表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/88

女同士の戦い

大魔導士イルハートは、強気な声でフィオと話し始める。


「やだぁ。あんた、私に勝てるのぉ? もう少し、成熟してから挑みなさい。」


「確かに私は、あなたみたいに豊満じゃないわよ。でも、彼を想う気持ちは誰にも負けない」


「口先だけなら、なんとでも言えるわよぉ?」


「私は一生分の恋をしてると思ってる。それくらい彼が好きなの」


「あらぁ、お熱いことぉ」


「彼との恋なら命を賭けてもいい」


「へー、命懸けぇ? 男なんて、あっという間に新しい女に飛びつくわよぉ? そういう生き物だから」


「彼は違う」


「みーんなそう言って、裏切られていくのよ。あんたもその一人ぃ」


「決めつけないで!」


それを聞いて、イルハートは鼻で笑った。


「ふん、そんなに自信あるなら、そのぼうやの顔に押し付けた洗面器をはずしなさいよぉ。私の姿を見ても、ぼうやが変わらないなら、信じてあげるわぁ」


「見なくていいの、そんなもの」


「そんなものぉ? 不安だから隠すんでしょうが。バレてんのよね」


「あなたの作戦には乗らない。私たちの間を割く気でしょうけど、そうはいかない」


「愛があるから?」


「そうよ」


「愛なんて、この世で一番あてにならないわ。心なんてコロコロ変わるもの。特に恋愛はねぇ」


「変わらない人もいるわ」


「へぇ」


「アーチロビンのおじいさん、一人の女性を愛し抜いた」


「偉いわぁ、じゃ、あなたもまずは、やってみなさいなぁ。真空の砲弾よ、敵を撃て。バキム!!」


「え? きゃ!」


「フィオ!?」


ドドン!!


衝撃波を感じて、顔の洗面器が外れる。よく見ると、洗面器とフィオが、横に倒れていた。


飛び上がったフェイルノが、心配そうにフィオの顔の近くにとまり、覗き込んでいる。


フィオ!

フィオを傷つけた!!


俺は怒りで、頭に血が昇る。

この女!!


大魔導士イルハートは、フィオに見せつけるように、俺にベッタリしがみついてきた。


くそ! 体を動かせない!

奴の魔法を解かないと!!


「う……ゲホ!ゲホ!」


フィオが目を覚ます。

よかった、気絶していただけか。

いや待て───口から血が流れてる!!


彼女はお腹を押さえながら体を起こすと、苦しそうに俺たちを見た。


その目が俺の目の前で、あっという間に悲しそうに潤んでいく。


やめろ……そんな目をさせたくない。

俺は、そんな目をさせないために……。


彼女が悲しむと、自分のこと以上に苦しい。胸がズキズキ痛んで、たまらなくなる。


大魔導士イルハートは、勝ち誇った笑みを浮かばせた。


「ふふふ、ねぇ、お嬢ちゃん。私と彼が交わっても、あなたは乗り越えるのよね? 変わらぬ絶対の愛があるんでしょお?」


「!!」


「ふん、なによ、その不安そうな目は。目の前の障害にもう怯んでるのぉ?」


「い……いや、させ……ない。彼は、私の……」


「無駄無駄。目の前で、私に奪われる彼をよーく見ておくことねぇ」


ズズン!

突然地鳴りがして、フィオの方を見ると、彼女の尻尾が九本になった。


「あんたなんか……!」


怒りに震えるフィオの体が獣形に変わり、詠唱を始める。


フィオ!? 祈りの書がないのに?


大魔導士イルハートも、すぐにロッドを構えて対抗魔法を唱えだした。


「我らが女神ルパティ・テラ。その御手より溢るる光を我に与え、我が敵を打ち払い給え。セイントクラスター!!」


「我が契約せし、闇の精霊たちよ。光の技を喰らいて跳ね返せ、デビルクラスター!!」


ドドン!!


お互いの力が、真ん中でぶつかり合う。

大魔導士イルハートが、珍しく押されていた。


「あーら、意外とやるわねぇ、お嬢ちゃん」


「負けない……あんたみたいな人に!」


「祈りの書の力も借りずに、まるで大聖女ねぇ。だ・け・ど……」


「!!」


次第に、フィオの力が押し返され始める。

まずい───フィオ!!


「忘れたの? 私は大魔導士なのよ? ぽっと出の新米神官にやられるほど、おちぶれてないわぁ」


バギン!!


「きゃあ!!」


力を弾き返されたフィオは、壁に叩きつけられて、人の姿に戻る。


そのまま床に倒れ、震えながら頭を上げて俺に手を伸ばしてきた。


「フィオー!!」


俺は必死に叫んで、彼女の方を見ていると、イルハートが両手で俺の顔を包んでくる。


「あら、あの女、生きてるわぁ。壁に衝突する前に、シールドを張ったのね。うふふ、日々霊力が強くなってるぅ。あの、シャーリーより上よ、彼女」


「よくも、やりやがったな!!」


「当たり前でしょお? 今のうちに叩いておかないと、後々面倒になる女なんだもの」


「離せ!! フィオ、フィオ、早く回復の魔法を!!」


「アーチ……ロビン」


フィオが、意識朦朧としながら、床を這って俺のところへ来ようとする。


「もう、動くな! フィオ!」


「まだまだ祈りの書なしには、そう何回も力は使えないみたいねぇ。ふふふ、さて、と。」


大魔導士イルハートは、俺の体に手を這わせ始めた。


「触るな!!」


「ふふ、ぼうや、色々と教えてあげる。そして、こんな女を忘れて、私に夢中になるのよぉ」


「ふざけんな! ……く!!」


「最初は抗うもの。でも、みーんな最後には私の手に落ちる。男なんてその程度よね」


くそ! 感じたくないのに!!

意に反して、体が熱を持ち始める。


フィオのことを考えろ!

こいつが、フィオにしたことを思い出せ!!


必死に目を閉じたその時、横から鋭い声がした。


「慈悲深き我らが神よ、聖霊を使わし、我らの盾となる力を貸し給え、セイントシールド!!」


俺の体を、フィオのシールドが包み、イルハートから遠ざける。


───あ、危なかった。


「ち! ぼうやに触れないじゃない、お嬢ちゃん。悪い子だわぁ」


「はぁ、はぁ……負けない。アーチロビンは、渡さない!」


フィオは、必死に俺の近くまで這ってくる。痛みに顔を歪ませながらも、決して目を逸らさない。


「泣いていじけるかと思ったのに、いい根性してるわねぇ、ま・け・い・ぬ」


イルハートは、俺のそばまで這ってきたフィオの髪の毛を掴み、高く持ち上げる。


「ああ! い、痛い!!」


フィオが、悲鳴のような声をあげた。


よくも……よくも……俺のフィオを!!


───バキ!


俺の両手と両足を飲み込んだ床に、ヒビがはいる。

同時に、イルハートの顔に一筋の傷がはいった。


「い……!」


イルハートは、すぐに指先で傷を確認する。

俺は彼女を睨みつけて、冷たい声で言った。


「───後悔するからな。俺の目の前でフィオに手を出したこと」


読んでくださってありがとうございます。

ブックマーク登録と、評価ポイント★で応援していただけると嬉しいです。とても励みになります。


(ポイントは広告の下↓にあります)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