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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第12章「なす術もないパニックを焼き捨てる神の使いへ」
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第95話 「R18」




「トラ……これから、どうしよっか」

「……さあ?」


 同日、20時。

 ここはどこだろうか?


 ここは、どこかの会社の倉庫だ。

 港からもっとも近い町の、雑居ビルの地下倉庫だ。とてもホコリっぽい。


 施錠(せじょう)されていたシャッターを(ちから)ずくで押し上げ、侵入したのが30分前。やっとフォックスが目を覚ました。




挿絵(By みてみん)




 大量の機材、資材が詰めこまれた倉庫の中。

 トラとフォックスのヒソヒソ声だけが、しぃんと響く。


「なあ……(カネ)、いくらある?」

 木箱に腰かけるフォックス。

 その表情は、とても(けわ)しい。


「俺スか? オーナーから預かってる20万だけっスよ」

 木箱に腰かけるトラ。

 もぞもぞと長靴に指をつっこみ、中を探る。取り出した紙幣20枚を、フォックスに渡した。


「オーナーは? 籠手の中に、たしか」

「……ああ」


 神妙(しんみょう)な顔で、フォックスが籠手を逆さに振る。

 カラン、カラン。

 籠手の内側から出てきたのは、宝石が2つだ。


 ダイヤモンドだ、しかも大きい。

 さぞかし値の()るものだろう。

 だが―――


「換金できそうもねえな。はは、服もねえし」



 2人はまだ着替えすらしていない。トラは包帯グルグル巻きだし、フォックスはタオルケットに(くる)まったままだ。


 ていうか、手錠も外せていない。

 とくにフォックスの籠手には、ガソリンを満たしたボトルが(くく)りつけられている。


 トラが何度も何度も、爪がはがれそうになるまで針金を外そうと(こころ)みた。だが、素手ではビクともしなかった。


 ちなみにボトルを割ることはできない。

 それをすると、内部のガソリンに着火する仕掛けだと海上警察に言われた。ウソか本当かわからないが、とても試す気になれない。


 ……本当は、こんなところでゆっくりしてる場合じゃないのだ。

 やがてここに警察が駆けつけてくるはずだ。


 なぜなら―――



「……トラ」

「はい?」


「指、大丈夫か?」

「あー、痛いです」


「手錠についてる発信機って、どんくらいの精度なんだろうな?」

「さあ……さすがに地下じゃ、GPSの電波は届いてないでしょうけどね」


「……」

「ん……」

 

 手錠には、位置情報発信機が取りつけられているのだ。だから警察に発見されるのは、もう時間の問題だろう。

 


「そのドクロの仮面が、いっしょに来いって言ったんスよ。ワケわかんねえけど、俺らを助けに来た(・・・・・)って言ってました」

「2つのアイテムに呪われてやがんのか。そのトゲトゲ防具のほうが、レインショットを殺したんだっけ? 槍を無数に()やすアイテムか……仮面のほうは?」


「わかんねえス。それよか、あの小っちゃいロボットですよ」

「あれ何だったんだろうな。やっぱ “ 煙羅煙羅(えんらえんら) ” か」


「たぶんそうっすよ。しかしなんであんな姿に……アッ!」

「どうした?」


「ニニコだ……! ニニコが、煙羅煙羅のネジを食ったんすよ。もしかしてそれで……!」

「ネジが1本足りねえから、ごっそり外れちまったってか? んなアホな……いや、でもあのロボット、確かに言ってたな。ネジを返せって」


「でしょ? それならシーカが、ニニコだけ(さら)ってった理由も説明が……ニニコ、どうなっちまったんスかね。探せ(・・)るッスか?」

「やってみる……籠手よ籠手よ、籠手さん。ニニコとシーカはどこだ?」



 ガシャ……

 ビシ!


