32 テスト週間
放課後、いつもの喫茶店の前で待ち合わせをしていた。しかしもう店内には入らない。
10分くらい待つと、夏帆が到着した。俺より一本遅い電車でのご到着だ。
さて、夏帆にあのことについて尋ねようと思っていたのだが、彼女の方から話しかけてきた。
「えっと………なんか、すごいことになったね」
少し困った様子で俺に話しかけてきた。
まあ、困ってるのは俺もなんだがな。
だって、人数増えた上に、日にちと場所も勝手に決められたからな。しかし、夏帆にも考えがあるのかもしれない。だから俺は尋ねることにした。
「いつ、アイツらと遊ぶ約束を?……」
「えっとねぇ………昨日かな……」
「かなり最近だな」
「うん………ごめん」
「いや、別に責めてるわけじゃないけど………」
「私、洸夜のこと全然話さなかったから心配してくれたのかも……」
「いい友達だな……」
俺は純粋にそう思った。その為に友達の彼氏と遊ぶのはちょっと違う気がするが友達思いのいいやつなのかもしれない。
「う、うん……ありがと……でも、昨日のうちに私が洸夜に伝えておけば……」
「まあ、昨日は色々あったし、仕方ないだろ。」
「だけど………」
「俺はそれよりもなんで28日にしたのか気になったぞ」
「え?洸夜がその日空いてるって………」
「え?」
「え?」
しばらく沈黙が流れた。
「もしかして………違った?」
少しの沈黙の後、夏帆が恐る恐る尋ねてきた。
「ま、まあ、別に予定は今からでも調整できるけど………」
「もしかして、バイトとか?」
「それだけじゃないけど、入れ替えればなんとか……」
「ごめん!洸夜が28のところシャーペンでトントンしてるからその日なら大丈夫かと思って……」
あれ?そうなのか?
これって、まさかの俺が元凶?全然気付かなかったけど、とてつもなく28トントンしてたけど、それと勘違いして……
「ああ、悪い……途中から話聞いてなかった……」
「あ、そっか。盗み聞き継続してるかと思ったらしてなかったんだ……」
言い方……ナイフのように鋭いんだが……
ごくたまナイフをやめてほしい。
「まあ、28はなんとかするとして、棚山とかなんで呼んだんだ?」
これは、俺が一番気になることだ。棚山の印象とか、最悪だ。いじめてくるし、暴言吐くし、絡んでくるし………とにかく、嫌い。
「棚山とかも古くからの付き合いだしね?何かと執着心があるから………多分断ったら無理矢理付いてきそうだし……」
「ストーカーで訴えれるから寧ろ得では?」
「さすがに、まだそんなことはしないよ。」
「いずれするかもしれないんだな………」
棚山は、訴えられる前になんとかしなければ……
俺は密かにそう決心した。
それと、ここで話そうと思っていたことがもう一つある。それは、テスト週間中の老人ホーム通いだ。
昨日、ばあちゃんにその事を話したらその期間だけは来なくていいと言っていた。
無理矢理、来させて成績が下がったら元も子もないからである。
だから今日、この時間に夏帆に伝えようと思っていた。
「このテスト週間の老人ホームなんだが……」
「え?なに?どうしたの?」
彼女はこちらを向いて、俺の話に耳を傾ける。
「ばあちゃんたちからテスト週間は、無理に来なくていいと言われたから今日で最後にしたい……」
「え?テスト週間中はもう行かないの?おばあちゃんたちは許可してくれたの?」
「ああ、昨日話して、許可してもらえた。成績を上げる方が大切だから……」
「わかった、じゃあテスト週間中は今日で最後にしよ」
「おう……」
「だけどさ、折角いつもより勉強時間があるから絶対に成績上げないとだよね」
「まあ、そうだな……」
「洸夜っていっつもどれくらい点数とってるの?」
「五教科で、469だった。」
「バケモノだ……」
夏帆は、驚いて若干後ずさりをする。褒められているのか、気持ち悪がられているのか、引かれているのかわからない………
だが、俺も寝る間を惜しんで勉強しているから点数を取れているだけ。
どこぞの勉強しなくてもいつもオール100とる女とは違う。
「じゃあさ、提案なんだけど明日私の家にこない?」
ふと、夏帆がそんなことを言った。
え?なんで?
驚いて彼女の方を見てみると、恥ずかしがっているのか顔が赤く染まっている。
「なんで………」
俺がそう答えると、
「ほら、私、洸夜よりも頭悪いから!教えて欲しいの!360くらいしか取れてないから!」
「十分取れてるんじゃ………」
「いいから!今日メールで時間と家の場所教えるから明日の放課後絶対来てね!」
「……はい」
俺は勢いに負け思わず頷いてしまった。なんかすごい約束したな………
俺、教えるの下手なんだけど……大丈夫か?
そう言えば、女子の部屋だな。
なんか、不安材料だらけだな。
俺は、色々な意味で不安になった。
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