嫉妬の毒蛇
「……どういう事だナーガ」
「どうもこうもありません。私は確かに入学式の日の夜、夢で神を名乗る者から信じるべきはフィーナ・アレクサンドではないと言われました。信じるべきは悪しき者だと、嫉妬を力に君は悪に仕えるのだと」
メアリーから聞いていた話と同じようなものだった。
となるとやはりメアリーの言う事は真実だったのだろう。
「……私は神など信じていません。善いことより悪いことをしたいとも思いません。確かに以前ほどフィーナさんに対する気持ちが薄れているのは認めますが、それがナナシくんを慕う理由にはなりません」
「ならなんでこっちの側にきたんだ?黙ってフィーナのギルドパーティーに行けばよかったろ?」
「……私なりに貴方を見定めようかと思いまして。なので私を味方だとは思わないでくださいねナナシくん」
そういうとナーガは部屋に戻ることなく廊下を歩き去っていった。
「あら、振られちゃいましたね」
「まぁどいつもこいつもお前みたいに神様の言う事は絶対ってわけじゃねえだろうしな」
「それもそうですね、でもどうするんです?あの子結構頑固みたいですけど」
「いや、そう難しくはないと思うぞロッドよ」
急に現れたネザーに身体をびくっと驚かせながらメアリーが驚く。
メアリーはあたふたしながらネザーに言い訳しようとしている。
「ネザー様……!?これには色々事情がありましてですね……」
「うむ、そうだろうな。ロッドが勇者を裏切ってバンディットについているのだから何かはあるのだろうとは思っていた。だがしかし僕には関係のない事だ。バンディットの味方になる事を決めたのは僕だ」
「ま、神様に言われたってだけの話だ。俺が七つの大罪を従えて世界を救うんだとよ」
「くはは!それはそれで面白い話だなバンディット、だが僕の知る限り貴様はそのような殊勝な人間ではあるまい」
「そりゃそうだ、世界が俺に救われるなら勝手に救われてくれりゃいい。俺は俺のやりたいようにやる」
「ふむ、それでこそ貴様に味方した甲斐があるというものだ」
しかしナーガのやつ、作戦会議だって言ってんのに言う事言って満足して帰りやがった。
しかも悪い方とは困ったものだ。
「まぁ最悪俺の側につかねえなら行く先はディーンの奴と変わらねえ。死ぬような目に遭ってもらうだけさ」
「……またディーン様のような事をする気ですか?」
「同じにはならねえさ、ナーガは女だからな。その辺はお前の方が詳しいだろ?」
「……それは……そういう意味ですよね?」
「そういう意味さ、とりあえずナーガはメアリーと一緒に後衛な。俺とネザーが2人で前衛」
「ふむ、僕が前衛ということだけ聞ければ十分であるな。では僕は先に帰らせてもらうぞ、ギルドの件を父上に説明せねばならないのでな」
そういうとネザーも廊下を颯爽と走り去っていく。
学園内ではルールを守っているのは俺の方みたいだな。
「んじゃメアリー、帰るぜ」
「……はぁい」
いつもより多い沈黙にまだやはり悪に抵抗があるのが見て取れる。
ナーガが女だということもあってディーンの時よりも悩んでいるのだろう。
だがここでナーガを救う考えなど出すならばそれこそ俺はメアリーを信用することが出来ない。
出来るならギルドの方に向かい学園から、強いて言えばフィーナ達からメアリーが離れているうちに悪に慣れて貰わなければ。
正義と悪で揺れ動くメアリーを悪に傾かせなければならない。
そしてそれは俺もそうなのだろう。
フィーナを殺す為にまず殺さなければいけない。
俺の心を。
正義の勇者を殺す為、悪の勇者は心を研ぐ。




