表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/88

※ネプォン編───やり直しで、復讐だ!

俺は英雄だった。

今も英雄だ。


生まれながら、天から選ばれた存在として、周りは俺を中心に扱った。


俺が行動すれば、結果は常に俺に有利に働いていた。


女という女も、声をかければすぐに落ちて、取っ替え引っ替えはいつものこと。

英雄、色を好むというからな。


そう……世界は、俺を中心に回っていた。


それなのに……魔王を倒す神器を間違えたばかりに、おかしな方へと事態は転がり、今に至る。


全てはあいつの……あいつのせいだ。


俺から名声を奪い、英雄の座に着いたあの野郎。


「馬鹿弓使いのせいだぁぁ!!」


俺は叫び声をあげて、床を踏みつけた。

こうも、毎日が面白くねぇ。


しかも、魔王の思念が取り憑いているらしく、時々意識がない。


シャーリーによると、固まって動かなくなるだけで特に害はないらしいんだが。


このせいで、ピンチになることがある。

迷惑でたまらねぇ。


くそ!  腹の虫がおさまらねぇよ!!


俺の頭にあるのは、復讐だ。

よくあるじゃないか。


時間を遡って、やり直す主人公の話。

もう一度やり直せれば、俺は勝てる。


そのためにはどうしたらいい?

時間を遡るにしても、どこから?


最初からなんて、面倒くさい。


俺は、アジトの中を右往左往しながら、シャーリーに話しかけた。


「どうやったら、馬鹿弓使いを効率よく葬れるか……」


「真正面からは無理よ。あいつの力は知ってるでしょ」


「大帝神龍王の力に加え、神弓という神器まで持ってやがるからな」


「でも、やられっぱなしだから、やり返したいんでしょ? ネプォン」


「そうだ。元を正せば、今の奴の力は俺のおかげなんだ」


「確かにね」


「なのに、礼もなしだぜ? 面白くねぇ。英雄の座からも、蹴り落としてやりたい」


そして、あのフィオを奪ってやりたい……とはこの女の前では言えないな。


本音がバレると支障が出る。


「こういう時、イルハートがいればなぁ」


ボソッと呟く。

彼女の悪知恵は役に立つのだ。

イルハートの名前に、シャーリーが手を止める。


「ヨリを戻す気はないよね? ネプォン」


「俺はないけど、彼女の方は未練があるかも」


「魔王討伐以来、一度も姿を見せてないじゃない。未練はないと思う」


「どうかな。そろそろ俺が恋しくて、疼きだしてるかもしれない」


「ネプォン!」


「お前も、あいつも、俺なしにはやっていけねぇよ」


「彼女と、あんたをシェアする気はないわよ」


「妬いてんのか? 毎晩、俺を独占してるのは、お前だぞ?」


「当たり前じゃない! 恋人なんだもの!」


シャーリーは、頬を膨らませて眉を吊り上げる。


こういう時、こいつは面倒だ。

イルハートなら、俺がどれだけ他の女と関係を持とうと、『いってらっしゃい』と送り出してくれたのに。


まあ、こういう時は……。


「今の恋人は、お前だって、シャーリー」


「本当は、イルハートも欲しいんでしょ?」


「疑うなら、お前が俺を判断しろ。このまま別れるか?」


「え……」


「俺は、イルハートが俺を恋しいかもと言っただけで、俺があいつに未練があると言った覚えはない」


「ネプォン……」


シャーリーの目が揺れる。チョロいもんだぜ。


「俺は馬鹿弓使いを引き摺り落とすための、駒を揃えようとしてる。イルハートはその一つだ。わかるな?」


「うん……」


「あいつは、ヘイムニルブに出没すると噂を聞いた。行こう、シャーリー」


「ヘイムニルブ? 忘れられた廃都よね」


「ああ。そこで、若さと美貌の研究に明け暮れてるらしい」


「呆れた」


「お前の方がずっと綺麗なのに、無駄なことしてるよな」


「やだ、ネプォンたらぁ」


ご機嫌になったな。まったく、疲れる女だぜ。


客観的に言えば、イルハートの方が美人だし、この二人よりも元大聖女フィオの方が遥かに美人なんだがな。


今は持ち上げておくか。


「早く行こうぜ」


「ええ、私、幸せよ、ネプォン」


「お前が一番綺麗だ、フィオ」


……。

……!!


