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41話 ミアズマ1 始まり

2017.01.01

あけましておめでとうございます。

7~10話を予定する「ミアズマ編」ですが、毎日14時に更新します。多分おそらく十中八九。

短い間ですが、応援よろしくお願いします。

 ある日、真夜中。特に眠る必要のない俺はキアレおばさんの家ですることもなく、暇を持て余した掃除機の遊びを開発していた。

 この前コトラを相手に披露したこうそくスピン。あれを進化させるべく、ひたすらその場で回転し続ける。心なしか速度が上がっているかな。

 こんなヘンテコなことをしている姿、誰にも見せられないって。


「お久しぶりザマスねポルカ……何してるザマス?」


 見りゃわかるだろ。ベイブレ○ドごっこ……ってうわぁぁぁぁ!?

 俺の目の前にいきなり現れたのは、自らを厄神と呼ぶソイルコンタム。悪食ピグ騒動の黒幕だと言っている豚。何しに来た!今の俺の奇行をいつから見ていた!


「いま来たばかりザマス。でもポルカの奇行は、この目にバッチリ焼き付けたザマス。ブヒヒヒ」


 笑うな!それで何の用だ!俺をバカにしに来たのか!?


「大した用じゃないザマスよ。この前言っていた『次の予定』が、予定通りに始まったみたいだから、教えにきたザマス」


 は?ああ、うん。情報提供どうも。


「せいぜい足掻くがいいザマス。この前のようには行かないザマス。死人が出るかもしれないザマスねえ」


 ……なあ、お前って何なの?人類の敵なの?なんで俺にそんな情報を伝えてくれたの?


「敵でも味方でもないザマスよ。この前も言ったとおり、審判ザマス」


 その言葉の意味が全然わかんねえんだよ。もっと詳しく教えてくれ。


「お腹すいたから帰るザマス。また気が向いたら来るザマス」


 おいコラ!! 待てや!!

 くそっ、もうどっか行きやがった!



 □□□□□□□□□□


「お母さん、今日はゆっくり休んでてね。連絡は私がしておくから」


「ごめん……よろしく……」


 気分最悪な夜が明けたら、おかみさんが熱を出していた。

 昨日の夕方ごろ、急にお腹が痛みだしたらしい。一晩寝れば治ると思って放っておいたら、翌日にはさらに重症化していたみたいだ。

 まあ、いくら完璧超人のおかみさんとは言え、病気には勝てないか。環境が変わったことによるストレスが大きかったのかもしれない。

 それに、傍目から見てもわかるぐらいに働きすぎだと思う。宿屋での仕事をしていないときも、キアレおばさんの家で内職をしているのをよく見た。あれで倒れないほうが不思議だ。

 何にせよ、いつも働いている分、体調が悪いときはゆっくり休んでいてほしい。

 不幸中の幸いと言うか、ノエルは必要以上なほど元気だ。おかみさんの分まで頑張ってくれるだろう。多分。


「だからさあ、ノエルちゃんも病気には気をつけなさいよ。病気といえばこの前、隣の家の赤ん坊がすごい熱を出して死にそうになってたねえ。あのときはいつも聴こえる泣き声が全然聞こえなくて、他人事ながらものすごい心配だったよ。無事に治ったみたいでよかったけどさ、」


 おかみさんがいないせいで、キアレおばさんがただひたすら喋り倒す朝食となった。ノエルも合間合間に『うん』とか『そう』とか返してはいるが。

 あ、ちなみに旦那さんも朝食の席には付いているが、もはや存在感が霧と化している。うだつの上がらない中年のおっさんだろうか。髪の生えぎわが後退しているのは日々キアレおばさんに対応し続けた気疲れから……ではないことを祈ろう。


 と、その時、玄関から物音が聞こえた。

 なんだろうと思って見に行くと、おかみさんが青白い顔をしながら出かけようとしている。


「ベネッタちゃん、寝てなさいよ」


「い、いえ、また……催してきたもので……」


「またあ?さっきも行ってきたばかりじゃないの。まあ、気をつけてね」


 どうやらおかみさん、お腹の調子が悪いようだ。

 キアレおばさんの家にトイレはない。この家が特別おかしいわけじゃなくて、多くの人が普段から公衆トイレを使う文化なのだ。雨の日とか面倒だろうな。少なくとも便利ではないよな。俺にはあんまり関係ないけど。

