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アフターストーリー episode1

お待たせいたしました。

アフターストーリーです。



8月下旬。本来ならばまだ夏休みのはずだ。しかし俺は、学校の生徒会室にいる。


なるべく学校にはいかない主義の俺なのだが、今日はどうしても来なければならない事情があった。



それは、、、、



「さぁ!諸君、今日はよく集まってくれた!!」


大声でその場を取り仕切る、女性。



生徒会長である。



今日は、以前から決まっていた、生徒会の始動日なのだ。本来なら、夏休みは会長とか副会長が学校で仕事をして、役員は家で仕事するため学校に来なくていいはずなのに………


夏休み中に収集された……ということは………

そういうことである。



「以前、文化祭の話をしていたが………何故か文化祭がこのままだと間に合わなくなってしまいそうです!」


その言葉に俺は内心でもう反論した。


それ絶対、会長が、文化祭の日時を早めたからだろ。それなのに、夏休みもろくに準備してなかったからだろ。


もう、夏休みはあと5日ほどで終わってしまう。


二学期が始まるとすぐに文化祭準備が開始されるのだが、まず生徒会がまだなんの準備もしていない。


もし間に合わなかったら…………


そう考えると……間に合わせなければ!!という思いが強く込み上げてくる。


これで間に合わなかったらマジで、大ブーイングものだぞ。


もう少しで任期終了なのに、最後の仕事が不甲斐ない結果で終わってしまうことは許されない。


故に、俺は生徒会長の言葉を聞いて、少しの怒りを覚えた。


会長がもうちょっと準備をしていれば………


「あれ?洸夜くん。何か言いたそうだね?」


俺がそんなことを思っていると、鋭い目つきをした生徒会長が睨んでくる。


これは、有無を言わさない気だ。


そのくらい会長は俺に対して威圧をかけてきた。こういう時はほんと会長らしい。


「いえ、なんでもないです……」


と言ったのだが、


「いや、やっぱり何か言いたそうだね?」


会長の威圧感がすごい。もしかしてさっきの思考を読み取られてたか?

いやいや、そんなことは………


「私はいつだって、会長だからね?」


いやぁ………わかるんですね………


なんか俺の周り、心理を読み取るやつ多くないか?

それとも、俺の表情が読み取られやすいのか………


どちらにしてもいいことではないし、状況的にもそんなこと反省している暇でもない。

誤魔化さないとである。


「いえ、マジでなんでもないです。さあ、仕事始めましょ?夏のバイトセールで2倍働きますから、ね?」


そう言うと会長もため息を一つついてから、


「そうだね、たしかにこんなことを言っている暇ではなかった。全く準備してないんだった………いっぱい働いてもらうから、覚悟してね?洸夜くん?」


そう言って彼女は不気味な笑顔を見せる。


しまった………こんなことを言ってしまったばっかりに………


過労で倒れないだろうか………


そんな心配が頭をよぎり、「やっぱり1.5倍で!」と言おうとしたが、会長の威圧といい、視線といい、全ての細胞が俺に言わせまいと活動している気がして、それを許してくれない。


全く、やっぱりこの会長は苦手だ………




「ほらほら、早くプリントを作成してよぉ〜?」


暑い日光が生徒会室を照らしつける中、クーラーがガンガン効いた部屋でパソコンと睨み合いながら黙々と仕事をやっている俺に対して会長が煽り文句を入れた。


「あの、お言葉ですけど、これは別にわざわざ生徒会室でやらなくてもいい資料では?夏休み中、俺のパソコンに送ってくれていたらいやでもしてましたけど?」


「ん〜〜。そうなんだけどね?私が忘れてた」


ダメだこりゃ………よくこんな生徒会長、選挙でうかったなぁ。


「あ〜〜また、酷いこと考えてる」


「いやいや、そんなことないですよ」


油断ならねぇなこの女。


もう、ちょっかいかけられても反応しないようにしよ。


俺はとにかく目の前の仕事を片付けることに専念した。


「あ〜あ。かまってくれなくなった」


「会長の仕事はないんですか?」


「終わったし、あとは役員の皆が終わらせてくれないと私はハンコを押さないし……」


しっかりやることはやっている。だけど、


「終わったんなら他の仕事はないんですか?」


間に合わないから少しは手伝って欲しい。


「他の仕事〜?あるよ?」


「じゃあ、それを……」


「だけど、これはみんなで相談しなきゃいけないから」


「相談ですか?」


「そう、毎年恒例の模擬店のことだよ」


会長がそう言った瞬間に俺は相談の内容がわかった。生徒会で模擬店の種類、店舗数の相談、その他のルールなどを決める会議をしなければならないのだ。


「もう、その相談を先でもいいと思いますけど?」


先に決めたしまった方が資料の作成も色々楽になる。なるべく早めに決めてしまいたい。


「うん、だから会議室を借りたよ?」


「じゃあ、早速」


「ダメ」


「なんでですか?」


「クーラーがまだ付けたばかりで部屋があっつい!」


こどもか!

