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第130話 ヒロインたちは取り巻き令嬢たちに事情を説明する

最終話まで書き終えたことに伴い、章設定を行いました。

現行の物語を本編とし、最終話以降におまけ・後日談を付け加えていく予定です。

完結後も引き続きご愛読のほど、宜しくお願い致します。

学園内の談話室で、アナとアレンさん、それにわたしはマーガレットとイザベラに何があったかを説明していた。そこには、オスカーもいる。


最初は、クズレンジャーの一員としてアナをいじめていた一人であるオスカーがいることに二人は難色を示していたが、既に彼が謝罪し、そしてその謝罪をアナが受け入れたことを彼女自身から説明を受けると、不承不承ながらも彼がこの場に席を占めることを諾ってくれた。


アレンさんが件のヴォイスレコーダーを取り出し、記憶媒体の魔石を取り出すと同時にマーガレットとイザベラに対して釘を刺す。


「マーガレット様、イザベラ様、この内容は本当に、貴族令嬢の方々が聞くにはおぞましすぎるものです。もしも耐えられないようでしたら、口頭での説明に留めておきますが如何なさいますか?」


…いやもうほんと、あの内容は碌でもねぇ代物だったからなぁ…オスカーを治癒して、心身ともに疲弊困憊していたわたしがゲロ()く程度には。


アレンさんの説明を受けたマーガレットが、口の端を引き攣らせながら呻いた。


「そ…そんなに…酷い内容なの…?」

「あぁ。それを聞いていて、エイミーが嘔吐したくらいにはな」

「あの時、わたしはオスカーさんを治癒した直後でヘロヘロに疲れてたってのもあるんですけどね。アレンさんが仰る通り、本ッ当におぞましい代物です」


マーガレットの、呻き声のような言葉はなかなか治らない。


「じゃ…じゃぁ、私はやめておこうかしら」

「で、でも、どれくらい酷いのかちょっと興味ありますね」


少し吃りながらそう言ったのはイザベラ。…好奇心は、猫をも殺しますよ?


「危険な好奇心は引っ込めておいた方がいい。私も、嘔気を催した」


アナの、長い脚を組み、極上の脚線美を惜しげもなくサイハイソックス越しに晒しながら発したその言葉に…だが、二人の好奇心は屈しなかった。…本ッ当におぞましい代物なんですよ、後悔しても知りませんからね?


「…では、最悪の事態に備えてバケツを用意しておきますね」


オスカーがそう言って、備品室に向かったため『視聴会』は少し遅れた。


◇◆◇


「ほ…本当に…おぞましい代物だったわね…!…これが王太子や名門貴族の嫡男の言葉なの!?…ならず者と、全然変わらないじゃない!」


最後にうぇっ、とえずきながらマーガレットが怒りの言葉を上げる。無理もない、これは三クズトリオどもの悪意と劣情の、死んでも飲みたくないカクテルだ。…あれ?三クズトリオって、わたしここで初めて言ったよね?過去に言ったような記憶があるような気がするんだけど…


その横で、イザベラが何やらピンと来ないようで首を捻っている。


「うーん…確かに最低だと思うし、軽蔑もするんですけど…そこまでおぞましいかなぁ?アナ様やエイミー嬢、それにマーガレットが嘔気を催すほどに…?」


その言葉に、その場にいた全員が驚きの視線をイザベラに向けた。アレンさんやオスカーも例外ではない。…正直羨ましい。その耐性、わたしに分けて下さい。


「そ、そうなの…それはそれと、ウィムレット公子…っと、オスカー卿がこれであの『腐れクズ脳筋』にボコボコに殴られて、それをエイミーが治癒したのね?」

「その通りです。エイミー様が治癒して下さらなかったら、私は今この場にいられなかった筈です。…きっと、この世にもいなかったでしょうね」


そう、その通り。わたしが治癒しなかったら、今頃彼も『急病死』していた筈だ。…恩に着せるつもりは更々ないけどね。


「それで、これまでの内容を両陛下、ウィムレット侯爵閣下、バインツ伯爵閣下、ジュークス子爵様がお聞きになった時の様子がこちらです」


そう言ってアレンさんが魔石を外し、別な魔石をセットした。


◇◆◇


その内容を聞いていたマーガレットの顔が少しずつ崩れ、最後には爽快そうな、しかし黒い感情に彩られた笑い声すら上げていた。


「ぷっ…あははははは!ざまぁないわね!アナ様やエイミーに酷いことをしようと相談していたところを全部アレン君に録音されて、それをお父様方の前で暴露されて!最後は首が物理的に飛んで!自業自得よ、当然の報いよ!!」

