↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/60

第56話 魔法のカバンを持ってたら

「なあ、考え直しちゃくれねぇか」

「ええっー? 客の秘密は守るって、言ったじゃないですかぁ」

「それはもちろん守る。だからさぁ」


 一行はサラトトという町についた。

 記念すべき優馬たちの旅、最初の宿である。



 ところが。


 この町ではレアな鉱石が大量に採掘されたらしい。

 これに御者のリーデルが飛びついたのだ。

 大商人が来る前にマルバーニアに持っていけば……。


 そこで、ミリアに魔法のカバンを作って欲しいと頼んできたのだ。


「なあ、嬢ちゃんの魔法で、ちょちょっと入る量をアップしてくれれば、大儲け間違いなしなんだよ」

「断りましたよね。誰にも知られたくないから絶対作らない、って」

「まあ、そうなんだけどよぉ。この機会を逃すってのは商人としてだな」

「御者じゃなかったの? これは本当に危険なの。とても人様に渡せるようなものじゃないのよ」



 魔法のカバン。


 この夢の魔道具には大きな問題があった。

 物はいつか壊れる。その時中のものはどうなるか――


「知ってるよ。馬車一台分以上の荷物が一気に噴き出すんだろ」

「ええ、旅の途中で馬車が爆発して全員死亡なんてことも珍しくないの」


 金貨二千枚もの高額で取引される夢の品は、長い旅路では十分ペイが可能であるにもかかわらず、多くの商人が手を出さない理由はそこにあった。


「でも、嬢ちゃんのは違うんだろ」

「まあね。私のはインチキだから」



 実は、カルディアを立つ数日前に、ミリアはこの魔法を師匠にせがんだが断れらたのだ。


「荷物が思ったより多くなりそうで。ねー教えてよー」

「無理よ。修得は大変だし、出来たとしても恐らく一週間以上寝込むことになるわ。辞めときなさい」

「そっかあ……。でも、やり方だけ教えて。絶対やらないから」


 そう言われてエルフィナは渋々、その理論から話し始めた。

 魔法のカバンを実現すのが難しい理由は、三つの術をいっぺんに起動する魔法陣が必要だからである。


 容量の拡大、重量の軽減、時間経過の停止


「これを作るにはどれだけ、大量に魔力を消費するかわかるでしょう」

「そうね……。でも、全部できなくてもいいじゃない。容量の拡大だけじゃダメ?」

「ハンドバックが二トンの重さになるんだけど、それ誰が持つの」

「………………」



 一度はそれで諦めたのである。

 しかし、別の方法があることに気が付き、エルフィナに相談したのだ。


「全部魔力でやるから大変なのよ。重量は神力でやれば何とかなるんじゃない?」

「そんなやり方が! ……わかったわ。それなら確かに。念のため、セーフティ機能も盛り込みましょう」

「やったー」


 魔力は容量拡大のみ。癒しの神の力を応用し、対象を軽くすることで実現したのである。

 それがミリアが言うところの ”インチキ魔法カバン” の正体なのだ。



 ミリアとリーデルの睨み合いは続いていた。


 このままでは埒が開かない。

 優馬はついに口を出すことにした。


「やってあげれば? 制限ありならいけるんだろ?」

「仕方ないか」


 ミリアはついに折れた。


「でもカバンは用意できないから、この町で買わないといけないの。それでもいい?」

「ああ、もちろん。どんなものがいいかわからないから付いてついてきてくれるか? それで、宿探しと馬車の番は……」

「いいですよ。僕とアルンでやっときますから」


 こうして、優馬たちの旅は、一泊目から前途多難なのであった。

 幸にしてアルンはこの町に来たことがあったため、宿は簡単に見つかり、優馬はそれほど待ちぼうけを食わずに馬車を預けることができた。



 そして、そのままアルンがミリアたちを探しに行ったのだが、なかなか帰ってこない。


「腹、減ったなぁ」


 優馬は一人先に食事もせずに部屋で待っていた。

 そのまま二時間が経ち、ようやく三人が戻ってきた。



「あー、疲れた」

「お帰りー」

「いいものが買えました。先に食事にしましょう」

「そ、それは良かったですね」


 もう夜九時近くである。

 宿の夕食タイムは終わっていて、あとは飲み屋のメニューしか残っていない。


「ああ、ここはドーンと奢りますから」

「ええ、散々待たされましたからね。遠慮はしませんよ」

「大丈夫です。三日間、好きなだけジャンジャン食べて下さい」


 慌てて、アルンを手招きする優馬。


「どういうこと?」

「ミリアがいけないんだよ。『魔力と神力で作るから、それほど負担はない』なんて言うから。リーデルさん、カバンを六つも買ったんだ」

「それ全部、魔法のカバンに? それに三日かかるってこと?」


 その問いにアルンは絶望的に顔でうなづいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。