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第31話 ヒロインはアホチャラ男と接近遭遇するハメに陥る

最終話まで書き終えたことに伴い、章設定を行いました。

現行の物語を本編とし、最終話以降におまけ・後日談を付け加えていく予定です。

完結後も引き続きご愛読のほど、宜しくお願い致します。

攻略対象キャラ改め、鬼畜戦隊キチクナンジャーどもには絶対に近づかない。向こうから近寄ってきたら逃げる。基本は、変質者への対応である。今後の学園生活を送るにあたり、わたしはそう心に決めた。


しかし、その行動基準はいきなり齟齬(そご)を来した。


カールハインツ王太子改めバカ太子、クロード王子改めイキリ王子、レオナルド・フォン・ジュークス公子改め腐れ脳筋はまだ接点がないから敬遠もしやすい。問題は、残りの2人、マルクス・フォン・バインツ公子改め糞メガネと、オスカー・フォン・ウィムレット公子改めアホチャラ男だ。


そのうち、アホチャラ男がわたしに接近してきやがったのである。


◇◆◇


入学式から1週間が経ち、本格的な授業が始まった日のお昼の長休み時間、アレンさんと同様に無事クラス内の置物的立場を獲得したわたしは、教室内最後尾、廊下側の席に座って自学を進めていた。ちなみに、同様の立場なアレンさんはわたしの反対側、窓側の席に座して窓外に視線を送っている。入学式の日の反省から、公の場ではあまりベタベタと引っ付かないようにしたのだ。


自学の内容は、授業の内容ではない。S級治癒魔法の発動機序の確立方法だ。わたしの魔力は、理論上はともかく実質的にはA級治癒魔法の高速発動によって枯渇することはあり得ない程度には強大になってしまっている。魔力Aトリプルプラスは伊達ではない。


無論、まだまだレオンハルト・フォン・バインツという最高峰には未だ遠く届かない。いずれはまた、魔力の増強のために何らかの方策を取る必要があるが、差し当たってはS級治癒魔法の発動機序の確立が急務だ。


手許のノートに思いつく限りの手法を書き連ね、その手法のメリット・デメリットをその下に書き連ねていく。…ダメだ。どうしても2つのA級治癒魔法を、同時にかつ独立させて高速発動させることができない。どうしても2つのA級治癒魔法のオーラが混じり合ってしまい、1つのA級治癒魔法になってしまう。これがB級以下だったら、2つ同時に、かつ独立させて高速発動することができるんだけどなぁ…


「むー…」と唸って、わたしは思いついた手法の上に大きくバッテンを書き記し、『ダメ』と書き足した。


わたしが思いついたのは、2つのA級治癒魔法を同時に、かつ独立させて高速発動し、それを融合させることによってより強い治癒力を持つ治癒魔法、すなわちS級治癒魔法を発動させるというものであった。


その発想を思いついたのは、全くの偶然であった。治癒魔法は、治癒対象となる人や動物、あるいは魔物に接触しなければ発動しない。そこで、一度戯れにE級治癒魔法を治癒対象に接触していない状態で2つ同時にかつ独立させて発動させ、それを融合させると、E級治癒魔法を2回かけるよりも遥かに強力な治癒力を持つ治癒魔法が発動されたのだ。その治癒能力は、実にC級治癒魔法のそれに匹敵した。


しかしながら、それを発動するのにB級治癒魔法の通常発動に匹敵する魔力を消費してしまうため、コスパは非常に悪い。おまけに、E級治癒魔法を2つ独立に発動させた上でそれらを融合する必要があるため、時間もかかる。こんな手法で治癒力を増強させるくらいなら、最初からC級治癒魔法を高速発動したほうがマシだ。


だが、現実問題としてA級治癒魔法を凌ぐ治癒魔法はS級治癒魔法しかなく、S級治癒魔法には決まった発動機序がない以上、わたしはA級治癒魔法を2つ以上融合させて治癒力を高めるくらいしか思いつかなかった。


「結局は、A級の治癒力のオーラが大きすぎるのが問題なのよ…B級くらいだったら周囲に強引に魔力障壁を作って閉じ込めることができるけど…A級だと治癒力のオーラが大きすぎてそれも難しいし…」


ぶつぶつと言の葉を繋ぎながら手元のノートに『魔力障壁』と書き、それをぐるぐると何重にも丸で囲った。魔力障壁とは、文字通り魔法による攻撃を防ぐための壁である。魔力障壁は魔法のイロハのイであり、本来であれば魔法に適性のないはずの剣士や騎士ですら展開することができる。


無論、これも展開した者の魔力が強ければ強いほど強大かつ堅牢なものとなり、S級の魔力を持つ者の魔力障壁は殆どの魔法攻撃を遮断することができる。ゲーム中では、この魔力障壁の強さが魔法防御力としてステータスに示されていた。


なお、ゲーム中に登場する主要キャラの魔法防御力の強さを以下に不等号で示させて頂く。以下を見れば、ラスボスである暗黒騎士アナスタシアの魔力の、規格外の強さがお判り頂けるだろう。


