31 厄介な約束
新章開幕。
よろしくお願いします。
20万PVありがとうございます。
翌日
昨日のことがあったからと言って、学校での雰囲気は、変わらない。
登校してすぐに棚山ほかトリマキ数名に囲まれて散々愚痴を言われた。
よかったのは、テスト週間の印象が強過ぎて、美月さんとのあの話題が完全に忘れられていたところだ。
生徒会の批判などこれが初めてではない。だから、念仏のようにグチグチネチネチ言われても仏の顔をするだけでいいのだ。
今更批判や文句を言ったところで、生徒会の決定事項なので、そうそう覆ることはない。
覆るとしたら全校生徒の七割の署名が必要である。
社会的には終わっているが、高校なのでそんなことは知らない。それだけ生徒会の力は強大だということだ。
そういう事なので適当に相槌をうって退場してもらった。熱しやすいけど冷めやすいとはこんなにいいものだとは………
どうやら棚山たちも暇人じゃないらしい。
テストで平均40点なら無理もないか………
せっかくいつもよりも多く時間を確保したのだから活用して欲しい。
俺は、去っていく棚山に「頑張れ」とだけ思っておいた。思うのは自由だから気持ち悪がられない。
それに、俺もこんな無駄愚痴をうけるくらいなら今回だけでこんな企画終わらせたいのだ。
目指せ、全教科平均50点以上。
会長が掲げた目標を是非ともクリアしたい。少しでも貢献できるように………いや、俺より成績がいいやつをぶっ潰す為に俺も精進しよう。
午前の授業中は、授業の内容を聞かずにひたすら自分の勉強をしていた。
昼休み
四限終了なチャイムが鳴ると、俺は、すぐに教科書を閉じて、弁当を取り出した。
別に飢えていたわけではない。
さっさと昼飯を食べ勉強しようと思っていたのだ。俺は、二宮金次郎のようにながら見は出来ない。以前それをやって、膝の上にアツアツの大根を落として以来トラウマだ。
今でもおでんは少し怖い。食べ物にあれほど恐怖を抱いたのは初めてだった。
箸を持ちおかずを口に運ぶ。今日はきんぴらごぼうにほうれん草のお浸し。卵焼きだ。
質素倹約。確か江戸幕府の八代将軍徳川吉宗がそんなことを言っていた気がする。
なんて素晴らしい単語だ。紀州藩は有望な人材が多くいたんだなぁ……徳川御三家素晴らしいと尊敬してしまう。
そうやって、急いで弁当の中身を口に入れていると、隣からまたもやガールズトークが。
運の悪いことに連日らしい。
そして、話題も最悪な話題であった。
「そういえば昨日言ったやつ覚えてるぅ?」
「え?昨日?」
「そーそー!」
「えっと………どれだったっけ………」
「えーー忘れたの!?」
「夏帆の彼氏と遊ぶ話だよ!!」
夢葉がそう言った瞬間、俺は口の中のご飯が飛び出そうになった。別に意図的に出そうとした訳ではない。
少しむせたが踏ん張った。
お陰で前の人が俺のアミラーゼ入りご飯の被害を受けることはなかった。
一安心だが………いつそんな約束したんだ?
俺は全く聞いていない。初耳だった。
「あ、それね…………うん、覚えてる……」
なるほど……覚えてるらしい。
「じゃあさ、遊べるって?」
「いや、えーっと………それは……」
歯切れが悪い。目線だけ夏帆の方を見てみると、思いっきり夢葉たちと目線を逸らしてる夏帆と目があった。
彼女の瞳が何を訴えかけているか、すごく分かる。
ピンチですよね。わかります。
少し、予想外の出来事だったが、まあ多分大丈夫だろう。それに、あの女二人ならなんとかやり過ごせそうだ。
俺は、そう思い頷いた。
それを見た夏帆は、光の速さ並みに目線を夢葉たちのところに戻して、
「うん!いけるよ!」
と元気よく言う。
さっきの歯切れの悪さは何処へ?
