第7話 すれ違いと、助け舟
こんな親友いたらなぁ…
昨日、話しかけられなかったことを思い出しながら、
俺は通学路を歩いていた。
(今日は……絶対に話しかける)
そう決めて教室に入ると、瀬戸さんはいつも通り静かに座っていた。
本を読んでいる横顔は、相変わらず綺麗で、近づくのに勇気がいる。
でも、今日は逃げない。
タイミングを見計らって、呼吸を整えて──
(よし、今だ)
声を出そうとした、その瞬間。
「おはようございまーす」
担任が教室に入ってきた。
瀬戸さんはそちらへ顔を向け、
俺の声は喉の奥で消えた。
「……はぁ」
小さく肩を落とした俺の後ろで、
春日井がため息をついた。
「お前、ほんとタイミング悪いな……」
ーー
午前の授業は、今日に限って移動教室ばかりだった。
教室から出て、また別の教室へ。
瀬戸さんとすれ違うタイミングはあるのに、
話しかける隙はまったくない。
その姿を遠目から見守る春日井
「今日、運悪すぎだろ……」苦笑しながら言う。
ーー
昼休み。
(今度こそ……)
席を立った瞬間、
瀬戸さんは友達に呼ばれ、そのまま連れて行かれてしまった。
「あ……」
声は出なかった。
「おいおい……」
春がなかなか行かないことに、春日井の苛立ちがピークに迫る。
ーー
放課後。
瀬戸さんは生徒会へ向かう準備をしていた。
俺は意を決して近づこうとする。
(今度こそ……)
けれど──
「今日も生徒会?」
「そう! 新入生が入ってきて色々忙しいの!」と、瀬戸さんは行ってしまう。
また、すれ違った。
「……はぁ」
今日も距離は縮まりそうで縮まらない。
そんな俺を見て、
春日井の表情がついに“限界”に達した。
「春」
「ん?」
「俺の代わりに、新入生の部活加入申請の用紙を生徒会に取りに行ってくれ」
「え、用紙足りないぐらい今年人気なの?」
真顔で返した俺に、春日井は頭を抱えた。
「違うって……」
「そりゃー颯太がいれば県予選突破できるかもしれないもんなぁー!」
「いや、そういう話でもなくてだな……」
春日井は苦笑しながら俺の肩を押した。
「いいから、取りに行けって!」
そして、瀬戸さんの方へ向き直り──
「あ、瀬戸さん! 春に部活の加入用紙渡しといて!」
「えっ」
俺はようやく気づいた。
春日井は意味深な笑顔を浮かべて、
「用紙は明日でいいわ! 土産話もな!」
そう小声で言い残して去っていった。
ーー
瀬戸さんと二人きりに急になったことで、パニックになる余裕すらなく自然体で並ぶことができた。
「……い、行きましょうか」
「そ、そうだね」
教室から出て廊下を歩くたびに緊張感が増してしまう。 歩幅も、呼吸も、ぎこちない。
それでも、ようやく“二人で歩く”時間ができた。
春は
親友の優しさに感謝しつつ、瀬戸さんとのぎこちない会話を楽しんだ。
ーー
その夜。
え〜あいが静かに画面を光らせた。
《瀬戸さん、朝食はご飯派でしたか》と。
こんな親友いたらなぁ…




