第七十四話
案外早いが、二港と首都を爆撃されたらそうなるかと思いますが……。
―――1943年四月二十五日、シドニー沖合い約三百五十キロ付近―――
そこの地点には小沢治三郎中将の第一機動艦隊が航行していた。
「久しぶりの戦闘か………」
輸送作戦から戻って来た赤城に小沢長官は将旗を掲げている。
「パイロット達もウズウズとしているでしょう」
小沢長官の呟いた言葉に草鹿参謀長が答える。
「攻撃隊発艦準備完了ッ!!」
その時、伝令が艦橋に駆け込んできた。
「よし、シドニー、キャンベラ攻撃隊は発艦せよッ!!」
赤城のマストに『発艦せよ』の旗が掲げられて、飛行甲板に待機していた攻撃隊がプロペラを回して爆弾を腹に抱えて発艦していく。
ブオオォォォォォーーンッ!!
零戦隊、彗星隊が発艦して、最後に六十キロ爆弾を腹に抱えた天山隊が発艦していく。
シドニー攻撃は空母赤城、加賀、炎龍が担当し、キャンベラ攻撃は飛龍、蒼龍、紅鶴、銀鶴が担当する。
シドニー攻撃隊は零戦七二機、彗星七二機、天山七二機であり、キャンベラ攻撃隊も同様であった。
「諸君の奮闘に期待する」
小沢長官は遠ざかりつつある攻撃隊を敬礼で見送った。
シドニー攻撃隊総隊長は淵田中佐だった。
淵田中佐はこの作戦が終了次第、聯合艦隊航空参謀として就任する予定なため最後の前線作戦になるのであった。
「総隊長、最後の花道は派手にしましょうッ!!」
「ハッハッハ、そうやな松崎ッ!!」
操縦桿を握る松崎大尉の言葉に淵田中佐が笑った。
その時、攻撃隊の前方を飛行していた偵察機の彩雲の翼がバンクした。
『電探に反応ッ!!前方から敵戦闘機多数接近ッ!!』
彩雲には小型化した対空電探が搭載されていた。
これに飛び上がった敵戦闘機を捉えたのだ。
「板谷の制空隊は敵戦闘機に当たるんやッ!!攻撃隊は速度上げるでッ!!」
『制空隊了解ッ!!総隊長を出迎えた敵戦闘機を歓迎しにいきますッ!!制空隊は全機俺に続けッ!!』
制空隊を率いる板谷少佐の零戦がバンクをして燃料タンクを落とした。
「総隊長、敵戦闘機ですッ!!二時上方ですッ!!」
松崎大尉が叫んだ。
淵田中佐が二時上方を見ると、P-40等の戦闘機が急降下していた。
「全機散開やッ!!水野は機銃構えとけッ!!」
「了解ッ!!」
水野飛曹長が十二.七ミリ旋回機銃を構える。
ダダダダダダダダダダッ!!
ダダダダダダダダダダッ!!
急降下してくるP-40が機銃を乱射する。
この乱射で彗星一機、天山三機が火を噴いた。
しかし、パイロット等は落下傘で脱出をした。
「叩き落としてやれェッ!!」
淵田中佐はドッグファイトに移った零戦隊を応援する。
「総隊長ッ!!シドニーを視認しましたッ!!」
松崎大尉が叫んだ。
「よっしゃ、全機爆撃態勢に入るんやッ!!」
ドンドンドンドンドンッ!!
シドニー上空は攻撃隊の侵入を防ぐ対空砲火が撃ち上げられていた。
「彗星隊は港を攻撃やッ!!天山隊は飛行場を狙うんやッ!!」
彗星隊はダイブブレーキを開いて一斉に急降下爆撃を敢行した。
ヒュウゥゥゥーーンッ!!
ヒュウゥゥゥーーンッ!!
彗星隊は次々と五百キロ爆弾を投下して離脱していく。
狙われたのは駆逐艦や港の倉庫だった。
ズガアァァァーーンッ!!
ズガアァァァーーンッ!!
港の建物や艦艇は破壊されて炎上する。
そして天山隊は敵戦闘機が飛び立った飛行場を爆撃していた。
「撃ェッ!!」
中隊ごとに飛行している天山は、腹に抱えた六十キロ爆弾を投下していく。
ズガアァァァーーンッ!!
ズガアァァァーーンッ!!
六十キロ爆弾は滑走路を破壊し、対空火器を吹き飛ばして、破片が対空火器員や整備員を襲って薙ぎ倒していく。
攻撃隊は爆撃を終えると編隊を組んで帰投した。
オーストラリアの首都であるキャンベラも爆撃した。
オーストラリア首相のジョン・カーティンは機とシドニーが爆撃された事に驚いた。
この時に日本はオーストラリアに降伏を勧告してきたが、この時は黙殺された。
しかし、翌日にはメルボルンも爆撃されてしまいカーティンは遂に日本に対して降伏を決意したのであった。
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