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【じんぶつしょうかい】

・勇者…異世界人。華奢な身体付きが悩み。

・魔人…護衛兼案内人。小さい胸が悩み。

・使い魔…狼もどき。犬に間違えられるのが悩み。


・村長…ゲス。

・村人A…スケベ。

・村人B…短慮。

・村人C…気が小さい。


・夫人…絶対君主(笑)。

・婦人会の皆様…夫に鉄槌(物理)を下す女傑たち。

【恨み、辛み、いいたいことはただあるようだが】


村長「首尾はどうだ?」

村人A「(魔人を下ろしつつ)えぇ、上々です!」

村人B「鎧と妙な服はこっちに(麻袋を下ろす)」

村人C「ただ、剣は見当たりませんでした!」


村長「剣はおしいが、まあいい。それで、勇者様はどうした?」

村人A「ぐっすりでしたよ(ニヤリ)」

村人B「何にも知らずに、ねぇ(ニヤニヤ)」

村人C「しかし、起きて彼女や鎧がないことに気付いたら…(オドオド)」


村人A「何いってんだ、大丈夫に決まってるだろっ!」

村人B「他の奴らに山に捨てさせたんだから、ここには戻ってこれないさ」

村長「国にもバレるわけがない。だいたい、国がしっかりしていればこんなことにはならなかったんだ…っ!」

村人A「そうだそうだ!田舎だと思って、ろくに対策を立ててくれない国が悪いんだ!おかげで、若いのは全員、ここを捨てて出て行っちまった!」

村人B「もう少し住みやすけりゃ、女房が子ども連れて出て行くこともなかったのにっ!(悔しそうな表情)」

村人C「(ボソボソ)それは違うような…」

村人A「お前だって、年頃の女がいないから、いつまでも結婚出来ないんだっ!」

村人C「それはほっといて!」


村人A「オレたちがこんなに困ってるのに、あの小僧は良い鎧、良い剣を持って暢気にしているし…」

村人B「女も一緒で鼻の下は伸ばしっぱなしで、良いご身分だよな!」

村人C「確かに、若い娘連れての旅はどうかと…(コメントがズレている)」


村長「兎に角!我々は困っているのだから、富んでいる者が施すのは当たり前だ」


魔人「ハッ、何を自分らに都合のいいようにいっているんだ?」

村長「誰だっ!」


魔人「(ボソッ)誰だも何も、消去法で考えろよ」

村長「何っ!いつの間に、気が付いていたっ!?」


魔人「(気を取り直し)何が施しだ。本人の了承もナシに物を盗るのは、窃盗というんだ。ボクに至っては、誘拐と監禁。こっちも十分、刑罰が発生する犯罪行為だ(バーン!)」


村人C「縛られていながら、自信満々にいわれても」

魔人「これはキミらのせいだろう…っ!(イラッ)」




【そういう短慮なとこが、奥さんはイヤだったんじゃ…】


村長「はてさて、何のことやら(視線が泳いでいる)」

魔人「証拠は揃っている。そもそも、今のボクの状態が証拠だっ!」


村人B「何の証拠だっていうんだっ!畑を耕す手も、山の奥まで入れる程の体力を持つ若い奴らはみんな、田舎が嫌で出て行った!若い娘らも、煌びやかな都に釣られて着いて行って帰って来ない!若い働き手がいないのに、国からの補償も何もないのに、どうやって生活すればいいんだっ!こんな状況で、家族で出て行くのも出て来る始末」

村人A「ちょ、まっ」


村人B「こんなひでぇ状態なんだ、持ってる奴から盗って何が悪い。ドラゴンがいるなんて、被害がないのに騙される方がどうかしてる!だいたい、勇者様なんて呼ばれていそいそと何もない村に入って、何の警戒もしないで出されたもの食ってどうすんだ。おかげで、首尾良く睡眠薬盛れたが」


