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重大発表

4月19日日曜日。

今日は、新入生歓迎大会の決勝戦が行われる日だ。

なのだが――決勝戦の会場である国立装騎中央公園へと向かう準備をしながらも、先輩方の会話は第七装騎部の新入部員――つまり、わたしのことで持ちきりだった。

中でも特に、わたしのニックネームの方向で。

「アマレロちゃんのあだ名考えてるんだけどさー、全然思い浮かばないんだよなぁ」

「そうですね……アマレロちゃんですし、略してアマちゃんとか?」

「ソレどっかの小隊長みたいだな」

「倍返しだー! ですね」

などとよくわからない会話をしながら、並行して準備をしている。

「とりあえず、他のメンバーも一緒に考えましょうか」

「そーだな、モッチーはまだアイツらにアマレロちゃんが入部することは教えてないよな?」

「ええ、とっておきのサプライズですから」

「さっすがモッチー、わかってるゥ!」

「あの――そろそろ出る時間じゃないですか?」

「ああっと、そうだったそうだった! よっしゃ、行こうぜ!!」

ミドリコ先輩を担いだロート先輩に、シーニィ先輩とわたしは一緒に部屋を出る。

寮室の鍵を閉め、寮を出た。

それから、機関車に乗って神都カナンを目指す。

機関車に揺られること数十分――――神都カナン中央にそびえる巨大な塔。

スーパーコンピュータ・シャダイのタワーサーバーを取り囲むように作られた国立装騎中央公園へとたどり着いた。

「おはようございます、皆様」

装騎中央公園前ではすでに、ほかの先輩方の姿があった。

最初にわたし達を迎えたのはズムウォルト・パーピュア先輩だ。

「いつもはえーな会長は!」

「――15分前行動は基本中の基本ですからね」

「会長」と呼ばれた瞬間に、少しムッとしたような表情をパーピュア先輩は見せたが、すぐに気にしていないようにそう答えた。

それから少し遅れて、

「ワリーワリー、遅れちゃったかナ~」

そう軽いノリで現れたのはアキテーヌ・オランジュ先輩だ。

「よっ、ジーナ!」

「2分遅刻よジーナ」

「だからワリーって!!」

そう言いながらも、全く悪びれた様子のないオランジュ先輩に、パーピュア先輩が再びムッとした表情をする。

「ハァ、全く――――とりあえず行きますわよ」

「あ、会長ちょっと待って~」

「――モナカ部長、何か?」

全員揃ったのを確認し、会場に向かおうとしたパーピュア先輩をロート先輩が引き止める。

「これから新歓の決勝戦だが――――実は、我々第七装騎部にとって重大な発表があるんだ――――!」

ロート先輩の言葉に、パーピュア先輩とオランジュ先輩の表情が凍り付く。

二人はいったいロート先輩の言葉から、何を想像したのか。

それはすぐにわかることとなる。

「その重大な発表だが――――」

「まさか廃部!?」

「うわぁぁあああああああああ、ツイに、ツイにキてしまったかァ……!!」

「え? いや、ちが」

「ランク戦でも万年最下位周辺をウロウロしてるわたくし達第七装騎部ですもの――――いつか、いつかくると思ってましたわ……」

「そうカ――――ちょっと寂しくなるなぁ…………」

「ちげーよ!」

「なんだ違うんですか」

「ビックリさせるなヨー」

廃部だと勘違いし、一気に沈み込んだ二人だが、ロート先輩の突っ込みで一気に表情が軽くなる。

「アタシが何か発表する度に廃部に持っていこうとするのやめてくれる!?」

ロート先輩の言葉からすると、どうやら結構頻繁に繰り広げられるやり取りらしい。

どうりで、切り替えが早いと思った。

「それで、重大発表って何ですの?」

「部費が増えるトカか?」

「まぁ、部費が増えるっていうのはあながち間違ってないな――――」

「と、言いますと――?」

「なんと――!!」

「このカシーネ・アマレロちゃんが第七装騎部への入部を希望しているんですよ」

ロート先輩が少し溜めて、一気に発表しようとしたその瞬間、シーニィ先輩が先にその発表を言ってしまった。

思わずずっこけるロート先輩。

そんな先輩をよそに

「な、なんですって――――!? モナカ部長じゃなくてモッチーが言うんだから嘘じゃないわよね!!」

「マヂかー! 新入部員! 新入部員かァ――!!!」

「そ、そうなんだよ――と、言うわけで」

「新入部員であるアマレロちゃんのニックネームを考えようと言うことで、先輩方にもいろいろと考えておいてほしいと思うんです」

「ええ、とびっきりのヤツを考えておきますわ!」

「ふっへっへー、楽しみだネぇ!」

「な、なんか怖いです――――」

そんなことを話しながら、ぞろぞろと試合会場へと足を進めていくわたしたち。

その後ろでロート先輩が

「……なんか寂しいよ」

とポツリと呟いたのが聞こえた気がした。


それから行われた決勝戦チーム・バーチャルスターVSチーム・ブローウィングは圧巻の戦いだった。

今大会一番の優勝候補チーム・バーチャルスターとその陽の光で翳された不遇のエースチーム・ブローウィングの戦い。

その内容もまた、チーム・ミステリオーソとの戦いに負けずとも劣らぬ凄まじい戦いだった。

入れ替わり立ち代わり、倒し倒されの全力の戦い。

結果として、チーム・バーチャルスターはリーダーであるソレイユを残し機能を停止し、対するチーム・ブローウィングはリーダーのツバサと一年のスズメと数の上では圧倒的に有利。

だが、ステラソフィア史上最高の天才と言われるチーム・バーチャルスターのリーダーであるディアマン・ソレイユ。

その装騎セイクリッドはほぼ無傷なことに加え、その動きは素人目に見ても恐ろしい。

ブローウィング側は二騎が生き残っており、サエズリ・スズメの装騎スパローは多少の損傷はあるが駆動には大きな問題はなさそうだ。

しかし、ワシミヤ・ツバサの装騎スーパーセルはほぼ半壊状態。

数の上では負けていながら、装騎セイクリッドから放たれる余裕さは、こんな状態でも問題なく勝てるということを示していた。

――――それに加えてその装騎から放たれる蒼白い気。

「限界、駆動――――!」

それはもう勝ち目のない戦いに見えた。

だが――――相対する装騎スーパーセルと装騎スパローも負けてはいなかった。

「凄い――――」

それは装騎セイクリッドが強くなればなるほど、装騎スーパーセルと装騎スパローも強くなっていっているような感覚。

刹那、装騎スーパーセルが駆ける。

装騎セイクリッドが駆ける。

スーパーセルとセイクリッドが交差する――――その結果――――――装騎スーパーセルは機能を停止した。

――――だが、そこに走りこんできたのは装騎スパロー。

残像を残しながら高速でセイクリッドに急接近。

そして、そのスパローが一瞬消えたと思った瞬間――――その姿はセイクリッドの背後に現れ――セイクリッドが立っていた地面が抉られた。

「はっ――――!! バ、バトルオーバー!!?? し、新入生歓迎大会の、優勝を掴み取ったのはァ――――――チーム・ブローウィングだぁ!!?? ていうか、えっ、ええっ!!??」

司会の女子生徒が何やら動揺した感じでその戦いの終わりを告げるが、わたしにはその理由はわからない。

だけど、今の技が、今の戦いが、とても――――とてもすごいということだけはなんとなく理解できた。

「わたしも――――装騎バトルを――――――――やりたい」


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