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64 海水浴





海の家の近くにある更衣室。俺たちはそこで着替えを済ませて、海に向かおうとしていた。


俺は、脱いで下を履くだけなので先に外に出て待っていた。


待つこと数分後、女子更衣室から夏帆が出てきた。


「おまたせ〜〜待った?」


「いや?全然」


「なら、よかった!…………………」


「な、なんだ?」


夏帆がジーッと俺を見つめている。

えっと、あ、そうか……………


「よく似合ってるよ。」


「ホント?」


「ああ、綺麗だ」


「ふふふ……ありがと!」


夏帆のビキニはノンワイヤーでかなり攻めたものだった。

今どきの女子高生………すげぇな。


もうちょっと肌を隠すと思っていただけにこれは本当に驚いた。


「じゃあ、場所もとらないとだしいこ?」


そうやって夏帆が手を差し出す。ビキニの夏帆が夏の太陽の光で輝いていて本当に綺麗だった。

いつもなら緊張しないはずなのに、何故か緊張気味にその手を握り歩く。


さすが有名な海水浴場なだけあって、海水浴しにきた人がたくさんいた。


その中をスタスタと歩く。

砂浜で話し合っていた男子グループは夏帆をみると、「なんだよ……あの女子めちゃくちゃ可愛いじゃん」

とか言いながらこちらをガン見してくる。


やはり、夏帆は可愛いらしい。


「お前……すごいな……男子たちにガン見されてんじゃん」


隣で歩いている夏帆に小さい声でそう言うと、


「人のこと言えないでしょ?」


と夏帆はクスクスと笑いながら言う。


「いや、どう言うことだよ?」


「ほら、後ろの女子たち」


「後ろ?」


そう言って、後ろの方にいる女子グループを見ると、なんか話が盛り上がっている様子だった。


「なんなんだよ……ただ話してるだけだろ?」


「内容盗み聞しちゃったんだけど、洸夜のこと言ってたよ?なにあのイケメン、かっこよとか……」


「はぁ……聞き間違いだろ」


この海岸には、イケメンがたくさんいる。日焼けしてカッコいいやつとか、いっぱい。

前の対決で少し焼けたけどこんな色白、好かれないだろ。


「そんなことないよ?ほら、目の前の女子。」


「は?」


目の前の女子グループの方に目線をやると、目があった。


「さっきからずっと洸夜のこと見てたよ?だからさっきのも……そうじゃないかな?」


「知らないな……聞いてないから。」


「洸夜……」


「うん?」


「カッコいいよ」


「あ、おう……ありがと……」


なんか面と向かって言われると照れくさくなる。

よし、照れを紛らわすため場所探しを頑張ろう。


海水浴場は、すごく混んでいて場所を確保するのも一苦労だったがなんとか空いている場所を見つけて、そこにパラソルとレジャーシート、折りたたみ椅子を置いて、場所を取った。


「ふぅ……場所あってよかったねぇ……」


「ホントだな……まさかここまで混んでるとは……」


夏の海をなめてたぜ………もっと計画的にしとけばよかった。


なんなら、夏帆が来てからすぐ行った方が良かったんじゃないか?