魔人「説明乙!」

村長「馬鹿者があぁぁっ!!」




【嫁不足も深刻】


村長「…くっ、ここまで知られて放置は出来ない」

魔人「そっちが勝手に喋ったんだよ」

村長「かくなる上は!」

魔人「聞いてないし」


村人A「そっ、村長よぉ。この娘は売りに出すんじゃねぇのかよ?」

村人C「さすがに、殺しちゃうのは……」

村長「むっ、確かに勿体ないな」

魔人「うわ~、嫌な損得勘定。そもそもボクはボク自身のものなんだけど」


村長「この後に及んで、よく回る口だ。これでは、売られた先で、何をいうかわからないな」

村人A「おっ、ならここで監視するってのはどうっスか?」

村人B「監視だぁ?」

村人A「勿論、ただじゃねぇよ。嫁不足なんだから、嫁として希望者のとこにやればいいさ(ニヤリ)」

村人C「なら、オレがっ!(勢い良く挙手)」

魔人「こんなときだけ自己主張とか(呆れ顔)」


村長「仕方あるまい。多少のうま味がなければ、監視役をやる者もいまい。希望者を集め、話し合え」

魔人「最低だな」

村長「これからこの村で暮らすのであれば、もう少し利口な口をきけ(ゲスい顔)」

魔人「フンッ、嫌だね!」

村人A「村長、口でいっても駄目なら他の方法でわからせましょうよ(ニヤリ)」

村人B「そうそう、オレらに任せて下さいよ(イヤラシい顔)」

村人C「こっ、コワくないよ~」

魔人「うわぁ…(引)なんかこういうのって、王道的な展開っていうの?(溜息)ヒロインらしく、ヒーローの名前でも叫んどいた方がいいかな」

村長「余裕でいられるのはいつまでだろうなぁ…(ニヤニヤ)」




【王道的展開?】


勇者「(走りながら)こっ、これって、王道的なっ、展開、だよな!大丈夫かよっ、エロい展開、だと山賊共にっ!?」

使魔「(先を走りつつ)不吉なことをいわないで下さい。そもそも勇者殿の着替えが終わるのを待っていたんですよ(呆れ)」

勇者「いや、だってよ。普通、女の着替えを借りる、なんて!」

使魔「非常事態中に性的に興奮しないで下さい」

勇者「違うっ!…ズボンのサイズが合ったことに、ショックを受けただけだ……(ずーん)」


バンッ!


使魔「(村長宅に飛び込み)そこまでです!」

勇者「(隠してた剣を構え)悪事は全部、お見通しだっ!神妙にお縄に着け!(ゼーハーゼーハー)」


魔人「あっ、遅かったな(紅茶を飲みつつ)」

勇者「へっ…はあぁぁぁっ!?なんで暢気に茶飲んでんだよっ!まっ、まさか、もう済んだ…とか(真っ赤な顔)」

魔人「うん、済んだよ(自分が腰掛けているのを指して)」

使魔「(指された方を確認)あぁ、それは村長ですか。お疲れさまです」

勇者「えっ、それって村長!?(驚愕)顔、原形留めてないんだけど…(ガタブル)」

魔人「│私刑リンチされそうだったから(※)、返り討ちにした(ドヤァ)」

勇者「思ってたのと、違う展開っ!?あと、過剰防衛っ(ドン引き)」


※魔人の勘違い。勇者の想像が正しい。




【覚悟は出来てんだろうな?】


魔人「さて、迎えも来たことだし。(立ち上がり、村長の胸倉を掴み上げ)どう落とし前を付けてくれるんだ、ああ゛!?」

勇者「カツアゲっ!?(ガタブル)」

魔人「正当な権利だ。(村長に向き直り)わかってんのか、お前らと村の一部がやったことは犯罪だ。詐欺に窃盗、誘拐と監禁、挙げ句に非力で無抵抗な相手を集団で私刑にしようなんてモンスターにも劣る所業だ!(ガクガクと村長を揺さぶる)あ~あ、縛られた腕が痛いな~折れちゃったなぁ。(わざとらしく腕を擦り)どうしてくれるんだ、ゴラァ!!(すごい巻き舌)」

