(四)六接続までの安定
◆ 五 六接続までの安定
実験は六接続に進む。
瀬良は、少しだけ真面目な顔になった。
出力は模擬。
本番ではない。
それでも、空気が変わる。
白鳥は、出力制限札の状態を確認する。
美緒は署名用紙を一枚前へ出す。
黒瀬は、停止札を持ったまま、瀬良の手元ではなく顔を見ていた。
瀬良が苦笑する。
「大げさだな」
黒瀬は答えない。
瀬良も、それ以上は言わなかった。
接続六。
成功。
白鳥のログは、静かだった。
乱れが少ない。
枝も出ている。
だが、枝崩れではない。
透はログを見る。
「……静かですね」
白鳥が頷く。
「はい」
「異常値が少ない、という意味ではありません」
「戻ってくる形が安定しています」
瀬良は不満そうに言った。
「褒めるならもっと酒が進む言い方しろ」
白鳥は即答する。
「飲酒量は評価対象外です」
「つまんねぇな」
透は、ログから目を離せなかった。
六接続がすごいのではない。
いや、すごい。
すごいのは間違いない。
けれど、それ以上に刺さったのは、六接続から何事もなかったように帰ってきたことだった。
瀬良は、模擬術式を終えたあと、普通に署名する。
瀬良義景。
崩れ方は、実験前と同じだった。
美緒は確認する。
「署名異常なし」
白鳥が続ける。
「呼称反応確認」
「瀬良さん」
瀬良が面倒そうに返す。
「あ?」
白鳥は記録する。
「反応正常」
「感じ悪く呼ばれた時の返事まで記録すんな」
「反応が取れれば十分です」
「雑だな」
透は、そのやり取りを聞きながらも、ログを見ていた。
接続六。
成功。
署名異常なし。
呼称反応正常。
枝崩れなし。
できた、ではない。
戻ってきた。
瀬良が、透を見ずに言った。
「約束できる範囲ってのがあるんだよ」
透は顔を上げる。
瀬良は、署名用紙を美緒へ渡しながら続けた。
「できたことがある、じゃ駄目だ」
「次も帰ってくるって言えるかどうかだ」
透は何も言えなかった。
できたことがある。
届いたことがある。
それだけでは足りない。
足りない。
透は、胸の中でその言葉を繰り返す。
でも、すぐに少しだけ引っかかった。
足りない。
本当に、そういう考え方でいいのか。
学校案件の五接続が、頭の隅をかすめる。
旧視聴覚室。
噂の流れ。
黒瀬の大枠。
日野原の指示。
美緒の整理。
篠宮の術具配置。
あれは、自分一人で作った場ではなかった。
けれど、五接続は通った。
透は答えに至らない。
ただ、瀬良の六接続ログと、学校案件の五接続が、頭の中でうまく重ならなかった。
瀬良は、一人で帰ってくる。
自分は、いろんなものに支えられて届いた。
その差が悔しい。
でも、その差をただの不足と呼んでいいのかは、分からなかった。
※第6.5話「瀬良式説明群」は全六回です。
続きます。
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