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穏やかな眠りの中で

俺たちは、吟遊詩人に別れを告げて太陽の神殿へと戻った。


暗黒騎士ヴォルディバは、そのまま舞台に寝転んでいて、毛布がかけられたまま、朝まで寝かせておくらしい。


朝になったら、乱闘の代金を払わせると、店主は言う。


どうかな……こいつはまた、暴力をふるって今度こそ店を滅茶苦茶にするかもしれない。


俺は奴がゴネるとわかっていたので、先に奴の財布からお金を抜いて支払いをしておいた。


何か言われたら、俺がしたと伝えて欲しいと言って。


奴はもう、俺に暴力を振るえないからな。


太陽の神殿では、相変わらずテレクサンドラと、聖騎士ギルバートが、いい雰囲気で談笑していた。


外はもう真っ暗。

そろそろ寝ないと。


「テデュッセアは、本当に大丈夫かな……」


ケルヴィン殿下は、窓の外を見ながら、心配している。


ネプォンは、確かに手が早い野郎だけど、相手を見極めて手を出すタイプだ。


テデュッセアを口説いてはいても、ヴォルディバのように、強引なことはしないはず……多分


「テデュッセアも、ここに連れてこれたらいいのにな……」


ケルヴィン殿下は、はぁ、とため息をついた。

この人、もう夢中なんだな。


テレクサンドラは、そんな彼の近くに行って宥める。


「テデュッセアは、気の強い女性です。私よりもしっかりしていますから、心配入りませんよ、ケルヴィン殿下」


「あぁ、でも、義兄上が強引な真似をしたら……」


「その時は、気の毒なのは彼の方です」


「テレクサンドラ?」


「テデュッセアが許しもしない行為を働こうとした男性はみんな……後悔することになる」


「神通力があるから?」


「誰も……太陽の熱さに勝てない。彼女があなたに身を許したことも、滅多にないことなんですよ?ケルヴィン殿下」


「え」


「彼女が望まなければ、彼女の肌は灼熱の熱さとなり、あなたは生きているはずがないんです」


「!! では、まさか、あなたは逆に恐ろしく冷たくなる?」


「えぇ。私たちが何故、それぞれの神殿を統括できているのか、これでおわかりですか? どうか、安心してください、ケルヴィン殿下」


「あ、ああ」


「ふふ」


たおやかに微笑む乙女。

今は少し恐ろしく見える。


ケルヴィン殿下は、俺たちの視線に気づいてハッとすると、咳払いをした。


「ゴホン! と、ひとまず分かったことを踏まえて、明日に備えよう」


「はい」


とりあえず、みんな休むことになった。この部屋からは出られないから、ティトに小さくしてもらっていた寝袋を元の大きさに戻して、横になる。


俺とフィオは、魔導士ティトを挟んで、両隣になった。


「おやすみなさい、みんな。おやすみなさい、アーチロビン」


フィオはティトの寝袋ごしに俺の顔を見て、にっこりと微笑んでくる。


可愛いなぁ。


素直にそう思えた。俺の寝袋に入って来ないかな。……昨日の続きを……て、いや、待て待て!


なんてことを考えるんだ、俺は!!


みんなも、いるんだぞ?


それに、今更だけど、彼女が大聖女の道を選んだ時に、別れることになるんだ。


これ以上は……望むべきじゃない。


「おやすみ、フィオ」


そう言って、俺は目を閉じる。


「エー、イッショニ、ネナイノォ?」


いきなり、オウムのフェイルノが、大声で言った。


また、お前は! どうしてそう、余計なことを言い……!


「おうおう、若いモノはえぇのう」


魔導士ティトが、寝袋から大声でからかう。

だから、違うって!!


「アーチロビン、これを貸してやろうか。紳士のたしなみだぞ?」


「いりません、て!!」


ケルヴィン殿下が、これみよがしに茶化してくる。


なんなんだよ、みんなして!!


「フィオ、イッショニ、ネヨ」


「いいよ。おいで、フェイルノ」


あぁ! フェイルノの奴、ちゃっかりフィオの寝袋に潜り込みやがって!!


