①
【じんぶつしょうかい】
・勇者…召喚された異世界人。
・魔人…モンスターで種族は淫魔。
・使い魔…魔人の使い魔。狼もどき。
・王様…勇者を召喚した国の王。おっさん。
・国王…魔人が暮らす国の王。親友。
【勇者が召喚されました】
王様「おぉ、異世界の勇者よ!頼みがあるの」
勇者「うおぉぉぉっ!これが異世界召喚!マジすげぇっ!あれか、勇者ってことは魔王の討伐だよな!なぁ、おっさん!」
王様「おっさんっ!?あっ、ああ、勇者には魔王を」
勇者「わかった、行ってくる!礼はいらないぞ!勇者だからなっ!いや、キレイお姫様にお礼をされるってのも…ウヘヘッ。取り敢えず、行ってくる!」
王様「勇者よ!まだ、説明が終わって…ギャーッ!?」
臣下「陛下ーっ!?誰かーっ、陛下が勇者に跳ねられたぞーっ!!」
こうして勇者は旅立った。
【依頼されました】
某国王城内貴賓室。
魔人「はいはい、きちんと連絡しますよー…はぁ?勇者召喚?なんだ、よくある魔王討伐か」
国王『そんなもの、よくあるわけないだろ。相変わらず、何を馬鹿なことをいっているのだ。どうやら、その召喚された勇者とやら、ろくに説明を聞かずに出て行ったらしいぞ』
魔人「ふ~ん。勇者補正だかで、向かう先はわかるんかな?」
国王『いや、迷っているらしい』
魔人「はぁっ!?…大丈夫か、その勇者は。パーティはどうなってんの?現地調達?」
国王『用意した同行者は、拒否されたそうだ。男ばかりだから』
魔人「あぁ、むさいからな。つか、旅の間だけだから我慢すればいいのに」
国王『オレは既視感を感じたぞ(ジト目)』
魔人「(目を逸らしつつ)で、ボクにそんな話ししてどうすんのさ?他国のことなんだから、その国にまかせればいいだろうに。異世界人を召喚しといてなんだけど、さ」
国王『恩を売っておけ』
魔人「ハイ?何、手伝うとかそういうこと?」
国王『よくわかったな、さすが親友。勇者に付いて、魔王とやらのところへ連れて行ってやれ。そして、召喚国に恩を売れ』
魔人「え~~、面倒くさ~い!というか、仕事中なんだけど」
国王『各地巡りながら、仕事は出来るだろう?むしろ、現地で調査が出来る分、楽だと思うが。そもそも二人一緒で、まともに仕事しているのか。また、妙な呪具にひっかかって…』
魔人「あっ、呼んでる。じゃあ、また!」
ピッ
魔人「ふぃ~。携帯持ってると、連絡付いて困るわー」
使魔「連絡を取りやすくするための、携帯型通信用水晶ですよ。ところでマスター、オレは呼んでいませんよ?」
魔人「いいんだよ~話が長くなるから。あーあ、気侭な二人旅なんて久し振りなのになぁ」
使魔「ですが、なんだかんだといいつつ陛下の依頼は受けるのですよね?」
魔人「んー?さてねぇ…。ちょうど、その魔王とやらに用事があるからついでにね(ニヤリ)」
使魔「はいはい(にこにこ)」
こうして二人は旅立った。
【そして、遭遇】
魔人「やあ、そこの少年。キミが勇者だね?」
勇者「何故わかる!?ハッ、この魔力…さては魔族かっ!さすが勇者、歩いているだけで力に引き寄せられて魔族が妨害に来るのかっ!」
使魔「いえ、そんないかにもな装備を身に着けている時点でわかります。あの国の国宝ですよね、その剣と鎧は」
魔人「そういうのは、持って来たんだねぇ。話しは聞かないのに」
勇者「ギャーッ!?犬がしゃべったあぁぁぁあっ!?」
使魔「ほら、マスターが急に話し掛けたから混乱していますよ」
魔人「ボクのせいっ!?絶対、ボクのことじゃないと思う!」
【聖剣伝説】
魔人「別に、妨害しに来たんじゃないよ。それに、ボクらは魔族じゃなくて、モンスター。ちょっと違うんだな、これが(チッチッチッ)」
勇者「何っ!?モンスターっ娘だとっ!?なっなっ何のモンスターなんだ?(ドキドキ)」
魔人「淫魔」
勇者「ボクっ娘淫魔キターーっ!!ここっ、ここはエロゲーの世界ですかっ!?よ、よし!オレのエクスカリバーで退治してやるっ!(ゴソゴソ)」
魔人「は?腰に提げてたの、聖剣なの?ベルト外したら地面に落ちてるけど、あれのことじゃないの?つか、借り物拾わずに、ズボンのチャック下ろしてどうすんの」
使魔「警邏隊の方々、ここに勇者のフリをした露出狂の変態がいます。連行して下さい」
街中だったらしい。
【牢屋の窓からコンニチハ】
牢屋の窓(高所・鉄格子付き)から顔が覗く。
魔人「(ヒョイッ)やあ、そこの少年。キミが勇者…って、クサッ!?」
勇者「ヒドいっ」
使魔「仕方ありませんよ。変態行為で警邏隊に捕まったのに、勇者だからといって暴れて逃げれば罪は重くなります」
魔人「あぁ、だから街で見掛けなかったのか。納得!(晴れやかな笑顔)」
勇者「ヒドいっ」
勇者「淫魔が何の用だよ!エッチなことして精気を奪おうなんて、そうはいかないぞっ!」
魔人「…チラ見しながら期待の眼差しを向けてるとこ申し訳ないけど、精気は奪う予定はないから」
勇者「ガーン」
使魔「勇者がモンスターに期待して、一体どうするのですか」
魔人「ボクらは国からの要請で、キミの案内兼護衛になったんだ。これが証明書」
勇者「おっ、読める。……読めたけど、本物かわからん」
魔人「まぁ、異世界人だから紋章がわからないか。こればっかりはもう、信じてもらうしかないな」
勇者「モンスターを信用する?そんなの無理だろ!誠意を見せろ、誠意を!」
魔人「ま…まるで、悪質なクレーマーのようだ。でも、誠意っていったってなぁ」
勇者「そうだなぁ…(イヤラシい手の動きをしつつ)こっちのいうことを素直に聞いてくれたら考えてもいいかなぁ~ぐへへっ」
魔人「よしっ、このまま放置だ!行くぞ!」
勇者「冗談です嘘ですごめんなさい申し訳ありませんでした!」
魔人「変わり身が早い」
使魔「相当、牢屋での生活がつらかったのですね」
魔人「じゃあ、誠意は保釈金ってことで納得してよ」
勇者「結局、金か」
魔人「…何かいった?」
使魔「…保釈金はそれなりに高額ですよ。マスターが必要でないのですから、ここで使うこともありません。先を急ぎましょう」
勇者「うわーっ!待って待って!すみません、ごめんなさい、助けて下さいぃぃぃ~っ!!」
魔人は使い魔を踏み台にして、窓から中を覗き込んでいました。