「でも…同情はしないけど、かなり残酷な公開処刑ですよね…」


イザベラの言葉に、わたしたちは顔を見合わせた。それはそうだけど…


『…誰だ』『廃太子殿下、後顧の憂いを絶たせて頂きます』


あ、いけねぇいけねぇ。あの、神話級ド変態廃太子の、気持ち悪すぎる性癖暴露を、マーガレットやイザベラに聞かせる訳にはいかない。わたしが悪いわけじゃないけど、何か気恥ずかしい。そう思ってヴォイスレコーダーに手を伸ばしたら。


貴公子然とした端正な顔に悪役令息の悪い笑みを浮かべ、アレンさんがヴォイスレコーダーをわたしから遠ざけた。なしてよ?


「アレンさん、もういいでしょ?止めましょうよ」

「いや、最期はあの神話級ド変態廃太子も、ちゃんと反省して改心したんです。それを、マーガレット様やイザベラ様に聞かせてあげましょうよ」

「え?あいつ、最期にちゃんと反省して改心したの?ちょっと信じられないわね。アレン君、最後まで聞かせてくれる?」


それに答えたのは、腕と脚を組んだままのアナの苦り切った声。


「確かに反省し改心したが…これまでとは別な意味でおぞましいぞ」


その声を皮切りに、奴の反省の弁が流れてきた。その最後に。


『…エイミー嬢に伝えて欲しいことがある。君の着用済み靴下、着用済み女性用胸当て、着用済み下着を俺の墓前に手向けて欲しいと、こう伝えてくれ』


…数瞬の空白。それを破ったのは、マーガレットの絶叫だった。


「…何よこれ気持ち悪い気持ち悪いきもちわるいきもちわるいキモチワルイキモチワルイイイイイィィィィッ!!」


◇◆◇


「なっ…何よこれ!?死の直前になって、何を気持ち悪いこと言ってるのよ!?精神のタガでも外れちゃったの!?」

「兆候はあったんですよ。あのパーティーで、エイミー様の履いていた靴下の匂いを執拗に嗅いでいましたからね」


嫌悪感に叫び続けるマーガレットに答えるは、オスカーのげんなりした声。そこに、アナが首を振りながら混じった。


「…私のお父様も、これを聞いてマーガレットと同じようなことを仰っておられたよ。しかし…己の罪を悔いて反省し、その身を以て罪を贖わんとする者に対して言うのも残酷な物言いだが…つくづくおぞましいな…あの者の婚約者だったというだけで、身を穢される思いだ」

「本当ですねアナ様。あいつが下手に国王として真っ当で婚約解消に至らなかったら、夜な夜なアナ様の身体中の匂いを嗅ぎ回してましたよ?腋の下とかお臍とか足の裏とか爪先とか…それも、湯浴みする前の匂いを…」

「…えっ、エイミー!その話はやめてくれと言っただろうがッ!!」


各人が好き放題に言いたいことを言って、収集が付かなくなりかけたところに更に火に油を注いだのは、ぽややんとしたイザベラの言葉だった。


「…でも、気持ち悪いことは確かに気持ち悪いけど、そういう趣味を持つ殿方もおられるみたいですよ?婦人が素肌に着けていたものを愛でたり、匂いを嗅いだり、舐めてみたり、口の中に丸ごと含んで心いくまで賞味したりとか…」


…い、イザベラさん、あなた何てこと言い出すんですか!?それ以前に、何でそんなこと知ってるんですか!?


「い、イザベラ、お前何を言い出すんだ!?匂いを嗅ぐだけでなく、舐めるだと!?…あまつさえ、口の中に含んで心いくまで賞味するだと!?斯様なこと…おぞましいなどという言葉では表現し切れぬぞ!!」

「…アナ様、その程度まだまだマシみたいですよ?何でも、私が聞いた話だと、月の障りの経血、あれって時間が経ったら固まりますよね。その固まった経血を、『レバ刺し』とか言って、お召し上がりになる殿方もいらっしゃるみたいです。何でも、オークや豚の生の肝ノ臓、レバーに似ているらしくて」


ひ、ヒイイイィィィッ!!や、やめてくれ!おぞましいいぃぃッ!!


