続・最初の異世界(15)
ラーゼの案内で洞窟へとやってきた今元晋であったが、ここでこの世界に来て最初の試練に出くわす。
そう、魔物との戦闘である。
さきほどの教会を取り囲んでいたラーテルのような外見の獣とは戦闘になっていない。
大悪魔マカベルに浸食され、変異を起こしていたラーゼがすべて片付けたからだ。
つまりはこれが正真正銘、この世界に来て最初の戦闘。
しかし、はじめての戦闘は散々なものだった。
一様は教会から武器を拝借してきていたが、武器を振り回したところで魔物には当たらず、すべて空振り。
散々おちょくられた挙句、体力が切れて動きが鈍ったところを攻撃され、地面に倒れると周囲を囲まれ、殴る蹴るの集団リンチを受けた。
ちなみに相手の魔物はうさぎほどの大きさの小型種である。
そして今元晋が手にしていた武器は棍棒であった。
教会の倉庫には護身用の剣もあるにはあったが、かなり年季が入った代物で、刀身は錆びてはいないものの軸がずれていたり、刃こぼれが激しく、誰がどう見ても使い物にならないと拒否する代物であった。
槍や斧もあるにはあったが、こちらは刃の根本が若干錆びており、一体いつから手入れしてないんだ?と呆れてしまうほどだった。
その槍は刃だけでなく長い柄も所々が腐っており、少し振るっただけですぐに折れるであろう事は明白であった。
斧に関してはそもそも重すぎて今元晋がまともに扱えなかった。
それ以前に刃の先がやけにくすんだ色をしており、教会が胆石と化した大悪魔マカベルを封印し続けるために何をこれまでしてきたかを考えれば手に取って使う気にはなれなかった。
しかしそうすると、後は鍬や鉈、鎌に芋掘りや刈り取った大量の稲などを挟んで移動させる時に使う四本刃のフォーク といった農具ばかりしかなく、そんなわけでまともに扱えそうなものはシャベルと棍棒しかないため、素人でも問題なく扱える武器として棍棒を選んだのだ。
しかし、初陣の惨状を見ればシャベルのほうがまだ戦えたかもしれない。
そんな情けなくうさぎほどの大きさの魔物にボコられる今元晋をラーゼが助けようとするが、こちらもまた呆気なく敗れてしまった。
今元晋としては戦闘経験豊富なラーゼ先輩の活躍に期待したいところだったが、そもそもラーゼが教会に押し寄せたラーテルのような外見の獣たちを全滅させられたのは大悪魔マカベルが浸食したおかげだったのだ。
体を蝕まれ、変異を起こしていたからこそ、その力で持って教会に迫る外敵を退けられていたのだ。
しかし、黄泉の民たる今元晋と接触した事により大悪魔マカベルの因子は抑えられ、変異は治まった。
そう、本来の人の姿に戻ったのだ。
結果、ラーゼの戦闘力は限りなく0に近い状態となったのである。
今の彼女はただの女の子、戦闘ではあてにできない存在なのだ。
そんなわけで2人してボロボロのなりながら、命からがらなんとか逃げ出し、洞窟を一旦脱出する。
洞窟の外に出ると二人して地面に倒れ込み、洗い呼吸をしながら確信する。
あ、これあかんやつや……このまま突き進んだら間違いなく死ぬわ。
ふたりは起き上がると無言で互いを見つめ、頷く。
考える事は同じであった。
ここは一度教会に戻って、何かしら役に立ちそうな物がないか、再度倉庫内を物色しよう!
もしかしたら重要なアイテムを見落としているかもしれない。
確認しなかった部屋や屋根裏などに誰も存在を知らなかったアイテムが眠っているかもしれない。
そう、その可能性は否定できないのだ。なら善は急げである。
今元晋とラーゼは教会へと引き返そうとするが。
「ん?あれって……」
ラーゼは何かに気付き、足を止める。
今元晋はラーゼよりも数歩先行していたが、ラーゼが足を止めたのに気づき、こちらも足を止めた。
「ラーゼ?どうしたんだ?」
そう言ってラーゼが立ち止まって見つめる先を今元晋は見る。
「あれは小屋……詰所か何かか?」
するとそこには小さな小屋のような建物があった。
それを見つめるラーゼは何か考え込むような仕草を見せた後。
「もしかしたら、あの中に武器が置いてあるかも!」
そんな事を口にして小屋の方へと走っていく、そんなラーゼを今元晋も追いかける。
「お、おい!どうしたんだよいきなり」
「あの小屋、まだ前回の片づけが終わってないはずだから、まだ中に回収されてない武器があるはずなんだ」
「前回の片づけ?なんだそれ?」
「定期的に傭兵に頼んでる洞窟内の駆除依頼!魔物が増えすぎないように間引いてるの」
「な、なるほど」
どうやら洞窟内の魔物は一定の数に調整されて管理されているらしい。
それを聞いた今元晋は、どうして魔物を根絶やしにしないのだろうか?そのほうが洞窟内を安全に移動できるし楽だろうに、何か不都合でもあるのだろうか?と首を捻る。
そうこうしているうちに小屋の前にたどり着いたが、あいにくと小屋の扉には鍵がかかっていた。
建物のまわりを一周してみるが入り口はひとつしかない。
となると、中に入るには鍵を破壊しないといけないが、そんな事して大丈夫だろうか?と今元晋は少し不安になるが、ラーゼはしばし考え込んだのち。
「ねぇススム、それで鍵壊してよ」
今元晋が手にしている棍棒を指差しそんな事を言ってきた。
「いや、大丈夫なのか?壊してしまって」
「大丈夫大丈夫!どうせ司祭さまが直してくれるって」
「いや、それ絶対大丈夫なやつじゃない気がするんだけど?」
今元晋は呆れながらもラーゼに頼まれたとおり、棍棒で鍵を叩き壊した。
そうして小屋の中へと入った二人は埃臭い室内の空気にむせながらも、それっぽい箱を発見し、ラーゼが蓋をあけると。
「やっぱり!思った通りだ」
そう言って、中にしまってあった武器を取り出して手に取る。
それは年季が入っているものの、まだまだ使用可能なボウガンであった。
よろしければ☆評価、ブクマ、リアクション、感想などなどお願いします!




