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混浴の誘惑

温泉エリアの出入り口に、俺たちは来た。


「お風呂……。ここが、さっき彼女に聞いた……」


「フィオ?」


フィオが、独り言を言いながら、じーっと中を見ている。


俺はドキドキする胸を抑えながら、彼女に話しかけた。


「フィオ、入るか?」


「!!」


「い、いや、あれだからな? お、俺は外で待ってるから、ゆっくりしてきたら? て意味だから……!!」


な、何を焦っているんだ? 俺

『一緒に入るか?』と聞きたかったのに。


どうして、違うことを言ってしまったんだ。


俺が頭をバリバリ掻いていると、オウムのフェイルノがまた余計なひと言を言う。


「イッショニ、ハイロ、フィオ」


お前……! 人が言いたかったセリフを!!


俺は思わず、フェイルノを睨んで大声を出した。


「何言ってんだよ! オウムだからって、お前は雄だろ!?」


「ヤーン、トリニ、ヤイテル?」


「喧しい! 動物の特権をひけらかすな!」


「アーチロビン、イッショニ、ハイレルヨ」


「お前は!! ……て、え?」


「カイテアル。ホラ、コンヨク」


フェイルノが、壁に設置してあるパネルを、嘴でツンツンつついた。


ほんとだ……は! いやいや、待て!!


一人焦る俺の前で、フィオは受付をすませている。


え、嘘。ち、ちょっと待ってくれ。その、俺たち、いきなり、いいのか?


「貸し切り専用にしたから、アーチロビン。ち、ちゃんと湯浴み着あるし、一番奥だから大丈夫」


フィオは、恥ずかしそうに俺の手を引く。これは……いいのでしょうか? いや、いいよな。相手は愛する女性だし、彼女も俺が好きだし。


何より、フィオが望んでくれたこと!!


俺は、黙って彼女について行った。

貸し切り専用エリアは、ドアがいくつもある。その一番奥の部屋に、俺とフィオは入った。


脱衣所は、男女できちんと分かれてる。それに、温泉用の湯浴み着が確かにあった。


お、落ち着け。俺たちは既に、水着姿で抱きしめ合った仲だ。


あのスパで。


い、今更湯浴み着くらいで、興奮しなくていいだろ!?


俺は必死に自分を宥めた。付き合ってたら、いつかは来る日だ。それが今日だった、てだけだ!


ケ、ケルヴィン殿下だって、テデュッセアとイチャイチャしてたし、俺だっていいはずだ。


あんなふうに、抱き寄せてこう───。


そ、想像してたら、ヤバくなってきた。

色々と……。


「アーチロビン、チャント、オチツカセテネ」


フェイルノ、それ以上言うんじゃねぇ!


俺が睨むと、フェイルノはフィオの脱衣所に飛んで行った。


あ、あの野郎! オウムだからって!


俺は不機嫌なまま湯浴み着を着て、浴室に出た。フィオは……まだいないな。


浴室は露天風呂のようになっていて、浴槽からは空が見える。天空の露天風呂か……贅沢だよな。


おまけに、寝そべって入れるようにもなってる。


星空を見上げながら、仰向けに浸かれるなんて、いいなぁ、これ。


そう思いながら、体を綺麗にして、湯船に寝そべる。


このまま、待っていよう。フィオ、まだかな。


その時だ。チャプンと音がして、誰かが浴槽に入って来る気配がした。


俺は、思わず目を閉じる。み、見たら失礼だろ?


そう思っていると、体の上に柔らかいものを感じた。


え!? フィオ?


思わず、体が強張る。フィオ、いきなり乗ってくるなんて、だ、大胆だな。


うっすらと目を開けると、フィオが顔を近づけてくるのが見えた。


愛しいフィオ……。


思わず彼女の顔に片手を添えて、もう片方の手で抱き寄せる。


……?


微かな違和感。

フィオ───こんなふうだったっけ?


何かが違う。


フィオは、頬に添えられた俺の手を優しく握って、その手にキスをした。


「アーチロビン、愛してるわ」


彼女は、微笑んでそう告げる。

その声はフィオの声。


でも、違う……何かが違う。


確かめないと。


「フィオ」


「なーに?」


「クリムティナにも、声をかければよかったな」


「誰? そんな名前、初めて聞くけど」


!!


やっぱり、こいつは偽物だ!!


