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英雄の帰還

翌日、俺はフィオと一緒にガルズンアース国へと帰った。


知らせを受けた、ケルヴィン殿下、ギルバート、ティトやじっちゃんも待っていて、俺はみんなにもみくちゃにされながら、帰還を喜ばれる。


二年も経っていたことに、正直驚いてるけど、話を聞いていると時間が経っていることに気づかされた。


俺やフェイルノには空白の二年間。

みんなにとっては、俺の生還を信じつつも、懸命に生きた二年間。


「英雄の帰還だから、凱旋パレードをしたいと思うのだが、お前はそういうのが嫌いだよな? アーチロビン」


「はい、すみません、ケルヴィン殿下……いえ、ケルヴィン宰相」


「ええー! しようよ、アーチロビン。凱旋パレード。ネプォン元国王の時は、それはそれは派手にやったんだよ?」


「ギルバート、俺はまた『隠しチートキャラ』として過ごした、あの日々に戻る。有名になりすぎると、色々面倒だから」


「ふぉっ、ふおっ。みなさん、すみません。ワシの孫は、注目されるのが苦手なもので……」


「じっちゃん、言わないでよ」


話を聞いていた魔導士ティトは、腕を組んで俺を見た。


「まったく、目立ちたがり屋だったアーサーの孫とは思えんのう。それにしてもよく戻った、アーチロビン」


「ありがとう、ティト」


「礼ならフィオに言え。誰よりも、お前の生還を信じておったのじゃ。ケルヴィン宰相との、婚姻の話を蹴ってまでな」


「え!?」


思わずフィオを見る。彼女はため息をついて、俺を見た。


「───ヘレン王妃が、ネプォン元国王と離婚された時、そのまま修道院に入られるのではと危惧されていたの」


「そうなんだ……」


「その時、オベリア様が、次代の王になるケルヴィン宰相に嫁ぐようにおっしゃったの。私、必死に抵抗した」


「フィオ」


「そのうち、ヘレン王妃は女王として即位して。ケルヴィン宰相は、さっさとテデュッセアと婚約してしまったの」


「え!? 太陽神殿の巫女のテデュッセアと?」


俺が驚いて声をあげると、ケルヴィン宰相は、ニヤリと笑って婚約指輪を見せた。


「ふふ、俺たちの愛も、お前らに負けないくらい、強いんだからな。壮絶な周囲の反対を押し切って見事勝ち取った」


「すごいですね」


「おいおい、今度はお前たちの番だ。フィオと幸せにならなきゃな」


「はい、ありがとうございます」


「アーチロビン、何年かかってもよいのじゃぞ? ほれ、ワシらもこの歳でようやく叶ったのじゃ」


じっちゃんが、嬉しそうに魔導士ティトの手を握る。


ティトは、恥ずかしそうに身を捩った。


「こ、こら! 自分から別れておきながら、調子のいいことを!!」


「おうおう、何をしても可愛いのぅ、ワシのティトは」


「誰がお前のじゃ! ワシは、アーチロビンが戻るまで、責任持って面倒見たまでじゃ!!」


「ほいほい、後で美味しいお茶を淹れてやるからな、ワシのティト」


「耳まで遠くなったか!? この、もうろくジジイ!!」


「お前を想う気持ちは、もうろくせんよ、ティト。ワシの永遠の恋人じゃ」


じっちゃんは、魔導士ティトの頬に嬉しそうにキスをする。


ティトはみるみる真っ赤になって、俯いてしまった。


「も……もぅ、困った……ジジイじゃ」


その変わりように、俺たちはびっくりする。何事にも、あまり動じないあのティトが、少女のように恥ずかしがっていた。


「ジッチャン、ヤルゥ」


オウムのフェイルノが、揶揄うように喋った。


「おうおう、フェイルノや。ワシが教えた言葉は役に立っとるようじゃの」


「ウン、アーチロビン、イッパイ、カラカッタヨ」


「え、やっぱり、じっちゃんが教えてたの?」


「そうじゃよ? お前は女の子にモテるくせに、鈍いからのう」


「ええええ……」


「ワシの代わりに、いい子が現れたらサポートできるように指導しておいたんじゃ」


「さ、サポート?」


「おかげでフィオと、仲良くなれたじゃろうが」


サポートというか、余計な煽りを受けたというか……。


「コレカラ、ウワキシナイヨウニ、ミテテアゲルネ、フィオ」


「いい子ね、フェイルノ。あとでオヤツをたくさんあげる」


