第十二章 隆平
あいつら、ちゃんとおしゃれしてくるかな。
もうすでに公園の噴水前に待っていた俺は、風が少し冷たく感じ、ポケットに手を入れた。まだ九月の初めごろなのに。
今は十時五十分。そろそろあいつらも来るころか。と、秋らしいファッションのメガネ男子がやってきた。森沢だ。レースのスカーフが風になびいて、カジュアルなファッションともともとイケている森沢をさらに際立たせている。
「森沢ー」
「やあ……」
森沢はメガネをさっと整える仕草をしながら、いつものようにゆったり答えた。
「もう来ていたのかい。早いな」
「あぁ。今は十時五十五分くらいだ。お前は必ず五分前には指定された場所に来る男だからな」
俺がにやっとして言うと森沢は、
「前よりだいぶん賢くなったな」
とそれだけ言い、同じようにポケットに手を入れ、少し遠くを見つめるように、横を向いた。
なかなかイケてるぜ、森沢?
そろそろ佐奈恵も来るはず。
そう思っていると、十一時の鐘が鳴った。
「まだ来ないのか、あの子は」
森沢が珍しく感情を顔に出しているようで、どこか不安気に見えた。
「もう少しで来るだろうよ」
五分が経った。すると、
「長野さーん!」
と、佐奈恵が手を振りながらこっちへ走ってきた。
「遅れてごめんなさい! 服とか選ぶのに、徹夜してて、寝坊しちゃったんです。あれっ?」
申し訳なさそうに言い訳する佐奈恵を、なんだか優しげな眼差しで見ていた森沢に、佐奈恵はやっと気が付いた。
「森沢さんも、一緒なんですか?」
「あ、あぁ……」
佐奈恵に自分の名前を呼ばれ、森沢は少し赤くなりながらも答えた。
「じゃあ今日はよろしくお願いします。さっ、行きましょ!」
佐奈恵はそう言ってにこっと笑い、俺の手を少し強引に引いた。思わずドキッとしてしまったが、あえて何も言わない。隣の友人の、少し嫉妬気味の顔がおもしろくて、そのまま観察してみたかった。こいつは今まで、滅多に感情など顔に出さなかったからな。




