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ベータだった俺が後天性オメガになったら、幼馴染アルファがもっと過保護になりました  作者: 一ノ瀬麻紀


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06 クリスマスのお泊まり

泰雅(たいが)とのクリスマス、楽しみだな……」


 俺は、卓上カレンダーの赤い印にそっと触れた。テスト勉強は大変だけど、カレンダーの印を見ると元気が出てきた。

 明日はクリスマスイブ。泰雅と一緒に過ごす約束になっている。……しかも、お泊まりだ。

 クリスマスという特別な時間を、恋人の泰雅と二人きりで過ごす。そう考えたら、俺は顔が熱くなってきた。


「泰雅、驚くかな。喜んでくれるかな……」


 机の上のプレゼントの箱を手に取って、俺は泰雅の喜ぶ顔を想像した。



「なぁ、ここ……なんか、すごく高そうなんだけど……」


 案内された個室のふかふかの椅子に座り、俺は小声で尋ねた。

 クリスマスイブに、泰雅が連れてきてくれたのは、ドレスコードが必要なくらいおしゃれなホテルだった。

 普段のデートでは行かないような場所なので、思わずキョロキョロと辺りを見回してしまって、妙に落ち着かなかった。


「大丈夫。圭太(けいた)は気にせず楽しんで」


 そう言って優しく微笑む泰雅の笑顔も、いつもと違うような気がした。

 場違い感半端ない俺と違って、泰雅は場慣れした様子で俺をエスコートしてくれた。流れるような動きに、思わず見惚れてしまった。


 テーブルマナーも知らない俺はドキドキしたけど、料理は小窓から提供されるから、部屋には人が入ってこないと説明を受けた。だから、泰雅に「気にせずいつも通りでいいよ」と言われほっと胸をなでおろした。


「んまっ!」


 運ばれてきた料理を口にした俺は、さっきの緊張などどこへいったのか、思わず素に戻って声を漏らした。

 これがなんという料理なのか全くわからなかったけど、柔らかくてめちゃくちゃ美味しいお肉だった。


 ふと顔を上げると、泰雅がニコニコしながら俺を見つめていた。


「なんだよ、泰雅は食べないのか?」

「食べるよ。でもちょっとだけ、圭太の食べているところを見ていたい」

「んなこと言ってないで、早く食べろよ。めっちゃうまいぞ」


 俺はそう言いながら、再びお肉を口に運んだ。やっぱりうまい。何度でも「んまい!」って声が出てしまう。

 でも、泰雅と特別な時間を過ごしているから、こんなにも美味しく感じるんだと思う。そんな時間を共有できるなんて、なんかすげぇ幸せだなって思った。


 俺たちは他愛もない話をしながら、料理を堪能した。


「今日泊まるのは、この部屋だ」


 食事を終え案内されたのは、ホテルの最上階の部屋だった。

 オメガ対応フロアらしい。これ、ただのオメガフロアじゃないだろ。絶対VIPルームだよな……。

 なんかそわそわと落ち着かない俺を見て、泰雅はふっと微笑んだ。


「圭太、お先にどうぞ」

「ああ、ありがとう」


 泰雅に促され、俺は先に部屋に入った。


「うわぁぁ! すっげー!」


 目の前に広がっていたのは、満天の星空だった。

 夜空一面に敷き詰められたような輝く星たちを見たくて、俺は窓際に走り寄りペタリと張り付いた。


「泰雅、見てみろよ! なんだよこれ、初めて見た!」


 まるで子どものようにはしゃぐ俺とは違い、泰雅はゆっくりと近づいてきて横に並んだ。


「喜んでくれて良かった。いつか一緒に見たいと思ってたんだ」


 今日の泰雅は、同じ歳とは思えない、大人な雰囲気を醸し出していた。所作もかっこいいし、言葉もなんかめちゃくちゃ甘い。

 クリスマスだから、きっとすごく奮発してくれたんだろうな。嬉しいけど、俺たちは高校生だ。ちょっと心配してしまう。


「こんなすごいホテルに、クリスマスに泊まれるなんて嬉しいけど……。大丈夫なのか……?」


 野暮な話をするなと言われてしまいそうだけど、俺は黙っていられず聞いてしまった。


「俺の親父が経営するホテルだから、そんなに気にしなくて大丈夫だ」

「えっ? そうなのか? こんな立派なホテル、すごいな……」


 泰雅があまりにもさらっと言うから、そんなものかと納得しかかったけど、いや普通にすごいだろ。

 まぁ、小学校からの付き合いで、家にも何度も遊びに行っているから、金持ちだろうなとはわかってたけどさ。でも、ホテル経営は知らなかったなぁ。親父さんすごいなぁ。

 俺が目を丸くして泰雅を見ていたら、また嬉しそうに笑った。泰雅がにこにこしているのは、俺も嬉しい。


「両親も、圭太に泊まってもらえるのは嬉しいと言っていた」

「そっか。今度会ったら、ちゃんとお礼しなきゃな。それでさ、めちゃくちゃ良かったって伝えるよ!」


 俺は、そわそわしていた気持ちが、泰雅のおかげでだいぶ落ち着いた気がした。


「乾杯しないか?」

「え。さっき、レストランでしたじゃん」

「夜景をバックに、乾杯したかったんだ」

「そっか。……うん、わかった。乾杯しようぜ!」


 俺に気を使わせないように親父さんのホテルだと暴露したり、普段言わないような言葉で盛り上げようとしてくれたり、泰雅は本当に俺のことをすごく考えてくれてる。


 泰雅は口数少ないし表情もあまり変わらないから、他の人には何考えてるのかわからないとか言われるけど、俺にはわかるんだ。

 今日の泰雅は、最高に嬉しそうだ。だから俺も最高に嬉しい。


 俺たちは、ノンアルのシャンパンをグラスに注ぐと、二人で見つめ合った。


「乾杯」

「かんぱーい」


 いいな。恋人同士って感じがすごくする。

 アルコールは入っていないのに、なんかふわふわと酔っているような気持ちになった。

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