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4話

 本当に……。


「なんだってこんなことに……」


 過去を振り返りつつウサギさんカットされたリンゴをリビングへと持っていく。


「お兄さんも罪だよねぇ」

「何がだよ……」

「曙お姉さんだよ。なんでさっさと犯人をぶちのめさないの?」

「まだ何にもやってない人間をぶちのめせないだろ……」

「でもー、ドツボにはまってない? 未来、見えてるよね?」


 明人の目が細められこちらに向く、そこには冷たい光がたたえられてる。


「分かってるよ……」


 あと一週間、そこで俺が居たとしても犯人は美晴を襲う。犯人の撃退自体はできる……ただ素人レベルで護身術も習っているが犯人も何かしらの基礎があるのか未来が見える俺は負けはしないが傷を負う。ここが問題だ。

 すでに依存を始めてる美晴が、これで完全に俺に依存して少しまずいことになる。


「はぁ、お兄さんは神様には向かないけどヒーローには向いてる。それだけだよ。もう受け入れてしまいなよ」

「いや、相手は学生だぞ……」

「そう、まぁ、好きにしなよ。僕はこれ以上なにも言わないから」


 そういって、明人はリンゴをしゃくしゃくと食べ始めた。


「なぁ……」

「助けないよ」

「まだ何にもいってないだろ……」

「お兄さん。自分の行動に責任を持って。お兄さんが助けたいって言ったんじゃない」


 ジロリと明人ににらまれる。


「分かってるよ……はぁ」


 人を助けるって……大変なんだな。責任を持て……か。





 加藤さんが話があると、私たちが初めて出会った公園へやってきた。


「あの、加藤さん。話って……」


 加藤さんとっても真剣な顔……も、もしかして、こ、告白とか……っ!!


「あぁ、少し……座ってくれるか」

「あ、はい」

「俺は……あー、未来が見えるんだ」

「え?」

「うん、そうだよな、そういう反応だよな。まぁ、ちょっと聞いてくれ」

「は、はい」


 始めは迷ったように、そして、困ったように加藤さんは笑って突拍子もない話を始める。

 加藤さんが友人の借金を背負わされた話、不思議な存在に助けられた話、その不思議な存在に力をもらった話、その力をもらったときに見た私の話、そして私を助けたいと思ったという話。


「それでな、今日、俺はお前を助ける。今日決着が着く、そういう運命なんだ。だからこれで終わりだ」

「運……命、私と加藤さんが出会ったのも……ですか?」

「あ……いや、それは……俺が……本当ならお前は……」

「じゃあ、運命なんて……関係ないです。もしも運命で私たちが引き離されるならそんな運命は私が変えます」


 運命は変えられるんだと、加藤さんはそういったのだ。だったら私は……加藤さんと離れる運命なんて私が変えてやる! それに……私に恋をさせた──。


「──責任取ってくださいね!」

「え?」

「うぁわぁぁぁゎゎぁぁlだfだckさdgfかどぁ!!!!!」

「なっ!?」

「きゃっ!」


 今まで気にしてなかったがずっとついてきていた足音の人物が奇声を上げながら飛び出してきた。


「あぶねぇ!」

「うぉお死ねェェェぇldなlだlkdz死ねぇぇdさだkjfdslだ」


 男は私に襲い掛かろうと向かってくるが、加藤さんが間に入る。


「予知とは違うが……これなら……っ!!」

「じゃぁまぁすすrなぁあうなぁだだあぐぞぉおおあゎ」

「うるせぇ! 黙ってろ!」

「げふぅ!!」


 男は手に持っていたナイフを振り回すが、そのナイフは加藤さんに当らない。逆に加藤さんの拳が男の腹に刺さる。


「はぁはぁ、冷静さを失うとこんなものなのか……っ!」

「お疲れ様です加藤さん。警察にはこちらから連絡させていただきました」

「三雲さん」


 男を倒した加藤さんが振り返ったと思ったらその視線の先には綺麗な女性が居ました。知り合い……でしょうか。


「始めまして曙美晴さん。私は三雲悠火と申します」

「あ、えっと、はい、始めまして?」

「突然のことと驚きだと思いますが、ひとつお伺いさせていただきます。貴女はすべてを捨ててでも加藤さんと一緒にありたいと思いますか?」

「え? えっと、全てって──」

「全ては全てです。家族も友人も名前も捨てて全ての過去を捨てる気はありますか?」

「あー、三雲さん? どうしてそういう──」

「加藤さんは少し黙っていてください。私は今彼女と話しているので」


 助け舟を出そうとした加藤さんをさえぎり三雲さんはこちらを真剣な目で見つめてくる。

 全てを捨てる覚悟……家族も友人も名前も……。


「私は……捨てられません……でも! 加藤さんもあきらめません!!」

「なるほど、それが貴女の覚悟ですか……ではこれだけは覚えておきなさい。あなたのその覚悟は周りの人間を殺すかもしれないということを」

「っ!?」

「三雲さん!」

「加藤さん……分かっていると思いますが、神様は簡単に助けてくれませんよ? これは切り捨てられなかったあなたの罪だと知りなさい」

「……あぁ、分かった」

「それでは私はこれで失礼します。加藤さん警察への対応は任せます。後、彼女のことも」


 三雲と名乗った女性はそういって私たちに一礼すると去っていった。加藤さんはうなだれるように下を向いている。


「はぁ、俺はこの力を手に入れて……何でもできると思ってたんだ。お前のことだって簡単に助けられるって思ってた。実際助けるだけなら楽だったんだ。ただ、助けた後なんて何にも考えてなかった」

「……?」

「何言ってるかわからないよな……ははっ、そうだよなぁ」

「……分かります」

「え?」

「加藤さんが責任を取りたくないってそういうことですよね」


 思わず頬を膨らませてそっぽを向く。


「は、はぁ!? 何でそんなことになるんだよ! というか、責任ってなんだよ!」

「私に……恋させた責任です!」

「いや、それは、その」

「……好きです! 私は加藤さんの事が大好きです!」

「……すまない。俺は……君の想いには答えられない」

「う、うわーん! 分かってましたよばかー! でもあきらめませんからねー!」


 分かっていた。涙があふれてくる。それでも上を向いて私は宣言する。だって大好きなんだもん!


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