥の胸肉を入れて煮込んでボリュームを出したら完成の予定です。


◇◇◇◇◇◇


次からは、簡単にできるものをどんどん料理していこうと思います。

パタパタ鳥のモモ肉と皮を一口大に切り、フライパンでよく焼きます。「焼き鳥」にしたかったのですが、竹串がないので、とりあえずバラバラで焼くだけに……そしてあっという間に完成です!

この料理に関しては、メイドの二人も安心して眺めていてくれましたが、「皮」を食べる習慣は無いようなので、その点に関しては驚いていました。焼くときに塩は振りかけず、食べるときに塩か唐辛子を好みでつけて食べてもらおうと思っています。


次の一品は……パタパタ鳥の卵をボウルに割り入れて、砂糖多めと、塩は一つまみ入れます。そう「玉子焼き」を作るのです。優斗が大好きなので、これは気合が入ります!……が、後ろの二人がザワザワと動揺しています。


「カレン……今、見ました? 薬をあんなにたくさん入れましたよ!」

「リアナ……あれ、私達も食べないといけませんか?」


(はいはい。別に食べなくても大丈夫ですよ。ただ、言っておきますけど、薬中毒にするつもりは全くありませんから!)


心の中で、二人の会話に少し「ムッ!」としながら、私は料理を続けます。


「よし! 玉子焼きはバッチリ!!」


上手に出来たので、今から優斗の喜ぶ顔が浮かんでテンションが上がります。


最後は、油を多めに鍋に入れて温めます。

使用する食材はジャガイモ……「フライドポテト」の作成です。こちらではジャガイモは「ゴロゴロ」と呼ぶのだとか……。本当にこちらの世界の人はネーミングセンスが素晴らしいです。


さて、私がゴロゴロの皮をナイフで剥いていると、


「ミユ様! すごいですね。もしかして元の世界では料理人だったとか?」


(……いえ、女子高生です。)


「こちらでは、そのように食材の皮を剥くことがないので、驚きです!」


リアナさんもカレンさんも、本当に感心した表情で私の手元を見ている…。こちらの人は本当に食材を「洗う」「切る」「焼く」しか行わないらしいです。

そういえば、マリクさんのところでもサラダと焼いた物しか出てこなかったように思います。


短冊切りにしたゴロゴロを油で揚げて、塩を振りかけます。


「えぇっ!」

「ミユ様! く、薬ですよ!!」


また驚かれましたが、今回もスルーです。……さすがに疲れました。


あっ! そうです。二人に私達の世界の料理を覚えてもらわないと、ずっと私が料理当番になってしまう可能性が大きいことに気が付きました。

私としては、優斗に料理以外でも良いところを見せる機会を増やしたいです。


「リアナさん、カレンさん。

 優斗は、ずっと私の料理を作る姿を見て育っているのです」


「なるほど……ミユ様がいつもユウト様に料理を作っていたのですね……」

「ミユ様のナイフ捌きは、真似できませんね……凄かったです」


私の言ったことに『含み』があることに気が付かなかったのか、普通に感想を言われてしまいました。

仕方なく、今度は二人にわかりやすく言ってみることにします。


「えっと……。私が言いたいのは、二人が私以上に料理が出来る姿を見せないと、

 メイドとして優斗にどう見られるのかなぁ……ということなのだけど…」


「!!!!!!!!!!!!!!!!」

「!!!!!!!!!!!!!!!!」


二人の顔が一気に青ざめました!

こちらの世界では優秀なメイドである二人が、優斗にとって姉である私よりも家事ができないというレッテルを貼られてしまう可能性に気がついたからです。


「カ、カレン! ど、どうしましょう?」

「リアナ! 落ち着いて、とにかく落ち着きましょう!!」


こうして、すべての料理が完成した後、二人とも私に「そちらの世界の料理を教えてください」と、お願いしにきたので快く引き受けました。


(うんうん。二人とも優斗のために料理を頑張ってね!

 私より上手くならなくていいから……)


と、メイド二人の向上心に満足した私は、出来上がった料理を食堂兼リビングへと運んだのでした。


ミユの料理に驚きの連続のメイドコンビ。

食べるのが怖いです…

次回は、皆で作った料理をいただきます。

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