『フィオ』はセカンドネーム。

クリムティナ・フィオ・グライア。

それが彼女の本名。


知らないということは───敵だ!


俺は彼女の肩を掴んで引き剥がした。


「きゃ!」


「お前は、誰だ!?」


彼女は、それを聞くと不適な笑みを浮かべる。


「あらあ、バレちゃったぁ?」


その姿が変わっていき、大魔導士イルハートの姿になった。


「な……! お前!!」


「うふふふ、大地の精霊よ、我が意に従い縫い止めよ、ローメ・グラド!」


直後、俺の手足が床に飲まれるように埋まる。

手が……足が、動かない!!


「あ! 何をする!!」


「縛りプレイになっちゃうけど、いいわよね? ぼうや、楽しみましょう?」


「縛り?」


頭の中は、疑問符だらけ。

そんな俺の目の前で、大魔導士イルハートは、身につけていた湯浴み着を脱ぎ始めた。


「な、何をして───!?」


俺が叫ぶと、バーン!! とものすごい音がして、何かが吹き飛んで来る。


今度は、なんだ!?


「離れなさいよ!!」


脱衣所の方から、フェイルノを肩に乗せたフィオが、湯浴み着を着たまま走り出てきた。


飛んできたのは、彼女の脱衣室のドアか。


大魔導士イルハートは、残念そうに彼女を見た。


「あら、せっかく脱衣所に閉じ込めたのに、もう、出て来たのぉ? 強くなったのね、お嬢ちゃあん」


「ふざけないで! 何度も何度も、なんなの!?」


「あら、やぁねぇ。言ったでしょ? あなたから彼を奪うのは簡単だとぉ」


「なんですって!?」


「うふ。チェックメイトよ。いい体してるわよね、私のルークぅ」


大魔導士イルハートが、俺に顔を近づけて来る。

ハラリ、ハラリと湯浴み着が脱げて、嫌でも見えそうになった。


やば……!


バシャーン!!


「きゃ!」


「うわ!」


フィオが横から、お湯を俺たちにかけると、洗面器を俺の顔に被せた。


「ぐぇ!」


我ながら情けない声。何にも見えない。

続いて、冷たい冷水がまた横からかけられる。


「やん! 冷たぁい!!」

「冷てぇ!!」


「さっさと、彼の上からどきなさい!!」


大魔導士イルハートが、俺の上から離れていく。それなのに、フィオは俺に洗面器を被せて何も見せない。


やがて大魔導士イルハートが、挑発的な声でフィオと言い争いだした。


「お湯と水を横からかけるなんて、無粋よねぇ、あんた」


「あなたこそ……なんて格好なの!? 素っ裸じゃない!!」


は、裸!!


何を察したのか、フィオが俺の耳を引っ張る。


いて!! 痛い……!!


周りが全然見えない中、大魔導士イルハートの高飛車な声が聞こえてきた。


「もうちょっとだったのにぃ」


「私の恋人よ!?」


「だから何ぃ?」


「は?」


「欲しいものは奪う主義なの。ゆっくり籠絡する予定だったんだけど、前倒しでぼうやを手に入れることにしたのよぉ」


「あなたは、ネプォン王の恋人でしょ?」


「うふ、さぁねぇ?」


「裏切って、良心が痛まない?」


「あいつだって、何人の女と関係もってるか考えてごらんなさい。自分は浮気してもよくて、女にだけ貞操を求めるのは、男にとって都合がいいからよぉ」


「だからってこんなこと……!」


「快楽の前に理性や道理なんて、無力なんだからぁ」


「……アーチロビンを、快楽で落とすつもり?」


「うふ、そうよぉ?」


「アーチロビンが好きなのは、私なの!」


「だからなによ、て言ってるでしょ。そんなこという男を、何人も私のものにしてきた。現に彼も、しっかり体は反応してたしねぇ」


ギク! ……そりゃ、仕方ないだろ。直接乗られて、無反応なんてあり得ない。


最初は、フィオだと思ったし……。


フィオは、俺の顔に押し付ける洗面器に力を入れてきた。痛い、マジで痛い!


「彼は奪わせない」


フィオが、低い声で恫喝しだした。


「あら、私に勝つ気なの? お嬢ちゃあん」


大魔導士イルハートが、かかってこいといわんばかりの声色になる。


「オンナノ、タタカイ、コワーイ」


フェイルノが、震える声で言った。


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