とそんな風にも思った。


「よーやく、準備終わったから、日焼け止めクリーム塗って?」


「え?」


「え?」


まさかのご注文に俺は固まった。


「塗ってこなかったのか?」


「塗って来た方がよかったの?」


「そりゃそうだろ……」


「でも……一人じゃ背中なんて塗れないし………」


「どうせ海入ったら………」


「落ちたらまた塗って貰えばいい。だから塗って?」


どうやら、どう頑張ってでも塗って貰いたいらしい。

でもなぁ………彼女の背中ってなんか緊張するし……


と色々と考えていると、


「私だって、もっと触れてもらいたい………」


ポツリと夏帆がそう言った。


「私、彼女なんだから………もっと触れてほしい………ダメ?」


「い、いいよ………」


そんな風に言われたら断るなんてこと俺にはできなかった。


「じゃあ……」


そう言うと彼女が寝転ぶ。うつ伏せになって俺に日焼け止めクリームを塗ってもらうのを待っている。


「じゃ、じゃあ、塗るからな?」


「う、うん………」


彼女が頷いたのを確認するとクリームを手につけ、彼女の背中に塗る。


「………!!」


彼女の背中に触れた瞬間、彼女が少しビクッとした。


「ど、どうした?」


「い、いや……」


「嫌なのか……?」


「ち、ちがう、そっちの意味じゃない…………少し冷たかっただけ……」


「そ、そうか………」


こんなにぎこちなくクリームを塗るカップルがいるだろうか?


きっと他ならもっとスムーズに塗るはずだ。


しかし、俺たちにはそれができなかった。彼女の手以外、服を通さず触るのは初めてだったから。


ぎこちなく、ゆっくりと彼女の背中に日焼け止めクリームを塗っていく。恥ずかしい気持ちをぐっと抑えて、背中を塗り終わると、


「ん、ありがと………」


と言って彼女が起き上がる。


「ま、前は自分でやるよ………」


そう言って日焼け止めクリームを塗る彼女の方は真っ赤になっていた。

これが日焼けのせいなのか、はたまた照れていたのかそれは俺にはわからなかった。


しかし、俯いて珍しくその間だけは会話がなかった。



日焼け止めクリームを塗り終わった後、早速海に入ろうと思ったのだが、腹が空いていることに気付いた。


スマホを開いてみると時刻は11時55分。


もうお昼の時間だ。


「先にご飯にするか……」


途中コンビニで買った昼ごはんを取り出してそう提案する。


「そうだね。私もお腹すいた」


ちょうど時間帯のお昼ご飯。


俺はコンビニで買ったなめこ蕎麦を開ける。


「いただきます。」


そう言ってから食べてみる。なめこ蕎麦なんて聞いたことなかったから味を疑ったが食べてみたら意外にも美味しい。


「うまいなこれ……」


「え?それ、美味しいの?」


「ああ、美味しいぞ一口いるか?」


そう言ってなめこ蕎麦を夏帆に渡した。


夏帆は俺が使っていた箸をじっと見つめて、


「これって間接キスだよね?」


と少し頰を赤らめながら、そう言う。


「キスしたのに、今更だろ」


「なんでそう言うこと言うの!?恥ずかしい!」


夏帆は恥ずかしがって俺をべしっと叩いた。

いやいや、そっちから提案したのに恥ずかしがるなよ。と言ってやりたいが彼女がすごく可愛いかったのでオーケーです。


夏帆は、少し躊躇った後、箸を握り蕎麦を掴む。


「なめこ箸で掴めないから口つけて食べた方がいいぞ?」


そう言うと、彼女はまた赤くなって、


「洸夜もそうやったの?」


と聞く。


「それ以外食べる方法がないからそうするしかないだろ?それにさっき見てただろ?」


「う、もうこれ間接キスどころか普通のキスじゃん……」


そう言いながらも彼女はなめこ蕎麦を食べる。


「……!おいしい……」


「だろ?意外にイケるだろ?」


「うん………意外にイケる……」


そう言ってから彼女は俺になめこ蕎麦を返した。


「美味しかったんならもっと食べてもいいぞ?」


「それだと洸夜のご飯がなくなる」


「元々そんな食べない方だから問題ないけどな」


「夏は体力奪われるからしっかり食べて。倒れられたら困るし」


「そうだな、確かに夏の暑さは天敵だもんな」


そう言われたのでなめこ蕎麦を食べようとしたのだが、よくよく考えると、


あれ?これ俺もがっつり間接キスじゃね?


