(二)接続一から五
◆ 三 接続一から五
白鳥は、接続一から順に観測を始めた。
まずは接続一。
瀬良は文句を言いながら、軽く通す。
「こんなの、準備運動にもならねぇぞ」
白鳥は端末を見る。
「接続一。成功」
「署名異常なし」
「呼称反応正常」
「微細反応あり。ただし枝崩れなし」
瀬良が嫌そうに言う。
「いちいち細けぇ」
「細かいものを見る実験です」
接続二。
接続三。
瀬良は隠居している。
酒も飲む。
口も悪い。
八接続は三十年やっていないと言った。
だが、接続一から三の滑らかさは、訓練場の誰とも違っていた。
強いというより、馴染んでいる。
術式が瀬良の体の中で、迷わず通る場所を知っている。
透は、それを見るだけで黙った。
白鳥は、主接続だけでなく、その前後に出る微細反応を拾っていく。
固定の前に、偏向が匂う。
観測の裏に、同調が影だけ入る。
希薄の端に、凝縮が粒だけ残る。
瀬良は言った。
「だから言ったろ」
「使ってる本人も分かんねぇんだよ」
白鳥は端末から目を離さない。
「本人が分からないものほど、観測する価値があります」
「嫌なこと言うなあ」
接続四。
瀬良の肩から、少しだけ力が抜ける。
抜けたように見える。
透には、むしろそこからが本番のように見えた。
術式が一つ増えたというより、前の術式がまだ残っている状態で、次の術式を通す。
それを当たり前のようにやっている。
黒瀬が低く言った。
「見てろ、三枝」
透は返事をした。
「はい」
「出してるところじゃない」
「戻ってくるところを見ろ」
透は息を止めそうになり、慌てて吸い直した。
接続四は終わる。
白鳥のログは静かだった。
> 接続四。
> 成功。
> 署名異常なし。
> 呼称反応正常。
> 枝崩れなし。
接続五。
瀬良は、少しだけ首を鳴らした。
「ここから先は、模擬でも面倒なんだよな」
白鳥が即座に返す。
「面倒な部分を観測します」
「知ってた」
接続五も成功する。
透は、そこで静かに息を呑んだ。
瀬良はそれを、文句を言いながら普通に通している。
白鳥のログも、やはり静かだった。
> 接続五。
> 成功。
> 署名異常なし。
> 呼称反応正常。
> 枝崩れなし。
何かができた、というより。
何も崩れずに戻ってきた、というログだった。
透は、自分の五接続を思い出しかけて、やめる。
学校案件。
旧視聴覚室。
噂の流れ。
観測、固定、偏向、同調、希薄。
通った。
けれど、目の前の接続五とは、静けさが違う。
比べるには、まだ早い気がした。
※第6.5話「瀬良式説明群」は全六回です。
続きます。
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