俺がそう問いたくなるほど、素晴らしい目線戻しだった。
さすがじぇーけーだ。
おっと、そんなことを考えている暇ではなかった。
俺は急いで弁当を食べ終えさっさと片付けた。
再び教科書を開いて、数学の勉強を行なっていると、
「じゃ、じゃあさ!!いつにする?」
「彼氏さんは、いつイイって言ってた?」
「えーと………それはね……」
夏帆は再度歯切れが悪くなる。
しかし、俺は勉強に集中していて、それに気付かなかった。
えーと。これは、28にこうして………その次に?
あーなって、こうなるのか?
教科書の28をシャーペンでトントンしながら必死に答えを出していた。当然周りの声なんて聞いてない。
すると、
「そ、そうだ!!28ならイイって言ってた!!」
う〜ん。あ、いや、そうじゃないな。
あれ?でもこれでもいいのか?
「今月の28?」
「そうそう、日曜日ね。」
あ!もしかしてこれか?
「まじ?じゃあ、予定あけておこっと……」
よしゃァァァッ。できた。ようやくできた………
「楽しみだなぁ………やっと、夏帆の彼氏さん紹介してもらえる……」
「そうだよ。ウチら親友なんだから、ちゃんと紹介しなさいよ」
教科書を閉じて、問題から解放されると、
あの二人があんなことを言ってる。夏帆は愛されてるんだな。
それに、まだその内容で話せるとか、すごいな……
俺は、三人を尊敬していると、
「じゃあ、今度の28だけど、集合はどうする?」
…………え?
なんのことだ?
「やっぱ、近場?彼氏さんどこから来んの?」
え?いやいや、ちょい待て?なんだそれ?
聞いてないぞ。うん、俺は聞いてない。
「えーと、割と近場かな?」
夏帆はどんどん答えていく。
待て、俺が追いつけてない。
「そっかー!じゃあ、いつもの駅でよくね?」
「うん、それな!」
「了解、じゃあ、伝えとく」
三人とも納得しているが、………なんだそれ?
いつもの駅ってどこよ?教えて?
いつの間にやら、行く日にち、集合場所が、勝手に決定していた。
ガラガラガラ
「よぉ〜!三人ともそんな盛り上がってどうしたん?」
運悪く教室に入ってきたのは、棚山率いるTHE陽キャメンバー。
「あ〜、棚山じゃん。あのね、夏帆の彼氏と遊ぶ約束してたんだぁ〜」
「彼氏と遊ぶ?」
「うん、今度の28」
「へぇ〜〜」
「夏帆の彼氏さん、めちゃカッコいいんだよぉ〜」
「そうなのか………」
「ねぇ?夏帆?」
「う、うん………」
顔を赤らめながら恥ずかしそうに頷く夏帆。そして、ちらっと目線だけこちらに向けてきた。
やめてくれ。なんだかこっちまで恥ずかしくなってきた。それを紛らわせるために、俺は再び教科書を読み始める。
すると、
「あのさ、俺も行っていいか?」
棚山がそう言った。
え?ちょっと、俺の聞き間違いか?
ありえない言葉が聞こえた気がするんだが……
「………え?」
思わず固まってしまう夏帆。しかし、棚山は
「俺も夏帆の彼氏とやらを見てみたいんだ。ほら、俺たち昔からの馴染みだろ?」
聞いたところによると、彼らは中学時代から一緒だったらしい。
でも、女友達の彼氏と一緒に遊ぶとか、頭大丈夫か?
と気になったが言わない。女子が言うならならまだわかる。
だけど、男って………思わず疑ってしまう。
「いいよ?」
ふと夏帆がそう言った。
え?マジスカ………。
俺は、一瞬思考が停止した。まさかだったのだ。まさか了承するとは、思わなかった。
当日は、かなり面倒になりそうだ。
これは、あとで夏帆に聞く必要があるな。俺は今日の老人ホームまでの道で彼女の思惑を聞くことを決心した。
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