10話 瀬戸さんが、いない!(前半)
朝。
最近は、少しだけ起きることに苦を感じない。
朝起きて、準備して、学校に行って、勉強して、家に帰って、ご飯を食べて、寝る。
何も変わっていない。
だけど──少しだけ生活に色をつけてくれた人がいた。
その人は。
教室に入ると、席の一番後ろ、窓から二番目の席にい……ない!
いつもこの時間に読書をしている瀬戸さんが、いない!
教室を少し入ったところで固まってしまい、
周囲や後ろから来た人に変な目で見られてしまう。
なんとか持ち堪えて席に着こうとすると、
仲の良い春日井が教えてくれる。
「今日、瀬戸さん来てないな。体調不良か?」
た、体調不良?!
何があった!
「いや俺に聞かれても!
犬山さんなら知ってるんじゃね?」
と指差す先には、
よく昼休みに瀬戸さんを誘う犬山さん。
犬山さんは、女子の中でも身長が高く170cmぐらいはあるはず。
なぜなら、俺と変わらないから…
おまけに髪はショートで
活発な人でバスケ部として主将を任されている。
成績も良いとは聞いたことがあり、文武両道かつ男女からも好かれる憎い人というイメージがある。
ただ問題は。
「おれ犬山さんと一度も話したことないんだが……」
「そうか、じゃあ聞いてみたら?」
じゃあ?
無理無理無理無理無理無理!
「おーい、犬山さーん!」
春日井が呼ぶせいで、
俺はすぐさま目線を逸らし、窓の外を見る。
呼ばれた犬山さんは「なーに?」と寄ってきて、
春日井から死刑宣告を受ける。
「こいつが聞きたいことあるんだって!」
「ん、あれ、珍しい、どしたの?」
「せ、瀬戸さんって……
今日ど、どうしたの?」
……と聞いた瞬間、犬山さんは『ん?』と顔をする。
(あー、しまった! 単刀直入過ぎて、キモって思われるだろうなぁ)
「あー、なんか微熱が出たとかで、今日はお休みなんだよねー、心配だよねー…」
と、変な勘繰りをしたり、茶化されることもなく、 ふつーつに教えてくれた。
(この人、いい人!! でも憎い!)
ーー
1限、2限、3限……
授業はまったく頭に入らない。
(体調不良って……大丈夫なのかな)
新入生対応で生徒会は忙しい時期だ。
昨日の作業中に気づけなかった自分が情けない。
昼休み、春日井に「大丈夫だって」と言われても、
胸のざわつきは消えなかった。




