65 二人で…………
「うわぁ………このお部屋最高だね〜〜」
部屋に入ると、目の前に見えてきたのは、綺麗な景色。部屋の家具もとてもいいのだが、一番最初に目に入ってきたのは、窓から見える綺麗な海の眺めだった。
夕日が段々と沈んでいて、それを写した海はオレンジ色に染まりとても綺麗だった。
俺はキャリーケースを一旦置いて、窓に向かう。
「すげぇな………」
無意識にぽろっと言葉が出た。
「うん。凄くキレイ………」
隣で夏帆も景色を眺めながら頷いた。
こんな綺麗な眺めを堪能できる………しかも彼女と、こんなに有意義な時間を過ごして何かバチが当たるのではないか、そう思ってしまうほど幸せな時間だった。
取り敢えず、海に入った後かるくシャワーを浴びたとはいえ、まだ少しベタベタしているので、部屋についている風呂で流すことにした。
ここでの順番は、もちろん夏帆から。レディーファーストを忘れない。これ重要ね。
「夏帆、先にシャワー浴びてきていいぞ?」
「え?洸夜が先でいいけど?」
「こういうのはレディーファーストだろ?」
「え?それ、普通は女子の方が「レディーファーストだからっ!」って言うもんじゃないの?男子の方からなんて稀だね……」
「え?そういうもの?」
「そうだとおもうけど………」
な、なんだよ……
別に紳士だからいいだろ。
卑猥なことなんて考えてないし………普通はこういうの女子が先にするもんだから別に………
そんなことを心の中でぶつぶつ言っていると、
「じゃ、じゃあ、、も、もういっそのこと、一緒に入っちゃう?」
「……………………聞き間違いかなぁ」
かなり顔を赤く染めて言う夏帆だが、きっと聞き間違いに違いない。
俺、病気かなぁ………
「も、もういっそのこと、一緒に入っちゃう?」
「………………………ヤベェ……俺、きっと疲れたんだ」
夏帆は一回深呼吸してから、何事もなかったかのように言うが、
俺疲れたんだろうな………
「こ、洸夜、一緒に、お風呂はいろ?」
ああ、もうここまで言われたら現実だよな………
彼女の頰は真っ赤に染まっていた。恥じらいながらも話している姿を見てしまったら受け止めざるを得なくなる。
「なんでか、聞いていいか?」
「………だって付き合っているから」
「段階を駆け上がりすぎだろ?まだ恋のABCでAのカップルがいきなりC相当のことをしてどうするんだよ?」
「え、ダメかなぁ……」
「こういうのはしっかりしよう。お互いのために……」
「お互いのため………わかった」
そういうと、夏帆は脱衣所に向かっていく。
「ねえ、どうしてもなら覗いていいけど覗いちゃダメだからね!」
「結局どっちだよ………」
なんか、よくわからない感じで夏帆は脱衣所に入っていった。
あんなことを言ったり、なんか今日の夏帆はやけに積極的であった。
何故だろうか………少しの疑問が俺の心に残った。
○
「う、これ、おいしぃ……」
二人ともシャワーを浴び終わった後に、ご飯の時間になり、ホテル自慢の料理がテーブルに並べられた。
港町ということもあり、魚介類が多いのだが………
伊勢海老とか…………
俺、お金払えますかねぇ………
あまりにも高級な料理が並び過ぎているのだ。急に心配になった俺は夏帆に尋ねる。
「か、夏帆………俺、ちゃんと帰れるよな?」
「え、帰れるとおもうけど………どうしたの?」
「い、いや、伊勢海老って、しかもふぐ刺し………」
「港町だからでしょ………サイト見たときは払える価格だったよ?」
「そ、そうか……なら……」
「もしダメだったときは私がお金貸してあげるから!」
「それ、最悪のパターンじゃん………」
彼女にお金を借りるなんて、そんなことできるわけがない………もう食べてるのでこれ以上頑張りようもないのだが、とにかく一円でも安くあってくれと祈るばかりであった。
その後はしっかりと夕食を楽しんだ。久々に食べる高級食品は、やはり美味しくて、幸せでなんかバチが当たりそうで怖くなるほど最高な時間だった。
○
夕食後、もう一度、風呂に入り寝巻きに着替えた後、俺たちは窓に広がる夜景を眺めていた。
あまり都会でないために街灯はポツポツとしかなくて、普段の景色と全然違うから何かと新鮮だった。
夜も深まり、午後10時、明日もこの港町を楽しむ。だから、俺たちは就寝することにした。バイトも勉強も何もなく、この時間に寝れるのなんて5年ぶりかそのくらいだった。
