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夜道の向こう側 ―― Beyond the Night Road ――  作者: 静間 透
第三章 人間の知らない森
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第1話 私は神です。

私は神です。

いきなりこんなことを言われても、困るでしょうね。

ですが、事実です。

私は神です。

もっとも、神といっても、何でもできるわけではありません。

神々の世界にも階級があり、管轄があります。山の神、海の神、火の神、水の神、風の神、雷の神。ほかにも、さまざまな神がいます。

日本だけではありません。外国にも神々はいますし、それぞれに役割があります。

なかには、石油に関わる神もいます。

世界のどこかで戦争が起きれば、石油の供給や価格にも影響が出ます。人間の暮らしも、森の環境も、遠い国の出来事と無関係ではいられません。

もっとも、だからといって、私が石油の値段まで管理しているわけではありません。

私は水の神です。

正確に言えば、山の神も兼務しています。

私の担当区域は、日本支部、宮城県富谷市です。

富谷市にも山はあります。山の神が聞いたら怒るかもしれませんが、山岳地帯と呼ぶには、少々控えめな地形です。

それに、山には水が必要です。

雨が降り、土に染み込み、沢を流れ、池を満たす。山と水は、そう簡単に別々の担当者に任せられるものではありません。

というわけで、私は水と山の兼務です。

もっとも、兼務だからといって、仕事が半分になるわけではありません。

神々の世界も、そのあたりは人間の世界と大差ないようです。

さて。

私が担当している富谷市には、人間たちの暮らす街があります。

住宅が建ち、道路が延び、店が並び、人々が行き交う。

人間たちは、自分たちが暮らす場所をよく知っているつもりでいます。

もちろん、よく知っている場所もあるでしょう。

けれど、人間が知っている世界が、そこにある世界のすべてとは限りません。

人間が道路と呼ぶものを、別の生き物は違うものとして見ているかもしれません。

人間が何もないと思っている場所に、誰かの暮らしがあるかもしれません。

人間が偶然だと思った出来事が、別の生き物にとっては、長いあいだ受け継がれてきた約束の一部だったとしたら。

人間の知らないところにも、世界はあります。

それは、遠い異世界の話ではありません。

人間たちが毎日歩いている道のすぐそば。

木々が茂り、草が伸び、土の匂いが漂う森の中にも、その世界は広がっています。

では、少しだけ、そちらをのぞいてみましょう。

人間の暦で、2023年10月。

秋が深まり、森の空気にも季節の変化が表れ始めたころです。

森には、森の暮らしがあります。

人間たちがまだ知らない、動物たちの世界があるのです。

なお、これからお伝えする動物たちの会話は、私が人間の言葉に翻訳してお伝えします。

動物たちは、人間の言葉で話しているわけではありません。

彼らには彼らの言葉があり、彼らなりの伝え方があります。

その言葉を、皆さんにもわかるようにお伝えしましょう。

それでは、始めましょう。

まずは、一頭の熊の話からです。

その熊にとって、森は暮らしの場であり、道は何度も通ってきた道でした。

しかし、その秋、いつもと同じはずの森に、少しずつ変化が現れ始めていたのです。

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