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悪の勇者の異世界征服  作者: 東乃西瓜
二章  邪悪に魅せられた者たち
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恋愛脳の策略

「早速だがナーガ・ディオネ、お前の適正を教えて欲しい。ギルドで依頼を受けた際の戦闘隊形は今のうちから考えときたいんでな」


「はい、私の適正は赤魔法と緑魔法です。対人経験はないですが魔物相手なら田舎でよくワイルドボアを狩ってました。緑魔法で毒を生成して風に乗せて使ったり生成した水に混ぜて飲むのを待ったりですかね」


「ほう!その年で毒を生成するとは大した物であるな!是非見てみたいものだ!どうだディオネよ?僕と一戦付き合う気はないか?」


「………え!?……ネザー・アルメリア第二王子!?何故こんな男と!?」


「こんな男?」


「ふむ、まあ学園で色々とあってな。だがディオネよ、この男は面白い。確かに性格は曲がりに捻じ曲がっておるし、肥溜で煮込んだ生ゴミのような人間ではあるがバンディットといると退屈はせぬ」


「おい」


「……はぁ……フィーナさんといいネザー様といい強者に媚びるのがお上手な方なのですかね…」


「む、僕に様をつける必要はないぞディオネ、ネザーでよい」


「……恐れ多いですよ」


「見たかバンディットよ?これが僕に対する初対面の人間の反応だ、如何に貴様が妙であったか分かったであろう」


 最近打ち解けてきたせいかネザーからも稀に俺の扱いが雑になってきている。

 距離が近くなったという意味では喜ぶべきなのだろうか。


「まあいい、それより毒を生成するのってそんな大した事なのか?確かにあまり見ない緑魔法だったが」


「あまり見ないのは当然だ、毒を生成するとは言え毒とは炎や水のようにただそれでいいわけではない。例えば麻痺毒だったり出血毒だったり神経毒だったり致死毒だったりな。毒を魔法で生成するには思っている以上に知識が必要なのだ」


「はーなるほどな。やるじゃねえかナーガ」


「……どうも」


 ……さっきからメアリーが静かだな。

 せっかく女が増えて喜ぶと思っていたんだが。


「おいメアリー、なんか喋ったらどうだ」


「あ、はぁい。ナーガさんはフィーナ様の事が好きなのでしょうか?」


「……え、フィーナさんの事……?」


 ……なにをやってるんだコイツは。

 ナーガが口を開けてぽかんとしている。

 あのネザーですら目を見開いて「正気か?」というような顔である。


「メアリー、ちょっとこっち来い」


 俺はメアリーの襟首を掴んで部屋から出た。



「お前何やってんだ?頭が沸いたのか?作戦会議だって言ったよな?なんでいきなり恋バナ始めようとしてんだ?せめて脳内に留めておけよ淫乱僧侶」


「あ、違うんですよ。あの子変ですよ」


「は?何がだよ?」


「あの子さっきフィーナ様の事フィーナさんって呼んでました。入学式の時はフィーナ様って呼んでいたはずです。

 ネザー様の事はネザー様って呼んでるのにですよ?」


「……気が変わったんだろ?」


「いえ、私にはわかります。あの子多分七つの大罪の1人です」



 ナーガが七つの大罪の1人?

 あの感じを見ているとそうは思えない。


「……本気で言ってんのか?」


「もちろんです、確かめる手段がないのでちょっと雑になってしまったのは認めますけど」


「……どういう事だ?」


「あの子のあの感じ、似てるんですよ。フィーナ様が勇者と信じて慕っていた相手が本当の勇者でなかったって言われた時の私に。だから彼女の好意が変わってないか確かめたかったんですよ」



 もしそれが本当だとすれば、ナーガが七つの大罪である証拠を掴まなければならない。

 そしてナーガが仕えるべき相手が俺であると理解させなければならない。



 まだナーガの返事は聞いていない。

 もし気持ちが心変わりしているのならナーガが七つの大罪である可能性はかなり大きい。


 しかしそれをどうやって証明する?

 なんとか証明する手段を確保しなければ。


「どうするか……」


「ふふ、私にお任せください。既に先手は打ってあります」


「先手?」


 ーーーガチャ


 俺がそう言った瞬間、扉が開いた。


「……いつまで待たせるんですか、そんな大した話ではないでしょう」


「……あ、あぁ。今戻る」



 そう言って2人で戻ろうとする。

 ナーガは俺の服を掴んで部屋に戻ろうとする。

 するとメアリーがボソッと呟いた。




「ようこそこっち側へ。嫉妬の毒蛇 ナーガ・ディオネ」



 それを聞いたナーガは足を止めた。


「メアリー・ロッドさん……それはなんの話ですか?」


「ふふ、とぼけなくてもいいんですよ?誰かに言われたのでしょう?貴方が敬愛すべきはフィーナ様でないと」


「………どこでそれを?」


「ほら、私の言った通りでしょうナナシさん。部屋の中で私とナナシさんの関係をネザー様に聞いたんですよね?それで私たちが2人で外にいるのが耐えられなくなったんでしょう?」



 メアリーがすらすらとナーガを説き伏せていく。

 なるほど、もう慕うべきが俺だと誰かから聞いていたのか。

 それでわざわざ俺のクラス側に1人で来た。


 そしてメアリーはナーガが嫉妬の大罪を司る者だと信じてわざとメアリーと俺が2人に、ナーガとネザーが2人になるように仕向けたのだ。



 メアリーの成長に涙を禁じ得ないな。

 また淫乱僧侶がイカれた発言をした程度に思っていた。



「………嫉妬の毒蛇 ナーガ・ディオネ。確かに夢でそんなことを言われました。でも勘違いしないでくださいナナシ君、私は貴方の下につくつもりはありません」

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