27/27
おまけ
小学生の頃。
「返して!」
「やだねー」
休み時間。
優は、咲のメガネをひょいと取って逃げていた。
「見えないんだけど!」
「追いつけたら返してやる」
「最悪!」
いつもの喧嘩。
周りも「またやってる」と笑ってる。
咲はむかつきながら、優を追いかけた。
でも急に、足が止まる。
「……っ」
視界がぼやける。
教室の床がよく見えない。
その瞬間。
優が振り返る。
「……あ」
初めてちゃんと見た。
メガネのない咲の顔。
思ったよりずっと、違って見えた。
いつもは強気で、
すぐ怒って、
うるさい幼馴染み。
なのに今だけ、どこか輪郭が違う。
不安そうに揺れる瞳が、やけに目につく。
(……やば)
かわいい、なんて言葉が一瞬よぎって、
優はそれを慌てて打ち消す。
気のせいだろ、と。
なのに視線だけは、すぐには外れなかった。
咲はそんな優を見て、さらに腹が立つ。
「なによ!」
優は珍しく黙る。
咲はメガネを奪い返す。
そして真っ赤な顔で叫んだ。
「優なんか大嫌い!!」
教室が静かになる。
優は呆然と立ち尽くす。
周りが「え、お前泣かした?」とざわつく中。
優だけが、変にうるさい心臓の音を聞いていた。