そう思ってしまうともう考えようとしても頭から離れてくれない。凄い意識しながら昼食を食べた。



昼食を食べ終わり、さて、これから海に行く!ってところなのだが、急に眠気が襲ってくる。


「やばい………昼食食べたら眠くなってきた」


「横になれば?」


「でも、海が………」


「まだ午後は始まったばかりだよ?問題ない。」


「そうか、じゃあ………少し……」


横になろうとすると、夏帆が「ちょっと待って!」と言った。


「どうしたんだよ?」


と尋ねると、夏帆はこちらに近づいて、


「はい、膝枕」


「え?なんで?」


「寝るんでしょ?」


「そうだけど……」


「なら、膝枕」


「痛くなるぞ?」


「憧れてたから問題なし!」


痛いならやだ!とか言ってくれるのを期待していたのだが、ここまで言われると断れない。

恥ずかしいけど、膝枕するか………


「じゃあ、失礼します……」


「ど、どうぞ………」


横になると頭に柔らかな感触が伝わってくる。彼女の太ももは柔らかかった。

なんか、寝る以前に緊張して寝れなくなってきた。

取り敢えず、目をつぶってみると、俺のおでこを夏帆が優しく撫でる。


「楽しいね……」


「膝枕が?」


彼女が呟いた言葉に対して俺は質問する。


「それもそうだけど、この時間が………」


「時間?」


「うん」


「まだ楽しいことなにもしてないぞ?」


「そんなことないよ?お昼ご飯だってあったじゃん!それに、こんな二人で堂々と一緒に居られることなんてまずなかったし、二人きりで遠出するなんてまずないから………」


「それだけで楽しいのか?」


「うん、とっても!」


「そうか………」


俺は夏帆の膝枕から起き上がった。


「どうしたの?膝枕ダメだった?」


「いや、凄くよかった………」


「じゃあ、どうしたの?」


「海いくか……」


「海?」


「ああ………もっと夏帆と楽しい思い出を作りたくなった。こんな二人だけの遠出なんてそうそうないだろうからな……」


「洸夜………」


「夏帆がまだ嫌だったら無理にとは言わないけど……」


「ううん。大丈夫だよ。いっぱい楽しも?」


そう言うと夏帆は俺の手を引っ張って海に向かっていく。



そのあと俺たちは海で泳いだり、砂浜で遊んだりとても有意義な時間を過ごした。





午後4時。


8月上旬は、1日が長いのでまだ全然日は沈んでいないのだが、そろそろホテルに戻らないといけない時間になった。



俺たちは、更衣室で着替えてホテルに戻った。


道中は相変わらず暑く、少し汗をかいてしまった。

早くホテルのシャワーを浴びたい。


そう思いながら、来た道を戻りホテルに戻った。


「いらっしゃいま………おかえりなさいませ西条様」


ホテルに戻ると先ほどのフロントマンさんが出迎えてくれた。


「すみませんでした……」


「いえいえ、どうやら有意義な時間を過ごせた様子で何よりでございます」


フロントマンさんはにっこりと笑う。

どうやら、フロントマンさんにはなんでもお見通しらしい。


「では、お部屋をご案内致します」


そう言って五階に案内された。


その階から見る眺めは最高で、海がとても綺麗であった。


「では、こちらの部屋になります……」


そう言ってフロントマンさんは、鍵を一つ俺に渡した。


「え?一つですか?」


「お客様からは、一部屋分しかご予約を承っておりませんが………」


振り返ると、彼女は目をそらす。


「では、ごゆっくり……」


そう言うと、フロントマンさんはその場を後にした。


いやいや、嘘だろ?


流石に同部屋はマズくないか?


「夏帆………」


「し、仕方ないじゃん!一部屋しか取れなかったんだから!今日は仕方ないよっ!な、なに!?ダメなの?」


「いや、ダメじゃないです……」


「じゃあ、問題なし!早速部屋を見てみよ?」


どうやら、彼女と同じ部屋で俺は夜を越さなければならないようだ。

俺が大丈夫だろうか………少し心配だ。

この作品も残り5話となりました。

まだ忙しく毎日投稿はできませんが、残り3話からは毎日投稿をして完結させたいと思っております。


最後までお付き合い頂けると、幸いです。

よろしくお願いします。

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