暗黒騎士アナスタシア>>>>>悪役令嬢アナスタシア>>バカ太子≧糞メガネ≧エイミー>>アホチャラ男>>> (時空の壁) >>>イキリ王子≧腐れ脳筋


話がずれたが、魔力障壁は自由な形状に展開することもでき、その中に魔法を封じ込めることもできる。わたしが思いついたのは、魔力障壁で作った球の中にA級治癒魔法の高速発動で作った治癒力のオーラを閉じ込め、それをもう一つ作ってその2つをぶつけ合わせ、2つのオーラを融合させる、といった発動機序だ。


だが、それが上手くいかないのだ。A級治癒魔法の治癒力のオーラが大きすぎ、上手く魔力障壁の中に閉じ込められないのだ。無理に閉じ込めようとすると、A級治癒魔法に込められた魔力が強すぎて魔力障壁が割れてしまう。魔力障壁の壁を思いっきり薄くすれば閉じ込められないでもないが、それでは閉じ込めた魔力障壁が少しの衝撃でも割れてしまうため非常に不安定で、それでは安定して使えない。


正直袋小路に入ってしまったような気分で、わたしは「う~…」と呻いて頭を掻きむしった。お付きのメイドさんが整えてくれた髪の毛が台無しだ。


王立高等学園では生徒は例外なく寮生活を送ることになるが、貴族階級出身の生徒や平民階級出身であっても裕福な者はメイドを連れてくることができる。そのため、寮には生徒だけでなくメイドさんも多くいるのだ。男子生徒の中には、身の周りの世話をしてもらうだけでなく『そーゆーこと』のためにメイドさんを連れてくる者もいるという。…何考えとんねん…


ちなみに、わたしのお付きのメイドさんは、かつて入学考査に当たりわたしに礼儀作法実技をみっちりと叩き込んでくれた、かの『〇ッテ〇マイ〇ーさん』である。


それはともかく、わたしが頭を掻きむしっているところに声がかかったのである。


「エイミー・フォン・ブレイエス嬢、精が出るね、自学かい?」


声がした先に眼鏡越しの視線を送ると…件のアホチャラ男がいやがったのである。


(…げえぇッ!アホチャラ男ッ!)


まるで後の美髯公に待ち伏せを食らった大漢国丞相 (その頃はまだ魏公にはなってなかったよね?) の如き悲鳴を心中に上げたわたしの鼓膜には、本来鳴っていなかった筈の銅鑼の音が轟々と鳴り響いていた。


◇◆◇


わたしは慌てて立ち上がり、相変わらず下手っぴなカーテシーの礼を取った。周囲のご令嬢様方から、「…まぁ、何となっていない淑女の礼でしょう…」「お里が知れましてよ…」などと、嘲笑のクスクス笑いが聞こえる。…うるせぇな、わたしにとってカーテシーは氷魔法と同じくらいの “逆加護” を授かってるんだよ。


「ウィムレット公子様には、卑賎なる新興貴族の身に対し親しくお声がけを頂き、恐悦至極に存じます。なれど、貴族とは名ばかりの卑しき身に対し、名門貴族の嫡男に()らせられる貴顕の御身が親しくお声をおかけあるは御身の穢れともなりましょう。どうか、わたくしめのことはご放念下さりませ」


翻訳 : うるせぇわたしに関わるな。わたしもお前たちに関わらない。


そのわたしの言葉に、アホチャラ男は僅かに驚愕の表情を表し、周囲のご令嬢様方は批判的な言辞にざわめいた。


「…卑しき新興貴族、しかも一時は非嫡出子であった身で、ウィムレット公子様にお声がけを頂いたのにそれをつれなく拒絶するとは、何様気取りなのやら…」

「…ウィムレット公子様にお声がけを頂いたのに、何と身の程知らずな…」


…うるせぇな畜生が!どうせお前ら、わたしがこのアホチャラ男のナンパにホイホイ付いていったら、それはそれでボロクソにディスりやがるんだろうが!


激おこブチ切れ丸カムチャッカ半島核融合寸前のわたしに熱核反応を齎したのは、そのアホチャラ男本人の発言であった。


「お嬢様方、エイミー・フォン・ブレイエス嬢は、これまで貴顕の身から声をかけられたことがなかったのだ。どうか、彼女の所業は僕に免じて大目に見て頂きたい。…エイミー嬢、あなたはどうやら、勉学の面で悩みがあるとお見受けした。僕でよければ相談に乗るから、遠慮なく言って欲しい」


ぶちぃっ!!頭の奥で、何かが切れる音がした。わたしに関わるなっつってんだろがこのボケが!ケツの穴の前立腺に電気流して賃古キャンていわすぞダボが!!


「…ウィムレット公子様におかれましては、卑賎の身に対し幾重(いくえ)にも親しくお声がけを頂き、光栄至極にございますッ!不肖なれどエイミー・フォン・ブレイエス、S級治癒魔法の発動機序の確立を目指し、自学致しおりましたッ!」


S級治癒魔法の発動機序の確立。その発言に、周囲が凍り付いた。

人物の呼称については、Wikipediaで調べたので多分合ってると思います。


ブックマークといいね評価、また星の評価を下さった皆様には、

本当にありがたく、心よりお礼申し上げます。


厚かましいお願いではありますが、感想やレビューも

頂きたく、心よりお願い申し上げます。

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