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溺愛されても許しません!~転生したら宿敵がいた~  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
【王都】

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22/81

21:皮肉な采配

 聖皇宮と変わらないような、白亜の大理石で作られた立派な大邸宅に驚愕していると。


「国王陛下に到着の挨拶を行うことになるので、着替えをして、エントランスに集合でお願いします。王宮へは馬車で移動しますから」


 オルゼアの言葉に、王城のスケール感を噛みしめることになる。


 ともかく立襟のホワイトシルバーの長袖ドレスに着替え、オルゼアと共に再び馬車に乗り込む。対面の席に座るオルゼアを見ると、私のドレスに合わせてくれたのか、同じ色の聖皇用のローブを着用している。首から下げたショールは銀色でアイスブルーの糸で聖皇庁の紋章が刺繍されていた。それは彼の艶のあるアイスブルーの髪にもよく似合っている。


 さらにその髪の上につけている聖皇冠にも、自然と目がいってしまう。ホワイトシルバーの生地には、私の指輪と同じアイスブルーの宝石が埋め込まれ、差し込む陽の光を受け、キラキラと輝いている。


 今さら気が付く。

 指輪の魔法石が、オルゼアの髪色と同じであることに。


 深い意味なんてないわ。これは偶然。別に彼の髪色に合わせたわけではないのだから!


 慌てて聖皇冠から目を逸らすと、オルゼアの銀色の瞳と目があった。その目は優しさをたたえ、彼が魔王ルーファスの生まれ変わりであることを、忘れさせてしまう。


「これまでパートナーを伴っていなかったのですが、こうしてレミントン公爵令嬢と馬車を共にすると……まず、わたしと合わせた衣装を着用したあなたがいることに、安心感を覚えます。次に魔法使いとして、周囲に注意をはらう姿に、頼もしさを覚えずにはいられません。その一方で公爵令嬢であるのだから、わたしが守って差し上げなければと、使命感にも突き動かされます。なんと表現すればいいのか。あなたから片時も目が離せない気持ちです」


 しみじみとそんな風に言われると、おさまっていた心臓がトクトクと反応してしまう。さざ波を立てる気持ちを静めようと、オルゼアから視線を窓へと向ける。


「普段、経験されていないことを体験し、かつ西都ではない場所にいるので、気分が少し高揚されているだけですわ。すぐに慣れ、何も感じなくなります」


 慣れて無関心になる――そうなってもらわないと大変だ。

 覚醒もしていないうちから、オルゼアに私へ関心を持たれては……本当に困る!


 王宮へ続く道と交差する別の道に目をやると、美しい馬車が見えた。ゴールドの装飾を車輪や馬具にまで使うなんて、並みの貴族の馬車ではないと思ったら……。あの獅子と剣は王家の紋章。そこにさらに描かれたアイビーの葉……あれは王太子の紋章だわ。


 ということは、あの馬車に乗っているのは王太子とその婚約者。ならばその先頭にいるのは近衛騎士団の団長。そしてその馬車の後ろにいるのは近衛騎士団の副団長では?


 馬車の後ろから副団長の姿が見えてきた。


 先代聖皇の息子であり、オルゼアの命を狙う暗殺者の黒幕、ライト・アーク・スタンリー。しっかりその姿を見ようと、体を窓の方へ向ける。


 大海を思わせる碧い髪。澄んだ碧眼に高い鼻。きゅっと結ばれた唇。

 すっと伸びた背に、コバルトブルーの軍服。

 濃紺のマントが馬の動きにあわせ、軽やかに揺れている。


 その姿は瓜二つとしか思えない。

 死を自覚し、最期に目に焼き付いた泣き顔。

 その顔をいつもの冷静な彼の顔に戻したら……。


 オルゼアの命を狙うライトの顔が、かつての仲間である勇者ノクスの顔と、重なって見えるなんて。複雑な感情が胸に沸き起こる。


「レミントン公爵令嬢、どうされましたか?」


 オルゼアの言葉に「いえ、何も」と答えたいが、明らかに気持ちが動揺し、顔色も変わっていると思う。オルゼアはこういう変化にとても敏感。それは彼が病人と対面し、その怪我や病気を癒すこと繰り返しているのだから、当然だと思う。相手の気持ちに寄り添い、癒そうとするオルゼアだから、表情が変われば目につくはず。


 ならば誤魔化せない。正直に伝えよう。


「驚いてしまったのです。あの馬車の後ろにいる騎士の方が、建国の王として知られるノクス・ミカエル・アウラ様にそっくりではありませんか」


「ああ、そうですね。ええ、王都では有名な方ですよ。建国王の若かりし頃に、瓜二つと言われています。とはいっても残されている肖像画や彫像に似ているだけで、本当に実在した建国王とそっくりなのかは、分かりませんが。肖像画や彫像は、実物そのままとは限りませんからね」


 それは確かにそうだ。後世に残そうとして、画家や彫刻家に作らせるのだから。ちょっと髪の量を増やしてもらったり、身長を伸ばしてもらったり、皺を減らしてもらうことは……よくある話。


 でもライト・アーク・スタンリー、彼はノクスが転生した姿としか思えない。


 それにもし彼がノクスなら、オルゼアを狙う理由がよく分かる。ノクスも気づいたということだ。オルゼアの姿を見て、魔王ルーファスの生まれ変わりだと。


 西都にいた時、ノクスはまだ前世の記憶が覚醒していなかったのだろう。でも王都で騎士を目指す中で、記憶が覚醒した。


 騎士として積む訓練は、勇者として鍛錬していた頃と通じるものだったはずだ。修練を積む中で、勇者であった頃の前世の記憶を取り戻しても、それは何もおかしいことではない。


 ただ、ノクスは魔王ルーファスの子供時代を知らない。幼いルーファスの姿なんて見たことはなかったはずだ。それでも王都にやってきたオルゼアと再会し、思い出してしまったのだろう、魔王ルーファスのことを。


 この子供が成長した姿を想像した時、魔王ルーファスの姿が浮かんだ……。


 ノクスは魔王討伐パーティを率いる勇者であり、リーダーとして、強い使命感と責任感を持っていた。仲間を励まし、気遣い、とても大切にしていたのだ。そしてついにあの魔王ルーファスを倒したと思ったその時。まさに足元をすくわれた。さらに自身を助けようとして、私が魔王の道連れになった。


 自分の目の前で、仲間が命を落とす姿を見たのだ。


 その後、建国の王となり、国作りに追われたとしても。ノクスのことだ。最期のその瞬間まで忘れなかったはず。あの日、噴火口で起きた出来事を。魔王ルーファスのことを。


 もし魔王ルーファスと相まみえることがあれば、絶対にもう一度息の根を止める。仲間を道連れにしたことを、絶対に許さないと思ったはずだ。


 まさか同じ時代、同じ国に、しかも西都に勇者と魔王が転生してしまうなんて。しゅは、なんて皮肉な采配されるのだろう。


「彼のことが気になりますか?」


 オルゼアの銀色の瞳が探るように私を見ている。「気になりません」と答えるには、ノクスの姿を見過ぎていたと思う。「気になります、彼は何者ですか?」と答えていた。


「ライト・アーク・スタンリー、王太子様の近衛騎士です。……近衛騎士団の副団長。建国王に瓜二つの美しい騎士ですから、王都では令嬢達に大人気ですよ。レミントン公爵令嬢も、彼のような殿方が好みですか?」

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― 新着の感想 ―
ほんとに合ってた笑 まじ師匠が全部悪いと思うよ? 前世何もかも説明して清い友人関係から始めてればこうはならなかったきもする
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