1.夜行飛行
今回、悪の大要塞への出張はありません。
あの工場の商品は落ち着きました。よって、訪問する必要は無し!
(実はこの頃、キューヨー製品にタチの悪い不良が発生している事に気づいてなかった)
今回の予定は3泊4日。
1日目は、遅い時間に飛行機で移動。上海泊。
2日目は、桐郷へ移動。新しい工場で商談。ズーチーへ移動。ズーチー泊。
3日目は、ズーチーにて紹介された工場を見学。上海へ移動。上海泊。
4日目は、移動日。帰国。
といったスケジュール。
全部、招待。しかも訪問先は2軒だけのキューヨー無し。
今回こそ、ラクショーっしょ?
……不安点は1つだけ。
3日目。ズーチーから高速列車に乗って上海へ向かうのですが、列車に乗ってから翌日、飛行機に乗るまでが単独行動なのである。
しかし、上海のホテルは初日で泊まるホテルと同じ。虹橋駅からホテルまでは歩いて10分。ホテル、即ち虹橋駅から東浦空港までの道のりは高速バスで1本。経験してます。
……なんとかなるでしょう!
今回はスマートに行って帰れそう。
申し訳ありませんが、第3章は短いお話となりそうです。
ホント、ごめんねこ。
で、初日。
飛行機は最終便。嬉し恥ずかし夜の出発。
前回、同行してくれたワンさんが、
「出発の1時間前空港着で十分だよ!」
などと、ナイスアドバイスをくれたので、きっちり1時間前にKIXへ到着。
「某国民営空港19時30分発に搭乗予定のアズマダさん――」
空港中にアナウンスされてますがな!
1時間まえの到着じゃ遅いんだってさ!
あと10分遅れてたら、置いてきぼりにするところだってよ!
これでトラブルメーカーはワンさん説決定だな!
飛行機は、何事も無かったかのように、時刻通り空港を飛び立つのであった。
前回の出張で、高速バスの目的地であった虹橋駅のすぐ側。そこに第一泊目のホテルが突っ立っている。
空港へは、お迎えが来ています。
某大手商社の正規社員のジョさん。某国出身である。
飛行機は、無事、東浦空港へ着陸。現地時間20時後半。
手続きや何かで空港を出るのは1時間後の23時前。
やたら警官が多いし、警備が厳しい。なんか会議でもあるのかな?
この国じゃ警察を公安って呼ぶんだよね?
公安の腰に下がっている筒、あれなに? 自分が知ってるデザインで、一番近いのはショットガンだよ。口径がビー玉サイズ?
ああ、知ってる知ってる。これってエアガンだ。
……よし!
てな訳で、あっさりジョさんと合流。タクシーでホテルへ向かう。
前回、トラブルを起こした高速バスと同じ道順(逆の)だから慣れたもの。
1時間も経たず、タクシーの窓から目的のホテルが見えてきた。
そこの分岐を右に入って……、え? 通行止め?
「おかしいな。お迎えに上がる前にここ通ったんですけど、閉鎖されてませんでしたよ。ここ、一本道なんで、封鎖されたらホテルへ入れません」
それは困った。
ジョさんが、なにやらタクシーの運ちゃんと話をしている。
「見たところ、工事ってわけじゃなさそうだし、無理矢理通っちゃえば?」
私は強攻策を主張する!
日本じゃ、工事中って看板だけで、実は何ともないぜってパターンが多いしね。
「公安の車が道を封鎖しています」
それはまずい。
この国の公安は怖い。
9課なんかあった日には目も当てられない。
なんも後ろ暗いところ無いのに、こそこそしてしまうのは何故?
つーか……。
「なんで、この時間に封鎖?」
「理由は、公安にしか解りません」
よし!
高速道路上で停車しているわけにもいかないので、とにかく走り出す。
ホテルが入った施設(駅と空港とホテル)の周囲を何回か回ったけれど、どこにも車を着けられる場所が無い。
仕方ないんで地下道へ周り、道幅の広いところでタクシーから降りる事にした。
何はなくとも、施設に向かって走る。壁伝いに歩いてたら、見覚えのある高速バスの発車場が!
ここだ! ここしかない!
二人してドアをドンドン!
何事か? と係員が顔を出してきた。
そこでジョさんが、状況を説明。
チッ! みたいな顔されたけど、なんとか中へ入れたぜ!
入れたのは駅側の空港施設。
23時を軽く回ってるけど、何とかなった!
人気もなく真っ暗な空港内を横切り、何とかホテルへ到着。
さあ、チェックイン。
予約が取れてない! なんてミスはない。
代わりに、スゲー高い料金の部屋を取っていたというミス発覚!
あ、あれ? おかしいな。
短時間で2度のトラブル。
なんで?
今回、トラブルメーカーのワンさんと行動してませんよ?
まさかジョさんまでトラブル体質なのか!?
結局のところ、ホテル側の登録ミス。
本来の部屋が埋まってたので、お高い部屋を安いお値段で段取りしてもらう事に。
やったね! ラッキー!
いやいやいや、ラッキーじゃなくて、プラマイ零じゃん!
そんなこんなで、1日目は強制終了!