 おかみさんが玄関から出ていったのを見て、再び机の方まで戻るキアレおばさんとノエル、あとおっさん。


「ベネッタちゃん大丈夫かねえ。早く治るといいんだけど」


「そうだね、あのさ、お母さんのために何かできるかな?」


「あらあら~、ベネッタちゃんもいい娘に恵まれたもんねぇ~そうね、そんなノエルちゃんにおばあちゃんの知恵袋」


 いちいち言い方が回りくどいな。だいたいあんたノエルのおばあちゃんじゃないだろうに。


「私が子供の頃、お腹を壊したときには母さんがエシャロ草かゆを作ってくれたものよ。あれさえ食べれば次の日にはもう元気ピンピンさね」


「わかった。朝の仕事が終わったらエシャロ草買ってくるね!」


 聞いた感じ民間療法っぽいんだけど、大丈夫かなあ……ネギを首に巻いていた生前のじいちゃんをふと思い出した。

 まあ、お腹を壊した人におかゆを与えるのは間違った判断ではないだろう。ちゃんと看病してくれる人がいれば、治るまでにそれほど時間もかからないはずだ。

 そこからはキアレおばさんのエシャロ草談義が始まり、ノエルが合間合間にうなずくだけとなっていた。



 ……おかみさん、遅いなあ。

 朝食をとっくに食べ終わったのに、おかみさんがまだ帰ってこない。

 ノエルも不安になったのか、朝食の片付けに手がつかないみたいだ。


「キアレさん、ちょっとお母さんの様子見てきます」


「ああ、構わないよ。片付けはこっちでやっておくから」


「ポルカくんも一緒にくる?」


『ピンポン♪』


 あのおかみさんに滅多なことはないと思うが、なかなか帰ってこない今の状況は心配だ。

 おかみさんの行き先と思われる場所へと、2人で向かうことにすることにしよう。



キアレおばさんの家から最寄りの公衆トイレが目に入ったところで、少し驚くとともに、おかみさんがなかなか帰ってこなかったことに納得がいった。


「おい、まだ空かないのかよ!」


「すみません今でます!」


「ちょっとおま、横入りすんじゃねえよ!」


 めっちゃ混んでるのだ。

 真夏の海のトイレがあんな感じだったなと、前世の懐かしい記憶に思いを馳せてみる。並んでいる当事者にとってはたまったもんじゃないだろうが。

 しかし何があったんだよ。各家庭にトイレがない分、公衆トイレの数は充実しているみたいで、今までにこの世界で公衆トイレに人が並んでいるのを見たことはない。

 どういうことかとよく観察してみると、並んでいる人の多くが、心なしか気分を悪そうにしている。

 いや、まあトイレに並んでいて気分がいい人なんていないだろうけど、そういうことじゃなくて体調が悪そうなのだ。

 冷や汗をダラダラ流しているとか、かなり厚着しているのにガタガタ震えているだとか。

 とりあえず、何か異常事態が起こっているということだけはわかったところで、ちょうどおかみさんが公衆トイレの入り口から出てきた。


「あ、ノエル、どうかしたの?」


「お母さんがなかなか帰ってこなかったから、大丈夫かなって思って」


「ありがとうね。心配かけてごめん」


「私は大丈夫だから、ちゃんと休んで早く元気になってね、お母さん」



 少しの疑問を残しながら、見たことないほど混み合った公衆トイレを後にする。

 おかみさんが変な事故に巻き込まれていない事にはホッとしたけれど、この街に何か良くないことが起きつつあるような気がした。

新年早々、こんな話ですみません……

ミアズマ編のテーマが「感染症」になってて、バトル展開は皆無ですし、汚い話がわりと出てきます。

それでもいいという寛大な心を持った読者の方のみ、この先にお進みください。

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