村長「(ガクガク)ひっ、ひえぇ~。お許しをおぉぉ~」


魔人「ハンッ。(鼻で笑いながら)哀れっぽくしても無駄だ。せいぜい、ボクが満足する額を支払って」

勇者「うわあぁぁっ!?ちょっ、待て!こっち来いよ!!(魔人を引き摺って出て行く)」




【教訓というより、もはや黒歴史】


魔人「(そのまま着いて行く)何?」

勇者「『何?』じゃねーよ!なんであんなことしたんだよ!」

魔人「つまり何?勇者君は泣き寝入りしろって?」

勇者「……っ!(たじろぎ)そ、そうじゃねぇけど、あんな風にどっちが悪党がわからないってのもどうかと…(しどろもどろ)」

魔人「へー、ふぅ~ん?(ニヤニヤと悪い顔)」

勇者「(相手の表情に気付き)なんだよ!ホント、何なんだよ!」


魔人「まあまあ。(宥めつつ)これは、必要悪というものだよ」

勇者「必要悪?」

魔人「そうそう。こんな風にしたら、こわ~い目に遭うっていう教訓にしたいわけ。もしさ、か弱そうな相手を選んで今回のことをやって成功したらだよ?次もまた、同じようにやるに決まってる」

勇者「常習犯になるっていうのか?」

魔人「そうそう。だって、大して働かなくてもお金が手に入るから、楽じゃん。で、そんなことをしてたらいずれはバレる」

勇者「捕まるよな、普通」

魔人「それだったら、まだマシ。問題は、恐喝だね」

勇者「さっ、さっきのみたいのか(青褪める)」

魔人「あれならか弱い女一人だから、数人で掛かればコワくない」

勇者「あんだけ一人でフルボッコしたんだから、十分に脅威だろ(ボソッ)」

魔人「ん?(小首を傾げ)何かいった?…つまり、もっとコワいのは集団、例えば本業の賊だね。一人二人羊役をして、後は周りを包囲して根こそぎ村の物を奪う。最悪、死人が出る」

勇者「(絶句)」


魔人「コワい?でも、これがこの世界では割と普通なんだ。悲しいけど、自衛するのは当たり前で、彼らはまだ幸運だ」


夫人「あぁ、あんたたち!(人垣の中心から出て来る)」

勇者「えっ?いつの間に出来たの、あの人集り。あの恰幅の良いおばさん誰?」

魔人「こら、女性におばさんはないだろ。(夫人に向き直り)首尾良く、終わらせました(にこやか)」

夫人「ありがとう、こんな面倒なこと頼んで。おかげで、あいつらにとって良い薬になったよ(顎で人垣を指す)」

勇者「あれ、人集りっておば…(魔人の鋭い目から逃れ)いや、ご婦人方ばっか?…って、えぇぇぇぇっ!?」




【妻の務め】


勇者「(人垣の中心に慌てて向かい)こ、この人たちって村の男たち?どうしてこんな姿に…」

村人ABC及び男たち「うぅ~(ズタボロ)」


夫人「そりゃ、こいつらの奥さんたちがやったのさ。馬鹿なことをしでかす亭主に鉄槌をくれてやるのが妻の務めってことさ!」

勇者「妻の務めがコワいっ…(ガタブル)」

魔人「普通だって!」

使魔「……(ぶるり)」


夫人「情けないことに、馬鹿なことを計画してた夫を止められず、逆に家に閉じ込められててね。こちらの方が、助けてくれたんだ」

勇者「そっ、そうだったのか…(唖然)」

魔人「たぶん、反対した人がいると思ってたんだ。そしたらずいぶんいて、助かったよ!」

夫人「とんでもない!こっちこそ、巻き込んで悪かったよ。…まったく!めったにお目に掛かれないような美人でも、人妻に手を出そうなんて、あいつらは本当に馬鹿だねぇ!!」

勇者「…へっ?」

夫人「だいたい、村を出て行ったのは出稼ぎや技術を学びに都に行っただけで、帰って来るつもりなのに早とちりして!」

勇者「……どういうこと?」

魔人「つまり、村を出た若い人らは、弟子入りして技術を学んだ後にこの村特有の工芸品や刺繍を作って、都に卸そうって計画を立ててたらしい。あっ、その修行中に人脈も確保するらしいよ」

勇者「修行中にって、ずいぶんとアグレッシブだな」

魔人「そうでもしないと、小さな村は生き残れないからね」

夫人「まあ、物になるかはわからないし、変なとこで保守的な男共に止められるって、わたしが話しを引き受けたのさ。頃合いをみて、夫にいうつもりだったんたけどあの男は~~(憤怒)」

