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プロローグ

ブラック企業に勤めてる峰小輔が過酷な環境で習得した30分睡眠で異世界でも無双する。

俺は32歳、建築現場で働いている峰小輔。当たり前のように終電を逃し、会社の休憩室で泊まり込む日常と凄まじい残業によって、この十年で「三十分睡眠」で活動できる身体になってしまった。

そして今日、ついに二週間ぶりの帰宅を許された。

(あークソ、死にてぇ……)

いつも思考を放棄したくて、慢性的な軽い自殺願望を抱いて生きている。俺の人生、どこで間違えたんだろう。就活か?

電車が滑り込んできた。

(ここで飛び降りれば楽になるのかな……)

そんな、いつものくだらない妄想をしている間に電車のドアが開いた。ガラガラに空いている席に倒れ込むように座り、自宅までの二十九分間、一旦マイクロスリープを決め込む。少しでも寝たいからな。

「やべ、寝過ぎたか?」

口を開けたまま寝ていたのか、口内がカラカラに乾燥している。

視界がハッキリと慣れるまでに少し時間がかかったが、起きて驚いた。そこは電車の車内ではなく、見慣れない広大な空間だった。そして、黒いフードをかぶった怪しいコスプレ集団のような連中に囲まれている。

「ー☆♪#__,…-,-…|/‘」

何を言っているのかさっぱりわからない。

「すみません、ここがどこだか分かりますか?」

せめて最寄り駅でも教えてもらおうとしたが、黒フードの連中は謎の言語で話し続けるだけだ。すると、後ろから一番偉そうな、いかにも王様みたいな服を着た奴が急に怒鳴り散らしてきた。

「||^]<*~+}}$_%*~€€£」

直後、黒フード集団に両腕を強く掴まれ、そのまま連行された。

「どこに連れて行くんだよ!」

叫んでも完全に無視される。クソッ、早く帰って睡眠をとりたいのに、なんでこんなくだらないコスプレ集団に付き合わなきゃいけないんだ。腰に西洋剣みたいなものを下げている奴もいるし、こいつら働けよ。新手のドッキリか迷惑系配信者かが流行っているが、お前らみたいに暇じゃないんだよ、俺は。

そして、不気味な石で作られた螺旋階段を降りると、無数の鉄格子が並ぶ通路へと連行された。

「〜.,☆☆☆♪♪|!!!!,.」

異様な大声にあちこちから響いている。チラリと覗くと、ベンチプレスを延々と上げ続けながら叫んでいるマッチョなおじさんや、髪の毛をピンクに染めた中年が棒を素振りしていたりと、それぞれの牢屋で謎の奇行に励んでいた。

ドッキリにしては建物の造りもキャストも凝りすぎている。なんなんだ、ここは。俺はようやく、事の重大さに勘づき始めていた。

通されたのは一番奥の部屋だった。手前の鉄格子の牢屋とは違い、綺麗に削り出された石で囲まれた、窓一つない個室。部屋の中には大きな本棚、頑丈そうな机、そして簡易ベッドが備え付けられていた。

パタン、と重々しい音を立ててドアが閉められた。

明らかに他の連中と対応が違う。

「……一旦落ち着いて考えよう」

電車でマイクロスリープをしていたら、この知らない外国……あるいは、異世界に迷い込んだ。一番現実的なのは『夢』という可能性だが、痛いくらいに頬をつねっても一向に覚める気配がない。

学生時代の成績は常にオール5。高校の教師や友人からも「お前ならT大に行ける」と言われ続けてきたこの俺の頭脳をもってしても、この現状だけは全く理解が追いつかなかった。

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