お互いそれぞれのベットに入って、明かりを消す。今日は、海で遊んだり、本当に楽しい一日だった。
彼女が隣にいるだけで、何倍も楽しくなる。それが実感できた一日だった。
だんだんとウトウトしてきていたのだが、ふと、音がした。
そして、数秒後………
俺の布団が動いた。
原因はもうわかっている。
「夏帆、どうしたんだ?」
「あ、えっと、いや…………」
「さっきもあんなこと言ってたし……やっぱりなんかあるんじゃないか?」
すると、夏帆は黙り込む。近距離に、しかも同じ布団の中で横になっている彼女の姿を見ると、なんだが、恥ずかしいというか、よくわからない気持ちになった。
しばらくして、彼女が口を開く。
「もう、ちょっと距離を縮めたい…………」
これが彼女がやけに積極的だった理由か………
「俺たち、そんなに距離があったか?」
「ううん………私は、別に、ただ夢葉たちが………色々聞いてくるから………」
「色々?」
「うん、どうだった?とか……」
なるほど、それでか………
「夏帆はどう思う?」
「私は、別にそこまで…………いや、やっぱり、もうちょっとイチャイチャだってしたい…………まだしたことなんてキスの一回くらいだし………」
これが彼女の本心。
彼女はもうちょっと、くっつきたかったのか……
それを聞いて、わからなかったのが少し悔しかったが、俺にも考えがある。
「別に俺だって、夏帆とずっと側にいたいし、触れていたい………けど、大事な彼女だからはやまったことはしたくない」
俺も自分の本心を伝えた。近年は、もうCまで到達するのに、はやい人だと三週間だって人もいる。
俺たちは付き合ってからまだ一か月。これがもっと長い年月で、二人とものことが全て理解できてもう揺るぎない覚悟があるのならいい。
けど、はやまって良くない方向に進むのは嫌だった。
だから俺は彼女を大切にしていたのだが…………
そういうことに感じては逆に距離ができていたのかもしれない。
「大切だから…………別に、身体に興味がないとかじゃなくて?」
「ああ、付き合っているんだから、興味があるに決まってる。だけど、それ以上に大切にしたい。どっちともの親族に紹介するまで、最低限はそれを越えてからだ」
まだ、祖母たちにも………身内の誰にもこのことを伝えていないのだ。
それなのに、そんな無責任なことはできない。
「うん、わかった………洸夜が大切に思ってくれること嬉しい」
彼女は喜んでいた。
けど、内心は期待していたはずである。あんなことを言ったり、ベットの中にわざわざ潜り込んだりするんだから。
それに、俺も夏帆が近距離にいて、かなりヤバかった。
「夏帆、キスするか………」
突発的にその言葉が飛び出した。
「え、いいよ?」
自分でも何言ってんだ?と思ったが、夏帆は即答でオッケー。
もう、後戻りできない。
夏帆はもう既に目を閉じている。
俺は緊張しながら、彼女の唇に自分の唇を重ねた。
夏帆とのファーストキスよりかは長い時間であった気がする。
お互いに慣れないなりにも頑張っていた。
ことを終えてから、彼女の顔を見つめると本当に真っ赤になっていて、凄く恥ずかしがっていた。
「よ、よし。じゃあ寝るか!」
強引に雰囲気を変えようとした。
「うん、そうだね」
夏帆も賛成する。しかし、ベットから出ていくと思いきや、彼女は俺の腕をがっちり掴んで離さない。
「え?なんで?」
「一緒に寝る」
「暑いぞ?」
「じゃあ、クーラーつければいいじゃん」
と言ってリモコンをぽちっと押して、「これでどう?」と聞いてくる。
もうダメらしい。
再び、俺のベットに入った夏帆は、
「明日も楽しみだね?」
と、楽しそうな声で話す。
「俺まだ、明日何するか聞いてないんだけど……」
毎度のことながら、説明くらいあってもいいと思う。
「え〜、お土産買うんだよ。」
「お土産か?」
「うん、おばあちゃんに」
「そうか、じゃあ俺は魚でも……」
「それはやめて」
「なんでだ?」
「腐っちゃうよ」
「すぐ帰れば問題ないと思うけど………」
「明日は夜遅くなるよ?」
「なんでだよ?」
「だって、明日はこの海岸で花火大会があるから」
もうなんでもなんでも初耳だ。
まさかの、花火大会。どんだけイベントあるんだ。
この旅行。
新連載候補の短編、第二弾を投稿しました。
そちらも見て頂けると嬉しいです!