『あっち』

   


「ふたりとも1か所にいるな……ニニコ、なんもされてなきゃいいけどよ」

「警察、どこまで追ってきてますかね」


「わかんねえ。ごめんなトラ」

「……え?」


「結局、逃走したぶんだけ罪が重くなっただけだ。ニニコを逃がせたのは良かったけど、お前はとばっちり(・・・・・)食っただけじゃん」

「なんでオーナーが謝るんスか? もういいッスよ。っていうかもう、呪いを()くってのも無理ゲーっぽいスから」


「……お前は、アタシに(おど)されて行動してたんだ。ってことでいいな?」

「よくないっスよ。オーナーだけ死刑で、俺だけ有期刑ですか? 絶対イヤっすね」


「言うとおりにしろって」

「やなこった」


「アタシも死刑にならずにすむ、って言ったらどうする?」

「え?」


「……」

「……」


「……」

「えー……つづきを」


「妊娠する」

「すいません、よく聞こえな……」


(はら)んでたら、そのあいだは死刑になんねえんだ。産むまで執行は延期される」

「……産んだあとで死刑になるんじゃん」


「それまでに司法取引の材料さがすよ。ちょっとでも可能性があれば……すがりてえ」

「……」


「おかしいな。朝からずっと、死刑になってもいいみたいな気分だったのに。いざこんな状況になったら怖くなってきた」

「……」


「震えが止まんねえ」

「……」


「だから、トラ」

「……いやス」


「なんで?」

「だって」


「……アタシ、汚いからイヤか?」

「もし俺がそんな経緯(いきさつ)で出来たガキだったら、親を殺しますよ」


「しよ」

「そ、その目をやめて」


「もうダメ。死にたくない」

「さ、触るのをやめて」


「怖い」

「お、俺に乗るのをやめて」













挿絵(By みてみん)




 そこにルディ登場。

  

「ちょっといいかね」



「わぁッ!」

「わあッ!」

 ドンガラガッシャ!

 とつぜん声をかけられ、2人はひっくり返る。顔面を強打……短かいラブコメは終わりを()げた。


「痛ててて! ぎゃあ、てめえ!」

 鼻を押さえながら、トラが叫ぶ。



 いったい、いつのまにここへ来たのか。

 ずぶ濡れのルディは、まるで妖怪みたいだ。全身から水を()らし、パチャパチャとゆっくり近づいてくる。


「やれやれひどい目にあった。まず2人とも動かないでくれ。“ もり ”、彼らの手錠を切って(・・・)あげたまえ」


『はい、ルディ神父』

 胸甲 “ 咲き銛 ” の、低い低い声。


 と!

 ドズドスドス、ドズドス!


 バキンバキン!

 バキンバキンバキン、バキン!!

 

 (やり)が5本、目にもとまらぬ速さで飛び出した。

 シュバシュバ!

 剣をふるうように、トラ、フォックスの手錠を千切(ちぎ)り飛ばす! 水しぶきが舞い散る。

 

 手錠のかけらが、ジャラジャラと床に散らばった。



「あ――――――! (こわ)ッ!」

「ひゃあ! トゲが伸びた!」

 パニック状態。

 解放された2人がわたわたと重なりあう。変な意味じゃなく。


「あ、あぶねえな! なにしに来たんだよ!」 

 身構えるトラ。



なにしに(・・・・)はないだろう、トラ君。私といっしょに来てくれる約束じゃないか」

 しゅるしゅる。

 咲き銛の槍が(ちぢ)む。


「はじめましてフォックス君。私のことはルディと呼んでほしい。ひとまずシーカ君とニニコ君に合流したいのだが、一緒に来てくれるね?」

 

「……」

「フォックス君?」


 フォックスは、まじまじとルディを眺めている。

 困り果てた様子でだ。

 いや、ようやく返事をした。


「ちょっと待てよ、なにがなんだか……ほんとに助けてくれんのか? いやそんなことよか、なんでこの場所が……?」

「……来たまえ、車を待たせてある」


 今度はルディが、フォックスの質問を無視。


 背を向け、パチャパチャと歩きだす。

 ぱちゃ、ぱちゃ。

 足跡(あしあと)をぽたぽたと残しながら、ルディは出口へ向かう。



「……」

「……」

 あとに残されたフォックスとトラが、顔を見合わせる。


「……助かる、のか?」

「助かるんですか? これ」


 顔を見合わせる。

 2秒、3秒―――


「待ってルディ!」

「待って~!!」


 追いすがる。



 さてビルの外では、トレーラーがエンジン音を響かせていた。

 木造のトレーラーハウスを牽引(けんいん)する、奇妙なトレーラーだ。



   

挿絵(By みてみん)




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いま書いてるやつよ。

 ↓

チャッカマン




イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。


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