「フェイルノ! お前な!」


「オヤツ、ハ、セイギ!!」


フェイルノは、羽根をバタバタさせて得意げに胸を張る。


「はは、これでお前も同じ立場だ、アーチロビン」


「ケルヴィン宰相……」


「俺だって、浮気したらヤケドさせると宣言されてんだぜ」


「あ、ボクもー」


「ギルバートも?」


「うん。テレクサンドラに、浮気したら身も心も凍るような恐怖を与えてあげると言われてさ。怖いのなんの」


「ギルバートは、テレクサンドラと恋人に?」


「だよー。女性は怖いね」


「まったくだな」


「ですよね、ケルヴィン宰相」


「四六時中監視されてるみたいで、怖いな」


「ふぉっ、ふぉっ。バレた時に、相手に叱られるくらいならまだ良いわい。じゃが、本当に怖いのは失うことじゃ」


「じっちゃん……」


「ワシもティトに何度叱られたか」


「!!」


「イタタ!! ティト、髭を引っ張るでない!!」


「まだ許しておらんこともあるからな!! 死ぬまで償え!! この浮気者!!」


「ご、ごめんなさい。本当にすまん……」


「何十年経とうと、当時の浮気は細部まで忘れんからな!! 一つ一つ、ここでばらしてやろうか!?」


「ティト、許してくれぇ」


じっちゃんとティトは、仲良く喧嘩しだした。


「何十年も忘れないんだ……」


「やっぱり女性は怖い」


「ですよね」


俺たちが、顔を見合わせて確認し合っていると、フィオがジロッと睨んできた。


「しなきゃいいだけでしょう!?」


「はい、まったくその通りです」

「異論はございません」

「何も申しません」


俺たちは全員で、フィオに応えた。


フィオを怒らせると怖いな。それでも……。


彼女が見せてくれる華のような笑顔に、敵うものはない。この顔が見たくて、俺はなんでもしてしまいそうになる。


会えなかった二年間、本当に苦しかった。彼女が、魂抜けを起こした時も苦しかったけれど、会えない時の苦しさは、想像を絶している。


嫌われるのも、失うのも嫌だ。


俺は人目を忘れて、フィオを抱き締めた。


「フィオ、落ち着いたら、また冒険に行くだろ?」


「ええ……ええ!! 行く。どこまでも、行く……アーチロビン」


彼女は白い耳を後ろに倒して、尻尾を巻きつけてくる。


素直な耳と尻尾。本当に愛らしい。

最初に彼女と訪れるのは……。


「まずは、ポリュンオスだな。神弓のメンテナンスをニャルパンに頼まないと」


「そうね」


俺たちの会話に、ケルヴィン宰相たちも参加してくる。


「そこなら、俺たちも行きたいな。テデュッセアがいるし」


「あー、いいですねぇ、ボクもテレクサンドラに会いたいです」


「アーチロビン、ニャルパンと言えばな、また鍛冶屋を閉めとったぞい。お前が戻ったら再開するとかで」


「ええ!? ティト、てことはつまり?」


「また、掃除と風呂いれからせねばならん」


「うぇー……」


みんながそれを聞いて、どっと笑いだす。俺もつられて笑顔になった。本当にいい人たちだ。いい仲間たちだ。


「あ、そうだ、アーチロビン。これを」


フィオが、見慣れぬ本を取り出して見せてくる。


「これは?」


「あなたの本よ、アーチロビン」


「!?」


「タインシュタ・フランが完成させたの。ベストセラーで、印税は研究費にあてるとか」


「ガッツリしてんな……えっと、タイトルは……『不遇弓使いの英雄譚』か」


「あなたの冒険を、これを読んでくれた人たちも知ってくれた」


「そ、そうなのか」


「後でアーチロビンも、読んでみて」


「ああ」


まさか本になるなんてな。

とりあえず……。


「行こう、みんな」


「おう、まずは宴だ」


「あ、行きましょう!」


俺たちは、仲良く歩き出した。

わいわい語り合いながら、明るい未来へと向かって。


読んでくださってありがとうございます。

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(ポイントは広告の下↓にあります)


次話からは番外編となり、ネプォン視点へと切り替わります。


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