思わず、ツッコミを入れてしまうところであった。

暑いから、まだ会議したくないとか子供よりもひどい。


誰だこんな生徒会長を選んだやつ。


「だからそれは、学校のみんなだよ?」


あぁ……しっかりわかるんですね。



もうホントに怖いから全て会長に任せよう。それがいい気がする。


「うん、そうだね、じゃあ、15分後会議を始めるから会議室に集まるように!」


会長が生徒会役員全員にそう命令した。


はあ、なんでこんな読まれやすいんだよ。

以前こんな力なかったのに………前は、俺の表情があまり変わらなかったからか?


夏帆と出会ってから感情か豊かになった自覚はある。

もしかしたらそのせいかもしれない。


なんか色々面倒だけど、やっぱり彼女のおかげだな。

改めて、側にいてくれる存在に感謝した瞬間だった。



夕方、日はもうすぐ暮れそうで、最後の力を振り絞るように空をオレンジ色に染めていた。


「いやぁ……今日はたくさん働いたねぇ」


下校道、隣を歩く会長が「うぅ〜ん」と背伸びをしながら、俺にそう言った。


「ホント、過労で倒れるかと思いました」


「あと最低でも4勤だからよろしくね?」


「殺す気ですか?」


「いや、ギリギリを攻める気」


「鬼ですね」


「いや、そんなことはないと思うけどなぁ……」


笑いながら、そういう生徒会長。よかった………冗談らしい。これで真面目な顔して言われたらどうやって逃げようかと考えるところだった。


「でも、働いてもらうよ?」


「はい、分かってます。元はと言えば会長のミスですけど」


「え?ミス?どこが?」


「逆算して始動していればこんなことはならなかったと思いますけど。」


「いやぁ………逆算しても今日からでいいはずだったんだよ。ただ………」


「ただ?」


「私が仕事をしてなかっただけ」


「やる気あります?」


「あるある!アリよりのアリ!」


「ふざけないでください。文化祭が開かなくなったらどうするんですか?」


「あれ〜?洸夜くんがそんなことを言うの?前なんて学校行事なんて死滅しろとか言ってたのに?」


「言った試しがない件について…」


「でも、そんな風に思っていたでしょ?」


「ま、まぁ……」


な、何を言いたいんだ?この会長は、話が全くわからない。


「ふふふ……それはね、洸夜くんが以前と変わったって言いたいんだよ?」


やっぱり、変わっていたのか。


「ほら、その顔。やっぱり表情豊かになったよ。前なんて死んだ煮干しの目だったからね」


「煮干しは煮干しの時点で死んでますよ?」


「ふふふ、例えだよ例え。だけど、洸夜くんが道を踏み外さなくてよかった。」


そう言って、笑顔を見せる会長。

何だかんだちょっかい出したり無理難題言ってきたりしてたけど本当はずっと心配してくれていたのだろうか?


「よぉ〜し!洸夜くんが本気になってるみたいだから、私も本気で頑張ろっ!」


俺がそんなことを考えていると、会長が自分の頬に手をやり、ひとつ喝を入れた。


「洸夜くん。これが……この文化祭がこの期の生徒会メンバーでやる最後の行事。今のメンバーは歴代最高のメンバーが揃ったと私は思っている。日程はかなり厳しいけど、歴代最高の文化祭にしよう!」


と言って手を差し出してきた。これは握手だろうか?


俺も手を差し出してガッチリ握手した。


「俺も最後まで頑張ります。会長が言うように、歴代最高のメンバーです。ぜひ成功させましょう!」


こんな仕事をしない上級職を必死に支えてきたメンバーだ。他に負けるはずがない。


是非成功させてよう。


そして、この期の生徒会メンバーが最高で、最高の生徒会長として、引退をしてもらおう。


俺は、表情に気をつけながら心の中でそう誓った。


文化祭編は3話から5話ほどある予定なのでよろしくお願いします!

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