「フェイルノ! お前な……!」


「ドウブツノ、トッケン」


「やかましい! あとで覚えてろ、お前!!」


「ウラヤマシイナラ、キテミロー」


「く……! こんのぉ!」


「フィオ、アッタカーイ。ヤワラカクテ、イイキモチ」


「お前……明日は焼き鳥にしてやる!」


「コワーイ、フィオ、タスケテー」


「動物をいじめちゃダメ、アーチロビン」


いじめ……!? 俺が?

俺が悪いのかよ?


もう、いい!


俺は不貞腐れて、横になった。


隣から、魔導士ティトの笑い声が聞こえてくる。何が面白いんだよ、何が!!


「けけけ、素直にフィオのところへ行けば良かろう。アーサーなら、間違いなく潜り込んでおるわ」


「俺はじっちゃんじゃない」


「ふふ、格好つけよって」


魔導士ティトが、クスクスと笑いながら言う。

ほっといてくれよ!


「おぉ、フィオはもう寝たか。可愛らしい寝顔じゃの」


また魔導士ティトの声が聞こえて、俺は心底ガッカリする。


俺も勝手だよな、ホント。

思いの外、大きなため息が出てしまう。


「アーチロビン、お前、フィオが大聖女になるかもしれんと思って、遠慮しとるじゃろ」


「え……」


「まぁ、大聖女オベリア様は、そのつもりじゃろうな」


「オベリア様だけじゃない。周りだってフィオの実力を知れば、ほっておかないよ」


「おそらくは。じゃが、身を引くことがフィオのためだと決めつけるなよ」


「!?」


「かつて、アーサーがそうだった。ワシのためと言って、離れていった」


「ティト……じっちゃんは、ティトの師匠に頼まれたと言ってたよ」


「ふん! 別れたその日から、ワシの心はズタボロじゃった。一度精霊や魔獣との契約を切らねば危ういほどにな」


「ティト……」


「フィオに同じ想いをさせるな、アーチロビン。素質があろうとも、本人が望まねば大聖女の席はただの牢獄じゃ」


「牢獄!?」


「素質があるものを放り込むためのな」


「……」


俺は、フィオが眠る寝袋をじっと見た。彼女は、大聖女を望まないと言った。


俺が身を引くことは、彼女をみんなと一緒になって、牢獄へと繋ぐことと同じなのか?


そんなことを考えながら、俺はいつの間にか眠っていた。


「グダグダ悩んでるの? アンタ」


夢の中で俺は、日の本の龍王に会う。

また、夢を渡れたのか。


龍王は海の中を、ゆっくり泳いでいる。


「そんなことより、耳寄りの情報があるんだよ」


「んー? なぁに? ……え? 神龍酒?」


「そう。あるのか? そこに」


「あるというか……ないというか」


「はっきりしないなぁ」


「うるっさいわねぇ。この国の(みかど)に献上する酒の名前と、同じだなぁと思ったのよ」


(みかど)?」


「この国で一番偉い人」


「へぇ」


「神龍酒は、この里でたまに実る金色の稲穂から作るお酒なの。本当にたまーになの」


「今年は実ったのか?」


「いいえ」


「え!」


「前にできた分は、もう献上しちゃってる」


「なんてことだ……」


「でもねぇ」


「ん?」


「祠に隠してあるトックリが一つある」


「トックリ?」


「お酒を入れる容器のこと。アタシは下戸なんだけど、里のものは私にもお神酒として奉納してくれるのよ」


「じゃ、じゃあ!!」


「実はカジカが酒豪でね、あ、カジカというのはハタキ持ってたあの娘ね」


「あの強そうな女の人?」


「そう。彼女赤ちゃんできたから、飲めなくてさ。とりあえず解禁日まで取っておく約束して、保管してるの」


「あるんじゃないか! 用意しておいてくれ」


「いいけどさ、アンタこっちに来たら一緒に謝ってよ? 約束反故にして、魔物にくれてやるんだから」


「ああ!」


「かー! 安請け合いしちゃって。怖さを知らないから……」


「お酒が好きなら、こっちのお酒を代わりに持って行くよ。ワインとかどう?」


「果実酒のこと?」


「そう」


「んー。西洋のお酒なんて手に入らない時代だから、珍しくていいかな……」


「決まりだ!」


「ふふ、アンタ、いい奴よね」


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