「や、やめてくれ!イザベラ!言いたいことは充分判った!だから、もう何も言わないでくれ…き、キモチワルイ…済まない、『お花畑』に行ってくるッ!!」

「い…嫌あああぁぁぁッ!イザベラ、あなた何てこと言うのよッ!!私、オークのレバーが大好きなのにぃッ!!二度と食べられなくなっちゃうじゃないッ!!」


…本来なら、自分以外の者が使うことを想定していた筈のバケツを、オスカーが使っていた。「ゔおおぉぇぇッ…げええぇぇッ!!」と『貰いそうな』えずきを発しながら、バケツの中に胃ノ腑の中のものをブチ撒けている。


…その傍らでは、アレンさんが頭を抱え込んで「…エイミー様に、あのまま止めさせておけばよかった…」と呻き声を上げていた。…今更遅いんですよ!わたしの着用済み三点セットじゃなくって、あなたの着用済み靴下と下着を、あいつの墓前に手向けて頂きますからね!!


◇◆◇


…『お花畑』で『小間物屋を開いてきた』アナと、持ってきたバケツを自分で使用するハメになったオスカーが、そのバケツを丁寧に洗った上で戻ってきた。二人の表情は、何れも憔悴と苦い怒りに満ちている。


「…アレン、エイミーがその魔道具を止めようとした時に、何故止めさせなかった!?お前のせいで、私は『小間物屋を開く』ハメになったのだぞ!」

「…申し訳ございません。返す言葉もございません」

「…イザベラ様、あのようなことを仰る必要がどこにあったのですか!?」


それに対するイザベラの回答は、相変わらずぽややんとしたもの。


「…えっと、オスカー卿、で良かったんですよね…私、何か変なこと言いましたか?何も、変なこと言った自覚はないんですけど」


…自覚ないんかい!!…とにかく、今回の惨状の元凶は、アレンさんとイザベラの二人だ。その責任は、ちゃんと取って頂きますよ!


「…あいつの墓前に、アレンさんの着用済み靴下と下着、それからイザベラ様の着用済み三点セットを手向けることを提案させて頂きます。アナ様、マーガレット様、オスカーさん…あと、ア・レ・ン・さ・ん!?イ・ザ・ベ・ラ・さ・ま!?…異論はありませんねッ!?」「無論だッ!」「勿論よッ!」「当然ですッ!」


…わたしのその言葉に、アレンさんは心底おぞましそうに、しかしてやむなく「…致し方、ありませんね…」と答えた。…しかしながら。イザベラの反応は、文字通りわたしの予想を超えた。


「…え?それは、やれと言われたらやりますけど…」


はああああいいいいぃぃぃぃッ!?あなた、自分が素肌に付けたものの臭いを嗅がれたり、舐め回されたり、挙句の果てには口の中に含まれて思う様賞味されることに嫌悪感を覚えないんですか!?


「勿論、拷問にかけられて痛い思いをさせられたり、私の純潔を穢されたりするのは死んでも嫌ですよ?でも、たかが素肌に着けた物を殿方の好きにされるくらい、別に大したことじゃないんじゃないですか?」


ぽややん、と宣ったその言葉に、イザベラ以外の全員が驚愕の視線を彼女に向けた。…やだこの人、めたくそ感覚狂ってる…!


◇◆◇


…それ以来、グロネタやスカネタをイザベラに振るのは絶対禁忌である、という共通認識がわたしたちの間に生まれたことは、言うまでもないことである。


…そのことだけ、報告させて頂く事とする。

何と言うかその…どうしてこうなった!?

書籍やコミカライズでは清楚な魅力を見せていた

取り巻き令嬢2号が、どうしてこうなった!?


…その、ブックマークといいね評価、また星の評価を下さった皆様には、

本当にありがたく、心よりお礼申し上げます。


厚かましいお願いではありますが、感想やレビューも

頂きたく、心よりお願い申し上げます。

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