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勝負をもらったアヤトの反応

翌日の昼下がり。

アヤトはいつものようにリナの家で洗濯物を畳んでいた。


三日前まで工場で油まみれで働いていた男が、

今は高校生社長の家で柔軟剤の香りに包まれている。


(……人生、どこでどう狂うか分からん)


そのとき――


ピンポーン。


インターホンが鳴った。


モニターを見ると、

なぜかスーツ姿の女子高校生が5人、整列している。


「……なんだこれ、アイドル勧誘か?」


「違うと思うよ」


背後からリナが顔を出した。

学校が終わったばかりらしい。


玄関を開けると、代表らしき女子生徒が胸を張って叫んだ。


「「「「我ら生徒会は、本日――

 銀条タケル会長からの“勝負状”を持って来た!」」」」


アヤト「……か、勝負状?」


「そうだ!!」


妙に熱いテンションである。


リナは額を押さえ、ため息をついた。


「またアイツ……」


アヤトは差し出された紙を開く。


『貴殿、アヤトに告ぐ。

 1ヶ月後、校内公式試合にて我と勝負せよ。

 その勝敗をもって、リナ・クレスト殿の隣に立つ資格を問う。

           銀条タケル』


アヤト「……………………」


リナ「……その顔。何も理解してないわね?」


アヤト「なんで俺、決闘申し込まれてんの?」


*************


リナは玄関の床にぺたんと座り込み、

“仕方ないわね”と呟いて説明を始める。


「銀条タケルはね、血筋も才能も財力もある生徒会長。

 魔法の才能も高くて、生徒からの支持も絶大よ」


アヤト「へぇ、すごい人なんだな」


「で、そのタケルは昔から――

『リナ・クレストこそ自分の隣に立つ存在』

と思い込んでたの」


アヤト「……それって、つまり」


「大きく言えば婚約願望。

 小さく言えば……所有欲ね」


アヤト「うわー……」


「でも私は興味なかったから距離を置いてたの。

 ところが昨日――私が歩いているのを見て、

 また燃え上がったらしいのよ」


アヤト「いや迷惑すぎるだろそれ」


リナ「そこに、あなたが現れたわけ」


アヤト「?」


「――嫉妬したのよ」


アヤト「へぇーーーーー。

器小さいんだな。きっとあそこも……」


女子生徒たち「「「「「黙れ」」」」」


アヤト「すいませんでした」

(ん、いや待て待て待て)


(銀条タケルって……あの目が笑ってない会長だよな?

あいつと勝負?どこで?なんで?俺なんで?

そもそも魔力ゼロの俺が勝負って何の勝負?

料理?腕相撲?生存競争?)


(いや俺、数日前まで社畜だったぞ!?)


(勝負って……何のこっちゃああああ!!)


玄関前で待っていた生徒会員が丁寧に言った。


「タケル様はおっしゃっていました。

『アヤトの価値を測るため、戦いは避けられない』と」


アヤト「俺、定価いくらなん……?」


生徒会員「さらに、アヤトさんを“守る影の存在”がいるとも」


アヤト「守る影?」


リナ「……クロのことね」(小声)


アヤト「あっ(察し。あのクソ野郎)」


生徒会員「アヤトさんの個人情報が、謎の裏工作で改ざんされていたそうで……

タケル様は“あの男には裏がある”と確信しているようです」


リナ「もちろん、クロの嫌がらせよ」


アヤト「クズめーーーーーー!!!」


リナがアヤトの袖をつまむ。

その表情は真剣だった。


「……アヤト、どうする?」


「どうするって……俺、戦うとか無理だぞ?」


「分かってる。でも……」


リナは言いにくそうに続ける。


「タケルは“あなたの正体”を暴こうとしてる。

 あなたが不死身で、魔石を持ってるってバレたら……

 きっとタケルは利用する」


「…………」


「魔力もないあなたが私の隣にいる。

 タケルにとって、それは許せないことなの。

 彼は“自分より下”を認めない人だから」


アヤト「……なんか、分かる気がする」


リナ「だからこそ、あなたが“ただの人間”として

 タケルに立ち向かう必要がある」


アヤト「いやどう考えても無理だろ!?」


リナ「……でも、逃げたらもっと危険よ」


アヤト「…………」


タケルが笑っていない笑顔で家に来る姿を想像してしまい、

背筋が凍る。


(逃げたら……家に来るのか?

 料理作って、洗濯して、リナとご飯食べて……

 そんな時間に、あいつが割り込む……?)


(…………)


アヤト「……逃げられないのか?」


リナ「逃げれば、追ってくる」


ただそれだけで十分だった。


アヤトは頭を抱えた。


「まぁ、何とかしてやるよ。

 俺はアニメ版のNTRは好きでも、実写のNTRは嫌いだからさ」


リナ「……“NTR”?」


アヤト「絶対に検索するな。本当に頼む」


リナは静かに微笑む。


「……アヤトは、“アヤトのまま”でいいのよ」


その言葉で、アヤトの胸のどこかが少し軽くなった。


女子生徒たちは、2人が雑談している間に静かに帰っていった。


***********


家の奥。

なぜか当然のように居候しているクロが、

冷蔵庫の前でプリンを食べながらスマホを見ていた。


「ん? タケルくん、勝負状出したの?

 へぇ〜〜〜〜……なるほどね」


そして不敵に笑う。


「よし。一ヶ月間、アヤトを“普通の一般人”として鍛えるか」


「……それ、チートの匂いしかしないけど?」


背後からリナがつぶやく。


クロは親指を立てた。


「俺を信じろ。

 アヤトを“普通の強い一般人”に育ててやる」


「意味わかんない! あと私のプリン食べるなー!!」


リナの叫びが家に響きわたった。

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