しまった!!


ここで、間違えるなんて!!


つい、本音が……。


シャーリーの笑顔が凍りつく。

やばい!!


「……なーんて、今頃馬鹿弓使いが、口説いてるかもしんねーな!! ははは!」


「ここで、なんであのヘタレの話になるのよ」


「ほら、だからぁ、奴も美女を前に油断してるだろ? て、話……」


「ふーん?」


「か、顔が怖いぜ?シャーリー」


「ネプォン」


「ん?」


パチーン!!


シャーリーの平手が、クリーンヒット。

いってぇ!!


顔が真っ赤に腫れて、手下には笑われるわ、翌日イルハートを訪ねた時も、そのままだった。


「面白い顔ねぇ、ネプォン」


彼女は、タインシュタ・フランの元で研究していた。


何でよりによって、このおっさんなんだよ。


「俺をハメた奴に、師事してんのかよ。イルハート」


「目的を果たすのに、必要だからよぉ」


「対価は?」


「うふ、私の得意分野で、ご奉仕してるの」


「……な!!」


俺が憤ると、タインシュタ・フランが咳払いして、イルハートを睨みつけた。


「ゴホン! くだらん。こいつは、アーチロビンが倒した魔物から、私が必要なものを失敬しているだけだ。漁夫の利だな」


「ぼうやは、魔物の秘宝とかに興味なさすぎなのよ。こっそりついていって、労なく手に入れられるわぁ」


なんだ。ご奉仕というから勘違いしたぜ。

研究しか見ないようなこのおっさんに、イルハートの色香は無意味なんだな。


「……てことは、お前、あいつの周りをうろちょろしてんのか?」


「たまーにねぇ」


「居場所を知ってるわけだ」


「おおよそね。なんでぇ?」


「奴を葬りたいからだ」


「無理」


「先に言うな。俺の作戦を聞け、て」


俺はイルハートに、説明してやった。

どうだ?たまには、俺もいいこというだろ?


「時間を遡ってやり直す、ねぇ」


「流行の復讐方法だ。主人公は、首尾よく目的を果たす。いいだろ」


「着眼点はいいとして、ちゃんと記憶の保持も忘れないようにねぇ。でないと、また繰り返すだけよぉ」


「おお、そうだ。イルハート。やっぱりお前がいないとな」


俺はイルハートに近寄って、彼女の肩を抱き寄せる。


シャーリーが、冷たい目で睨むけど今は無視。


「やってくれるな? イルハート」


彼女の魔法で、サッと解決だ。

けれど、彼女は首を横に振る。


「私はしないわぁ」


「はあ!?」


「歴史干渉の可能性がある魔法は、代償が大きいもの」


「じゃ、流行の奴らはどうやってんだよ!?」


「さあ」


「代償とはなんだ!? それさえ払えば、やってくれるのか?」


「やぁん、せんせーいに頼めばぁ?」


「先生だ? まさか、このおっさんか?」


「……」


タインシュタ・フランは沈黙している。秘術研究の第一人者なら、やれるはずだな。


「おい、タインシュタ・フラン。お前ならできるのか?」


「……できるが、対価が……」


「払う!」


「よかろう」


周りがシーンとなる。

おっと、大事なことを忘れてた。


「記憶を消すな」


「なら、対価が大きくなるぞ」


「構わん」


「わかった」


すぐに俺の目の前は、真っ白になっていく。


意識が途切れる間際に、タインシュタ・フランの声が聞こえた。


「次こそは勝てるといいな、グルレスの英雄に」


読んでくださってありがとうございます。

ブックマーク登録と、評価ポイント★で応援していただけると嬉しいです。とても励みになります。


(ポイントは広告の下↓にあります)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