勇者「ヒィッ!?(ガタブル)」

魔人「あぁ、この方は村長夫人だよ。村の婦人会の、頼れるリーダーさ(にっこり)」

勇者「むっ、むしろこの人が村長やった方がいいんじゃないかっ!?」




【女は度胸!と、愛嬌とやっぱり度胸】


魔人「ふわあぁ~(大欠伸)良く寝た~(伸びー)」

使魔「くわぁっ(欠伸)」

勇者「オレは寝れなかった(目の下が真っ黒)」

魔人「ハハッ、鍛錬が足りないぞ~(笑)」

使魔「(尻尾をひと振り)」


魔人「夫人、おはようございます!」

夫人「おはよう!集会場で雑魚寝させてすまないね!」

魔人「いえいえ。遅くまで、ご苦労様でした(にこやか~)」

勇者「遅くまで響いてた野太い悲鳴と、重い打撃音ってまさかっ…(真っ青)」

夫人「フフフッ。(心なしか肌がツヤツヤ)あんたたち、朝ご飯が用意出来たから、先に食べちゃって。もう少ししたら、行商が来るから送ってもらえばいいさ」

魔人「ありがとうございます!」


夫人「でも、いいのかい?何かお礼になりそうなもの渡さないで?」

魔人「まだ村には必要なものがあるでしょう。行商に紹介してもらえただけ助かります。気にされるようでしたら」

夫人「でしたら?」

魔人「完成した工芸品を、安く仕入れさせて下さいね(悪戯っぽい笑顔)」

夫人「ハハハッ!(豪快に笑いながら)そりゃ、交渉次第さ!」




【もしや、村人Bの奥さんって…】


魔人「(大きく手を振り)さよーならー!!」

使魔「(尻尾ぱたぱた)」

勇者「さようなら~っ!!(荷台の端にバランスを取りながら乗り)…これから大丈夫なのか、あの村?」

魔人「今回は魔が差しただけだろうから、大丈夫じゃないか?」

勇者「いや…それもだけど。やっぱり、働き手がないっていうのは大変だろ?」

魔人「……召喚される勇者ってのは、きっとある種の素質を持ってるんだろうな(ボソッ)」

勇者「?何かいったか?」

魔人「いいや、別に」


魔人「大丈夫だよ。税の免除を領主に直談判に行ってた人たちも、もうそろそろ戻るってさ。先行して何人か戻って来たらしい」

勇者「あぁ、全員が修行や出稼ぎに出たんじゃないのか。でも、税金の免除ってそんなに簡単に通るのか?」

魔人「いいや、そんなことはない。どうも中心に立った女性が子連れで泣き落としたらしい。その人の旦那さんはいつも隠しときたいことを勢い余って喋るタイプで、逆に領主は腹黒化け狸で勝手が違って大変だったみたいだ。だけど、さっきいった通りの方法を取りつつ、長期的に出るメリットを説明して何とか納得させたらしい。免除の期間は短いけど、経過報告によっては減税か控除も視野に入れてくれるってさ」

勇者「すっ、すげぇな(ごくり)」

魔人「だよねぇ。もういっそ、あの村は女性を中心にしとけば馬鹿なことが起こらず発展するんじゃないかな?(笑)」

勇者「いやいやっ、馬鹿やった少数派だけを見て、男全般を否定しないで!」




【そして、ふりだしに戻る】


勇者「…ところで、どこに向かってるんだ?行商と別れてから、ずいぶんと歩いたが…」

魔人「あれ、いってなかったっけ?」

使魔「話していないようですよ、マスター」

魔人「ごめんごめん!えーとね、あっ!見えてきた!」

勇者「見えてきたって…あ゛っ!?」


勇者「(門を潜り)……なぁここ、見覚えがあるんだけど」

魔人「そりゃ、そうだ。だってここ、キミが召喚された城がある所謂、王都だからね」

勇者「はあぁぁぁぁ~っ?」


魔人「だってキミ、向かう方角がまったくの反対だったから」


こうして勇者は、ふりだしに戻った。

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